プロボクシングの世界で、WBSSのようなトーナメントは稀有です。

それでも、目の前の敵をスキップして〝大勝負の決勝戦〟に気を逸らせるとろくなことはありません。世界タイトルの価値が暴落した現代、スーパー選手への道は実は目に見えないトーナメントを勝ち抜いてゆくようなものです。 
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このブログで繰り返しているように「バンタム級の選手がPPVのメガファイトを戦い1000万ドル単位の報酬を獲得する」なんてことは、米国ではありえません。過去にもPPVに乗ったバンタム級は、メキシコのスター選手ですら皆無です。

井上尚弥の現在位置、トップランクと日本開催の試合も含めた3試合契約を締結(その金額は未発表)、その初戦が今月31日のジェイソン・モロニー戦です。

その放送は本放送ではなく前座向けのESPN+の配信、本来は味方である筈のそのESPNが9月のタイミングで「米国のボクシングファンは井上なんて名前も聞いたことが無い」と事実をわざわざ記事にし、試合前1ヶ月を切ってようやくブックメーカーがオッズを立ち上げるなど、誰がどう考えても米国で注目されているとは口が裂けても言えません。

先日、この10月31日に日程・会場がリスケになった「ガーボンタ・デービスvsレオ・サンタクルス」の報道でも「この日は井上の試合とバッティングする」なんて報道はたったの一つもありませんでした。

やはり、同じ10月31日に英国で行われるオレクサンダー・ウシクvsデレック・チゾラのノンタイトル戦の方が、米国での注目度や報道量は米国で試合する井上よりも圧倒的に上というのが厳しい現実です。
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同じ日に行われる井上の2団体統一戦と、ウシクのノンタイトル戦のオッズ一覧。井上の試合が世界的にもいかに注目されていないかは、残念ながら一目瞭然です。

トップランクの不倶戴天のゴールデンボーイ・プロモーションズと密接な関係にあるリング誌が「ラスベガスで開催されたコロナ後イベントで最も注目度が低い世界戦」(リング誌)と報じられても何の反論できません。

欧米では全く関心が払われないバンタム級、そして欧米で馴染みの無い人種同士の対決では致し方ありません。

ただ、欧米の興味・関心はライト級から芽生え始めます。もちろん、ライト級のスーパースター、ワシル・ロマチェンコですらPPVメインの経験は無しですから、井上信者らが希求する「PPVで20億円」なんて夢のまた夢なのですが、ライト級ならようやく「軽量級」と認めてもらえます。

井上が1試合20億円のファイトマネーを得る可能性があるとしたら、日本でかつての「K1」や「プライド」のように海外の軽量級のスター選手を集めてハイレベルな戦いを展開することです。

そこには「アラブの富豪から愛される悪魔王子バダ・ハリ」のような嘘は必要ありません。ホンマもんで勝負できるのです。

それに対して、井上が米国でPPVスターになるのは100%不可能です。ESPNですら「+で配信してやる」という、もはや人気があるとか無いとかの次元では無い「全く無名」のバンタム級の試合を誰が買うでしょうか?

「K1」や「プライド」の成功は刹那とはいえ、十分参考になる筈です。彼らがやるしかなかったバダハリや曙のような虚構は、ボクシングで弄する必要はありません。

大きな興行をぶち上げれば、昨年の「さいたまスーパーアリーナ」のように世界が「軽量級でこんなイベントが出来るのか!」と驚くでしょう。

それを何度か積み重ねれば、魅惑的なイベントに目が無いラスベガスのカジノ&リゾートは招致フィーを払ってでも「さいたまスーパーアリーナ」を輸入したいと考えるかもしれません。

ネックとしては〝ワンデー〟で決着・完結する「K1」や「プライド」の成功メソッドは、ボクシングでは難しいという点でしょうか。

英国では重量級のワンデートーナメントがあるとはいえ、ラウンド数の少ない若手が報酬を稼げる場作りです。

ジェイソン・マロニー戦は通常の世界戦、防衛戦ですが、これを周辺階級の選手も引き寄せるバンタム級最強トーナメントとして組めるとしたら、それは不人気階級でしか展開できないがゆえ〝詐欺的〟手法に走ってしまったWBSSのような欧米地盤では不可能です。

「最強決定トーナメント」で多くのケースで頓挫、キックオフしても空中分解したり、十分な注目が集められないことがほとんどです。

近年では、欧州では人気階級のスーパーミドル級で展開したSuper Six World Boxing Classic が「成功」といえるでしょうか。

米国での人気は難しい評価になりますが「アンドレ・ウォードというダークホースのスーパースターを生み出した」(リング誌)は、そうかもしれません。

ウォードがダークホースだったのは結果論とは言え「誰も見る目がないんかい!」ということです。そして、ウォードがスーパースターになれたのか?というのもちょっと難しいです。

「米国最後の金メダリストをあまりにも蔑ろにしすぎ」と〝神の子〟を後押ししたリング誌やESPNでしたが、ボクシングファンはなびきませんでした。

もしかしたら、ウォードは村田諒太を羨んでいるかもしれません。
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↑リング誌2012年5月号から。

日本のファンにも記憶されるWBSSは「横アリ」「たまアリ」の日本開催こそ大成功でしたが、総括して成功と呼ぶにはあまりにも多くの〝齟齬〟があり過ぎました。

日本でのバンタム級トーナメント、あるいはジュニアフェザー級トーナメント。
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80年代にドン・キングが仕掛けた「マイク・タイソンのマイク・タイソンによるマイク・タイソンのためのトーナメント」は歴史上最も成功したトーナメント・イベントかもしれません。

このヘビー級トーナメントに習って、ちょっとした仕組まれ感も含ませながら、妄想してみましょう。

WBSSとは違い、正真正銘の高額賞金トーナメントですからジュニアバンタムからも参戦希望者が殺到するでしょう。

そしてジュニアフェザーや、もしかしたらフェザーからでも。フェザーのスター選手の場合はキャッチウェイトが適用され、ダブル王座がステイクされます、当然。

優勝者はフライ〜フェザーの4階級を制覇することになる夢のトーナメントです。

エントリーは井上尚弥、井岡一翔、田中恒成、比嘉大吾、ローマン・ゴンザレス、ファン・フランシスコ・エストラーダ、ジョンリール・カシメロ、ギジェルモ・リゴンドー、ノニト・ドネア、ムロジョン・アフマダリエフ、岩佐亮佑、ゲイリー・ラッセルJr.、ジョシュ・ウォリントン…この面子なら優勝賞金150万ドルでも日本に来るでしょう。