試合開始ゴングまであと約3時間。
リング誌/WBA/WBO/WBCフランチャイズ王者ワシル・ロマチェンコvsIBF王者テオフィモ・ロペスのライト級最強決戦。
現在のオッズはロマチェンコ2/9(1.22倍) に対して、ロペス10/3(4.33倍)。専門家予想は9割方、ロマチェンコを支持。
賭け率と予想、いわゆるペーパー上の対決では32歳のウクライナ人が、ブルックリン生まれの23歳を圧倒しています。
PFPランキングでESPN1位、リング誌2位に付けているロマチェンコの実力は広く認められていますが、ライト級という〝世界の中心=ウェルター級から二歩手前のクラス〟であること、そして米国にファンベースを持たない〝ウクライナからやって来た異邦人〟であることが十字架となって「頂点」の証明である「PPVイベントでメインを飾る1000万ドルファイター」からは遠いポジションに甘んじています。
一方、米国ニューヨーカーのロペスはそのルーツであるホンジュラス代表でリオデジャネイロ2016に出場するなどリングの外でも注目されながら、五輪イヤーの11月にプロ入り。デビュー戦の舞台はマニー・パッキャオvsジェシー・バルガスの前座が用意されたスター候補でした。人気先行の一発屋、温室栽培ラベルを付けられたロペスですが、将来はウェルター級への進出、つまり「頂点」へのアタックも視野に入れています。
「ライト級止まりのウクライナ人」が世界の中心で覇権を築く日は永遠に訪れることはありません。
その意味では、この試合が予想通りにロマチェンコの完勝で終わるならば、ライト級というコップの中で小さな波も起きなかったということでおしまいです。ボクシングの世界は何も変わりません。
しかし、ロペスが勝てば何が起きるのか?
正確にはロペスが勝っても「コップの中で波が立った」だけです。何も起きません。
しかし「頂点」へのアタックが始まるのです。
2016年、メダルを渇望した五輪で敗退しプロ転向してからこれまでのEL Brooklynの疾走を足早に振り返ります。
◉2016年10月10日◉トップランクと複数年契約を締結。契約金は200万ドル以上だったと言われています。
"I think this kid is a real talent, He's a real strong kid and has a really big future as a professional. He's a good fighter."
「こいつの才能は本物。プロの世界で大きな成功を収めるだろう」(ボブ・アラム)。
ロペスは当時19歳でしたが、すでに大言壮語を吐きまくってメディアを喜ばせていました。
「私のスタイルはとにかく頭脳的だということ。そう、アルバート・アインシュタインのように。シュガー・レイ・レナードやフロイド・メイウェザーJr.のように。私は頭脳的で優れたボクサーだがKOパンチも持っているエンターテイナーなんだ」。
◉2018年2月1日◉ファン・パブロ・サンチェス戦を前に、ロペスはSNSで"The Takeover"(略奪者・侵略者・王位を引き継ぐ者)を名乗ります。
〝EL Brooklyn〟の渾名に物足りなさを感じていたのでしょう。この辺りのセルフプロデュースのセンスは、プリティボーイからマネーに〝昇華〟したメイウェザーを彷彿させます…試合直前とはいえ、褒めすぎか?
◉2018年3月12日◉ビクター・フレイテスを衝撃的な1ラウンドKOで屠ると、その後「相手への敬意を欠く行為」と非難もされた"Take the L" dance をリング上で披露。
「これが"The Takeover"だ!見たか!」。
この試合はロマチェンコvsホルヘ・リナレスの前座としてセット。ESPNの記事ではマディソン・スクエア・ガーデンの「Huluシアター」とありますが、キャパ約2万人の「アリーナ」の間違いです。
ロマチェンコの「人気テスト」でしたが、チケット売上は低調で中上階席を封鎖、メディアやファンからは「人気がないのはわかりきってるんだから最初からシアターにすれば封鎖のコストがかからなかったのに」と辛辣な意見が寄せられる一方で、ロペスは「メインイベントは私にすべきだった」。
◉2018年7月14日◉ウィリアム・シルバを6ラウンドでKO。"The Takeover"の行進が続きます。
しかし、今試合中で拳を骨折、手術を余儀なくされます。
◉2018年12月初旬◉8日にプログラムされたロマチェンコvsホセ・ペドラサのアンダーカード(vsメイソン・メナード)を前に、ニューヨークのホテルロビーでテオフィモ父とロマチェンコが一触即発、乱闘寸前に。
試合は、またもやロマチェンコがモタつく内容で、ロペスは1ラウンドKO。
テオフィモ父は「ロマチェンコは人気だけじゃなく実力すらない」。
このイベントはさすがのアラムも弱気になって、身の丈にあったHuluシアターで行われました。
◉2018年2月2日◉キャリア最強のディエゴ・マグダレノを圧倒、7ラウンドで仕事を片付けます。
「俺のことを応援してくれる人もいれば、悪く言うヤツもいる。しかし誰もが俺から目が離せないんだ!」。
◉2019年2月19日◉マックス・ケラーマンとの対談で「世界タイトルに挑戦したい」と表明。
階級最強のロマチェンコをここでも〝口撃〟。
「彼の動きをみんな絶賛ずるけど、明らかに癖がある。全部は言えないけど口撃に切り替えるときは同じサイドから繰り返す。ロマチェンコを攻略する作戦があるか?何通りもある」。
◉2019年4月19日◉ロマチェンコはアンソニー・クロラを4ラウンドで破壊。
Lomachenko says: "I think the [hardest] will be Campbell, second place is Mikey and ... second Mikey," ignoring Lopez completely.
