井上尚弥がジェイソン・マロニーを7ラウンドで仕留めてラスベガスデビューを飾りました。

これでデビューから20戦全勝17KO。現在の世界タイトルに価値は無い、なんていくらほざいても20戦のうち15試合で世界タイトルをステイクしたキャリアの濃密さにケチがつけられるわけがありません。

マロニーも井上と非常によく似た戦績を紡いで来ましたが、対戦相手の質があまりにも違いすぎます。

モンスターのベストファイトはファン・カルロス・パヤノを90秒で沈めたWBSS1回戦でしょうか。

パヤオ戦は高い実力だけでなく、いろんなタイミングが重なった再現性が低いスペクタクルでした。パヤノにとっては「やりたいことをする前に終わってしまった」という悔恨が残りました。

一方で、バンタム級でも十指に数えられる実力者マロニーは「やりたいことをやろうとしたが何も出来なかった。最後は万策尽きた」という完全白旗降伏でした。

マロニーには「あそこをああしていれば…」という後悔はないでしょう。

タフなオージーを丁寧に削って、7ラウンドで仕留められるボクサーは、バンタム級にはいません。

マロニー相手で、ノルディーヌ・ウバーリなら12ラウンド判定まで持ち込まれるでしょう。カシメロなら判定まで行ったら負け、下手したら雑になった終盤にストップされるかもしれません。
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しかし、リング誌の挿絵、どれも似てないです。私がアメコミ大嫌いだからなんでしょうが。日本の漫画とは一緒のジャンルにして欲しくないです。

井上自身の言葉から、今後もバンタム級の全てのベルトをコレクションする方針は変わらないようです。

他の誰にも王者を名乗らせない The Undisputed Champion。

「We are 〝A〟championの時代」に「The Undisputed Champion」に就くことは大きな意味があります。

もし、井上が来年4団体完全統一を実現すると、1984年にWBA王者・渡辺二郎がパヤオ・プーンタラトのWBCを吸収して以来、日本史上二人目の自力でのThe Undisputed Champion、37年ぶりの快挙となります。

4団体時代ではバーナード・ホプキンス、テレンス・クロフォード、オレクサンダー・ウシクに続く世界でも史上4人目、大きな爪痕を残すことになります。

テオフィモ・ロペスについては「試合前は完全統一では無い」と主要メディアが断り書きしていたにもかかわらず、いつの間にかUndisputed Championと認められているようですが、この辺りのいい加減さはどないなもんでっしゃろ?

ロペスまだ入れて先輩の4人が Fighter Of The Year を獲得していることから、よほどのライバル登場がない限り、井上がバンタム完全統一するとボクサーとして最高の名誉を手にする可能性が十分あります。

日本人が Fighter Of The Yearとなると、ファイティング原田もエデル・ジョフレも出来なかった大快挙です。

二人ともに帝拳がプロモートしていることからも、ボクサーの純粋な思いを全力でサポートする帝拳の高い志が見えてきます。そういえば、選手紹介では「帝拳」の方が「大橋」よりも先にアナウンスされました。

しかし…。

「We are 〝A〟championの時代」は倒錯と欺瞞に満ちています。

The Undisputed Championはメディアにこそ評価されていますが、先輩の3人は注目度・人気ではスターダムの頂点に立てませんでした。

テオフィモは不気味ですが…。

というのは話の順番が逆で、実は人気がないからThe Undisputed Championを目指したとも言えます。

4団体時代のスーパースターのテッペンは、オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ、カネロ・アルバレスが黄金のトーチをリレーして来ました。

そして、4人合わせてのべ23階級で王座になりながら、彼らは誰一人として The Undisputed Championの座に就いていません。

「4団体時代だからこそThe Undisputed Championの価値が輝く」 はずで、理屈に合っていると考えたいところですが、もう一つの現実は「4団体時代だから王座の価値が喜劇的に失墜している」のです。

王者の価値が暴落したから、体重超過も平気なのです。

メイウェザーに「鉄クズは要らない」とベルトを卑下にされたマウリシオ・スライマンは鉄クズでない「ウェルター級ベルト」や「マネーベルト」を製作して、メイウェザーに献上、ご機嫌取りに成功しました。

「全てのベルトにアリの肖像ではなく俺を使え」というリクエストも受けましたが、期待していた〝掲載料〟を支払う気がメイには全くなく、この話は破談に終わりましたが。

スーパースターにとっては4つの喜劇ベルトをコンプリートするよりも、茶番劇も含めた「誰と戦うのか」 が全てです。

そして、その座は「誰に勝ったのか」を積み重ねなければ辿り着けません。

The Undisputed Championの4本ベルトのコンプリートセットは、スターダムの頂点に登るパスポートたりえないのです。

マロニーは論外、ノニト・ドネアも「誰に勝ったのか」の「誰」の器ではありません。

そもそも「ライト級まで制覇してPPVスターになる」という目標を、ずっと手前で木っ端微塵に破壊され、バンタム級に出戻ったのがドネアです。

ドネアもまた「パッキャオが見た風景」を見ようと危険な橋を渡りましたが、その願いは叶わなかったのです。

普通の世界王者がThe Undisputed Championを追求するのなら、全力で応援します。

しかし、井上の場合は少なくともバンタム級では普通の世界王者ではありません。そして、毎試合過酷な減量と不健康なリバウンドを繰り返しています。

米国で関心が払われない軽量級が主戦場の日本人の場合「誰に勝ったのか」と問われても、そもそもそんなタレントはどこにもいないのがデフォルトです。

考えれば考えるほど、パッキャオの運の良さには呆れ果てるしかありません。メキシコの歴史的なスーパースターが軽量級にもかかわらず3人もひしめいている偶然なんて、そんな時代は未来永劫訪れることはないでしょう。

もちろん、どんなオファーでも蕎麦屋の出前のごとく二つ返事で引き受けたパッキャオの勇気もすごいのですが、どんなに勇気があっても注文が入らなければ出前はできません。

もしかしたら、井上にもそういうオファーが届いているのかもしれませんが、この世界は断られたら「あいつは逃げた」と騒いでも、断ったオファーをわざわざ明らかにするボクサーはいません。

井上は、足の不具合の原因については言及していませんでしたが、もし過酷な減量が影響しているならこのあたりのクラスにとどまる理由はさらに小さくなります。

「パッキャオが見た風景」。

それは4団体時代では地味な実力者の象徴に成り下がったThe Undisputed Championの座からは見えない景色なのかもしれません。

それは、きっと、もっとド派手でエゲツない景色です。

プロ20戦全勝17KO。素晴らしいキャリアが折り返しました。

そろそろ「パッキャオが見た風景」が拝めそうな場所を探すのに良い頃合いです。


「井上尚弥、圧倒的不利」。そんな下馬評が立つ試合を見たい。

そのリングで井上に対峙するのは、米国のボクシングファンなら誰でも知ってる人気者になるはずです。