この試合は、最初から難しい問題を孕んでいました。

「スター誕生を我々は目撃することになる」(ボブ・アラム)

「テオフィモとトップランクからリクエストされたからフランチャイズ王座を懸ける」(マウリシオ・スライマン)。

「テオフィモの入場背景にはロベルト・デュランを配した。彼が何者なのかをわかりやすく伝えるために」(ESPN)。

リングの中は真剣勝負です。しかし、リングの外は〝カネロ〟で掘り固められてました。

32歳のウクライナ人が、23歳の人気者に勝つには「12ラウンド目一杯を使って戦う」なんて悠長なことを考えていてはいけなかったのでしょう。

キャンプから「判定では勝てない」と覚悟を決めるべきでした。

「ロペスの勝ち」もありの内容でした。ただ、119−109/117−111は無い。

boxing scene.comの116−112は文句はありません。↓

攻勢に重きを置けば、この採点になります。
Round123456789101112Total
Lomachenko9999999101010109112
Lopez10101010101010999910
116



ただし「ジャブと精度」を重視し、空振りは「コントロールされている」と見なされるはずのラスベガス採点では、116−112もありえません。

しかも、ラスベガスでは特に評価されない「ボディショット」も明らかにポイントにつながっています。

パンチスタッツはパワーパンチの手数でロペスが659発中183発をヒット、精度28%。

ロマチェンコは半分以下の321発を放ち、141発と44%をヒットさせました。特に、前半の手数の少なさは、失点を重ねる過剰な警戒でした。

カネロ・アルバレスやテオフィモ相手に公平なスコアリングが期待できないことを、百戦錬磨のウクライナ人は失念していたのでしょうか。
boxing-Vasiliy_Lomachenko_vs_Teofimo_Lopez_action5

Punch Stats
PUNCHESLOMACHENKOLOPEZ
Total landed141183
Total thrown321659
Percent44%28%
Jabs landed6335
Jabs thrown149295
Percent42%12%
Power landed78148
Power thrown172364
Percent45%41%
-- Courtesy of CompuBox
lopez-lomachenko-compubox-punch-stats
「前半は彼が取っただろうが、後半はほとんど私がラウンドをピックアップしたはずだ。今は故郷に帰ってラスベガスで受けた仕打ちについて考えたい。こんな採点は到底受け入れがたい。これでは今夜の私は判定では絶対勝てなかったってことだ。そうだろう?」(ロマチェンコ)。

…酷い話ですが、その通りです。

「予想もしてなかった」というなら、ロマチェンコがお花畑なだけです。

不利予想の逆風の中で、ウェルター級の強豪と戦うなら、ウクライナ人でも強烈な応援を集めることができたでしょう。

「ライト級は大き過ぎる」「ジュニアライトに戻る選択肢もある」…。自分がベストパフォーマンスを演じられる場所で戦うことは、どんなスポーツでも当たり前ですが、米国リングでスターダムの頂点に登りたいなら話は全く変わってきます。

ライト級で引き返すようでは、そこまでです。

そして、自分が勝手知ったる港湾から出ないのも素晴らしい生き方の一つですが、その港湾は米国の所有物です。そこで、米国が贔屓する人気者と争うのに、公正な採点を期待するならバカもいいところです。 

パックメイが斜陽してからPFPキングの座に就いたのはローマン・ゴンザレス、ゲンナディ・ゴロフキン、ロマチェンコでしたが、彼らはキングにふさわしい人気や待遇を受けることができませんでした。

軽量級のロマゴンは論外にしても、異邦人は米国のリングでは正当に扱われません。

そこで、文句を垂れても始まりません。

最初っからわかってたことです。

異邦人が米国から人気と待遇を強奪するには、方法はたった一つしかありません。

圧倒的不利の予想が立てられたスター選手との戦いに勝ち抜くことです。

GGGがアンドレ・ウォードやセルゲイ・コバレフに挑戦していたら、そして劇的な勝利を収めていたら、米国のボクシングファンでもカザフスタンの英雄だけでは終わらせません。

ロマチェンコでも「マニー・パッキャオに勝てる」と口先だけでなく実行していたら、今頃テオフィモごときと戯れあっていなかったはずです。 

もちろん、自分の部屋から出ようとしなかったGGG やハイテクの選択はきっと正解だったのです。

ぬくぬくとした部屋から出てたら、きっと凄惨な敗北を喫していたでしょうから。

カネロやテオフィモにおかしな判定を突きつけられて文句が言えるだけ、きっと幸せだったのです。