日本以外で軽量級ボクサーであることは、悲劇です。

ボクシングの中心地は米国、メッカはラスベガス。それは、ある意味で正しく、ある意味で大間違いです。

世界で最も大きなおカネが動くイベントはラスベガスで行われます。ヘビー級やウェルター級のメガファイトの震源地は間違いなくラスベガスです。

ファイトマネーが1000万ドルを超える、他のスポーツ選手も羨むようなメガファイトが、確かにラスベガスで繰り広げられてきました。

しかし、それは米国で関心が低いライト級以下の軽量級では全く無縁の世界です。

さらに、米国の一般のボクシングファンの関心はゼロと言い切っても良いジュニアフェザー級以下の、いわゆる「超軽量級」では歴史上、一度もPPVイベントが行われたことがない不毛のクラスです。

どんなにボクシングに詳しい方でも「ラスベガスで行われたバンタム級やフライ級のメガファイト」など、一つも挙げることができないでしょう。

当たり前です。そんなもの、そもそも一度も存在したことが無いのですから。
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カリフォルニア州イングルウッドのザ・フォーラム(現在はマディソン・スクエア・ガーデン社が運営)は、歴史的にも軽量級の名試合で多くの観客を引き付けてきました。

日本のボクシングファンにとっても、ここは最も好きな会場の一つでしょう。私も大好きです。カジノは諸行無常、やはり味気がなさすぎです。

軽量級史上に残る「100万ドルマッチ」マイケル・カルバハルvsウンベルト・ゴンザレスが拳を交えたのもザ・フォーラムです。井岡一翔がマクウィリアムス・アローヨに完勝した「スーパーフライ」が行われたのもこの〝伝統の館〟です。

キャパも約1万7000人と、MGMグランドのガーデナリーナとほぼ同じ。とはいえ、商売で見るとラスベガスの大会場や、東海岸のマディソン・スクエア・ガーデンのスポーツアリーナやバークレイズセンターよりも格下です。
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そして、たとえ英国やメキシコといったボクシング大国であっても「中量級との格差は耐えられないレベル」(ファン・フランシスコ・エストラーダ)、「私がミドル級なら住む家も乗る車も何もかもが変わっていた」(カリド・ヤファイ)という厳しい現実が横たわっています。

もちろん、軽量級が最高に恵まれた日本でも「井上尚弥がミドル級なら」「井岡一翔の4階級制覇が中量級で成し遂げられていたなら」「木村翔の大番狂わせがウェルター級なら」日本のボクシングシーンは全く違うものになっていたでしょう。

いいえ、日本どころか世界のボクシングシーンが、革命的に変わっていました。

フライ、バンタムの軽量級は日本のファンが想像する以上に、欧米ではとにかくショボく、無視された存在なのです。

それでも、6フィギュア(6桁=10万ドル)の報酬を手に出来るエストラーダにヤファイ、井上、井岡…彼らは軽量級では超特別に恵まれたボクサーです。

そんな特権的な軽量級ボクサーですら、米国では「コアなマニアしか知らない存在」(リング誌)という表現はまだ優しい方で「井上なんて誰も知らない」(ESPN)なんて身も蓋もない言い方までされる始末です。

その軽量級ブルースを、この10年間も耳元で鼓膜が破れるほどの大音量で聞かされてきたのが、ジョンリール・カシメロです。

サーカスライフを強いられながら、しぶとく生き残ってきたフィリピン人の、何度目かの大勝負のときが迫ってきました。

「誰に負けても不思議じゃ無いが、誰に勝っても不思議じゃ無い」という、21世紀のワンダーボクサー。

そのWBOバンタム級タイトル初防衛戦を予想してゆきます。