試合後の記者会見で「マイキー・ガルシアとテオフィモ・ロペス、ルーク・キャンベル、この三人の中で手強い順番を付けるとしたら?」と聞かれたロマチェンコは「一番はキャンベルかな。二番目はマイキー、二番目もマイキー」。
意図的にテオフィモを無視しました。
テオフィモ父は「なんて心の狭い男なんだ。だから人気がなくて、小さい会場をあちこちドサ回りする羽目になるんだ。息子と戦えばヤツのキャリアは終わる」と不快感をあらわにします。
◉2019年4月20日◉エディス・タトリを5ラウンドで粉砕したロペスは「頭脳的に戦えた。タトリはロマチェンコならまたズルズルと判定まで行くような相手だった」。
「タイトルに挑戦する。IBF (リチャード・カミー)でも空位のWBCでも、どちらでも」。
◉2019年6月16日◉テオフィモ親子がポッドキャストthe 3 Knockdown Rule に登場。
「ロマチェンコは過大評価のかたまり。いつまで五輪2大会連続金メダルを引きずってるんだ?金メダル2個?三階級制覇?結構なことだが、それで人気は?大会場でメインも張れないんじゃ、金メダルも三階級制覇もゴミみたいなもんだ」(テオフィモ父)。
「試合が面白くないから人気がないんじゃないの?不細工な試合をしても五輪金メダリストは『たまたま調子が悪かった』とみんなが慰めるんだから、甘やかしすぎ」(テオフィモ)。
◉2019年7月19日◉問題の中谷正義戦。大差判定勝ちのスコアに「奇妙な判定。あそこまでの差はない。ここにもカネロがいた」(リング誌)。
ホテルのエレベータでロペスは「思い通りに戦えなかった」と号泣。
「中谷戦でロペスが露呈したのはAプランを崩されると何もできない幼稚なファイターだということ。中谷にあと少しだけのパンチと経験があればロペスは倒されていた」。
◉2019年12月14日◉IBF王者リチャード・カミーに挑戦。戦前の予想とオッズは意外にもロペスがやや有利。
しかし、結果は2ラウンドで決まった衝撃のKO劇。
◉2020年8月12日◉ロマチェンコvsロペスが10月17日に開催すると正式発表。
翌日、テオフィモ父は「100%ノックアウトできる。そしてジュニアはスーパーヒーローになる」。
◉2020年9月8日◉ テオフィモがESPNにだけ「ロマチェンコ打倒」の秘策を「キーパンチはボディ」と話す。
「ボデイを叩く。ロマチェンコは上も下も打たれ弱いが、まず下からダメージを与えていく」。
◉2020年9月29日◉テオフィモ父が「オッズも予想も不利なままだが、ロマチェンコがカミーを2ラウンドでKOするのを想像できるか?ロマチェンコが息子をKOするには何発打たなきゃいけない?息子は過大評価の金メダル野郎を一発で沈めるけどな」。
「どう考えても、息子がロマチェンコを失神KOするのに6ラウンドはかからない」。
◉2020年10月12日◉テオフィモは「父親のトークはそんなに気にならない。自信は私の中にある。父親は愛している、もちろん。ただ、父親の予言、前半KOを実現することにはこだわらない」。
「ずいぶん長かったような、あっという間の気もするが、これはゴールじゃない。この勝利で私が何者であるかが証明される」。
リング誌/WBA/WBO/WBCフランチャイズ王者ワシル・ロマチェンコvsIBF王者テオフィモ・ロペスのライト級最強決戦。
現在のオッズはロマチェンコ2/9(1.22倍) に対して、ロペス10/3(4.33倍)。専門家予想は9割方、ロマチェンコを支持。
賭け率と予想、いわゆるペーパー上の対決では32歳のウクライナ人が、ブルックリン生まれの23歳を圧倒しています。
PFPランキングでESPN1位、リング誌2位に付けているロマチェンコの実力は広く認められていますが、ライト級という〝世界の中心=ウェルター級から二歩手前のクラス〟であること、そして米国にファンベースを持たない〝ウクライナからやって来た異邦人〟であることが十字架となって「頂点」の証明である「PPVイベントでメインを飾る1000万ドルファイター」からは遠いポジションに甘んじています。
一方、米国ニューヨーカーのロペスはそのルーツであるホンジュラス代表でリオデジャネイロ2016に出場するなどリングの外でも注目されながら、五輪イヤーの11月にプロ入り。デビュー戦の舞台はマニー・パッキャオvsジェシー・バルガスの前座が用意されたスター候補でした。人気先行の一発屋、温室栽培ラベルを付けられたロペスですが、将来はウェルター級への進出、つまり「頂点」へのアタックも視野に入れています。
「ライト級止まりのウクライナ人」が世界の中心で覇権を築く日は永遠に訪れることはありません。
その意味では、この試合が予想通りにロマチェンコの完勝で終わるならば、ライト級というコップの中で小さな波も起きなかったということでおしまいです。ボクシングの世界は何も変わりません。
しかし、ロペスが勝てば何が起きるのか?
正確にはロペスが勝っても「コップの中で波が立った」だけです。何も起きません。
しかし「頂点」へのアタックが始まるのです。
2016年、メダルを渇望した五輪で敗退しプロ転向してからこれまでのEL Brooklynの疾走を足早に振り返ります。
◉2016年10月10日◉トップランクと複数年契約を締結。契約金は200万ドル以上だったと言われています。
"I think this kid is a real talent, He's a real strong kid and has a really big future as a professional. He's a good fighter."
「こいつの才能は本物。プロの世界で大きな成功を収めるだろう」(ボブ・アラム)。
ロペスは当時19歳でしたが、すでに大言壮語を吐きまくってメディアを喜ばせていました。
「私のスタイルはとにかく頭脳的だということ。そう、アルバート・アインシュタインのように。シュガー・レイ・レナードやフロイド・メイウェザーJr.のように。私は頭脳的で優れたボクサーだがKOパンチも持っているエンターテイナーなんだ」。
◉2018年2月1日◉ファン・パブロ・サンチェス戦を前に、ロペスはSNSで"The Takeover"(略奪者・侵略者・王位を引き継ぐ者)を名乗ります。
〝EL Brooklyn〟の渾名に物足りなさを感じていたのでしょう。この辺りのセルフプロデュースのセンスは、プリティボーイからマネーに〝昇華〟したメイウェザーを彷彿させます…試合直前とはいえ、褒めすぎか?
◉2018年3月12日◉ビクター・フレイテスを衝撃的な1ラウンドKOで屠ると、その後「相手への敬意を欠く行為」と非難もされた"Take the L" dance をリング上で披露。
「これが"The Takeover"だ!見たか!」。
この試合はロマチェンコvsホルヘ・リナレスの前座としてセット。ESPNの記事ではマディソン・スクエア・ガーデンの「Huluシアター」とありますが、キャパ約2万人の「アリーナ」の間違いです。
ロマチェンコの「人気テスト」でしたが、チケット売上は低調で中上階席を封鎖、メディアやファンからは「人気がないのはわかりきってるんだから最初からシアターにすれば封鎖のコストがかからなかったのに」と辛辣な意見が寄せられる一方で、ロペスは「メインイベントは私にすべきだった」。
◉2018年7月14日◉ウィリアム・シルバを6ラウンドでKO。"The Takeover"の行進が続きます。
しかし、今試合中で拳を骨折、手術を余儀なくされます。
◉2018年12月初旬◉8日にプログラムされたロマチェンコvsホセ・ペドラサのアンダーカード(vsメイソン・メナード)を前に、ニューヨークのホテルロビーでテオフィモ父とロマチェンコが一触即発、乱闘寸前に。
試合は、またもやロマチェンコがモタつく内容で、ロペスは1ラウンドKO。
テオフィモ父は「ロマチェンコは人気だけじゃなく実力すらない」。
このイベントはさすがのアラムも弱気になって、身の丈にあったHuluシアターで行われました。
◉2018年2月2日◉キャリア最強のディエゴ・マグダレノを圧倒、7ラウンドで仕事を片付けます。
「俺のことを応援してくれる人もいれば、悪く言うヤツもいる。しかし誰もが俺から目が離せないんだ!」。
◉2019年2月19日◉マックス・ケラーマンとの対談で「世界タイトルに挑戦したい」と表明。
階級最強のロマチェンコをここでも〝口撃〟。
「彼の動きをみんな絶賛ずるけど、明らかに癖がある。全部は言えないけど口撃に切り替えるときは同じサイドから繰り返す。ロマチェンコを攻略する作戦があるか?何通りもある」。
◉2019年4月19日◉ロマチェンコはアンソニー・クロラを4ラウンドで破壊。
Lomachenko says: "I think the [hardest] will be Campbell, second place is Mikey and ... second Mikey," ignoring Lopez completely.
試合後の記者会見で「マイキー・ガルシアとテオフィモ・ロペス、ルーク・キャンベル、この三人の中で手強い順番を付けるとしたら?」と聞かれたロマチェンコは「一番はキャンベルかな。二番目はマイキー、二番目もマイキー」。
意図的にテオフィモを無視しました。
テオフィモ父は「なんて心の狭い男なんだ。だから人気がなくて、小さい会場をあちこちドサ回りする羽目になるんだ。息子と戦えばヤツのキャリアは終わる」と不快感をあらわにします。
◉2019年4月20日◉エディス・タトリを5ラウンドで粉砕したロペスは「頭脳的に戦えた。タトリはロマチェンコならまたズルズルと判定まで行くような相手だった」。
「タイトルに挑戦する。IBF (リチャード・カミー)でも空位のWBCでも、どちらでも」。
◉2019年6月16日◉テオフィモ親子がポッドキャストthe 3 Knockdown Rule に登場。
「ロマチェンコは過大評価のかたまり。いつまで五輪2大会連続金メダルを引きずってるんだ?金メダル2個?三階級制覇?結構なことだが、それで人気は?大会場でメインも張れないんじゃ、金メダルも三階級制覇もゴミみたいなもんだ」(テオフィモ父)。
「試合が面白くないから人気がないんじゃないの?不細工な試合をしても五輪金メダリストは『たまたま調子が悪かった』とみんなが慰めるんだから、甘やかしすぎ」(テオフィモ)。
◉2019年7月19日◉問題の中谷正義戦。大差判定勝ちのスコアに「奇妙な判定。あそこまでの差はない。ここにもカネロがいた」(リング誌)。
ホテルのエレベータでロペスは「思い通りに戦えなかった」と号泣。
「中谷戦でロペスが露呈したのはAプランを崩されると何もできない幼稚なファイターだということ。中谷にあと少しだけのパンチと経験があればロペスは倒されていた」。
◉2019年12月14日◉IBF王者リチャード・カミーに挑戦。戦前の予想とオッズは意外にもロペスがやや有利。
しかし、結果は2ラウンドで決まった衝撃のKO劇。
◉2020年8月12日◉ロマチェンコvsロペスが10月17日に開催すると正式発表。
翌日、テオフィモ父は「100%ノックアウトできる。そしてジュニアはスーパーヒーローになる」。
◉2020年9月8日◉ テオフィモがESPNにだけ「ロマチェンコ打倒」の秘策を「キーパンチはボディ」と話す。
「ボデイを叩く。ロマチェンコは上も下も打たれ弱いが、まず下からダメージを与えていく」。
◉2020年9月29日◉テオフィモ父が「オッズも予想も不利なままだが、ロマチェンコがカミーを2ラウンドでKOするのを想像できるか?ロマチェンコが息子をKOするには何発打たなきゃいけない?息子は過大評価の金メダル野郎を一発で沈めるけどな」。
「どう考えても、息子がロマチェンコを失神KOするのに6ラウンドはかからない」。
◉2020年10月12日◉テオフィモは「父親のトークはそんなに気にならない。自信は私の中にある。父親は愛している、もちろん。ただ、父親の予言、前半KOを実現することにはこだわらない」。
「ずいぶん長かったような、あっという間の気もするが、これはゴールじゃない。この勝利で私が何者であるかが証明される」。

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