「選手の意思表示は必要だ。選手の価値観や生き方をファンに伝えることは、同じ価値観を持つファンは賛同してくれる。そして、反発する価値観のファンは反発する。素晴らしいことに賛同も反発のどちらも、その選手への興味に昇華するのだ」。

新日本プロレスのハロルド・ジョージ・メイ社長がリードするプロレスの世界はもちろん、ボクシングでもフロイド・メイウェザーが「意思表示」の重要性を証明してくれています。

ジョージ・メイは「賛同も反発も歓迎」の姿勢ですが、メイウェザーはその上を行って「賛同よりも反発の方がエネルギー(注目力)は上」という事実を喝破「スポーツ史上最高のビジネスマン」(ESPN)という見事なセルフプロデュースを完成させました。

新日本プロレスは日本企業ですが、なんと顧客の半分以上が海外というグローバル展開に成功しているのです。マジソン・スクエア・ガーデンで大興行を打っちゃうんですから、当然です。

これはこれで一つのビジネスモデルです。軽量級の需要のないラスベガスに「行く」のではなく、日本で華やかなイベントを続けて、米国の方が興味を持って、大相撲のようにホテル&カジノが軽量級のボクシングを招致する流れです。

こっちが「憧れる」「目指す」のではなく、あっちから「招致」されるのです。

「面倒臭いけど行ったろか。その代わり日本でやった方が遥かにマシみたいなギャラやったらキャンセルな」という姿勢です。

ただ、これは日本相撲協会のような一枚岩のパワーハウスの存在に、米国ですでに印象づけされていた「スモウ」に対するミステリアスでエキゾチックなイメージがあって大成功しました。

JBCにはあまりにも荷が重く、米国での軽量級の印象はプラスどころかマイナスです。


ただ、自分の価値観をストレートに伝える情報発信は、ハメド型のド派手なパフォーマンスほどの効果はないかもしれませんが、注目度を上げる一助になります。

それどころか〝やらせ〟と冷めた目でみられる危険はハメド型と比べてはるかに低減されます。
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「女子とプロスポーツの間には多くの不条理な壁がある…男のアスリートはもらい過ぎ!ちゃんと配分せえよ!」。アディアダスまでスポンサーにつけて言っちゃうハーディの言葉はみっともない愚痴には聞こえません。


女子ボクサーの報酬の低さが理不尽であることを、自分のファンクラブが購入したチケット数、試合が放送されたときの視聴者数などから理事整然と訴えるヘザー・ハーディは、漫然と不満を並べるファン・フランシスコ・エストラーダやカリド・ヤファイら男子軽量級とは格が違います。

もちろん、エストラーダらはチケット売上や視聴者数に自分の試合が全く貢献できていない現実を出してしまうと藪蛇になるから、漫然と不満を垂れるしかないのでしょうが。

日本時間26日に日に黒人男性が白人警官に首の上に膝を押し付けられ殺害された事件に、ハーディはすぐにメッセージを発信しました。
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 “Don’t look away. Don’t say you can’t stomach it. Don’t say it’s too hard to watch. Watch this video and listen to him use one of his last breaths to beg for his mother.“

こんな事件を見過ごしちゃいけない。絶対に受け入れちゃいけない。見るに堪えないなんて逃げちゃダメだ、何が起きたかに目をそらすな。「呼吸ができない」と母親を呼んで息絶えた彼の死を無駄にしちゃいけない。

「警官の行為は事故が起きたミネソタ州では認められている拘束手法だ」というコメントには「呼吸ができないと許しを乞うていただろ!失神してから3分近くも膝を乗せたままだったろ!あれがどれだけ危険か、警官はわかってたはず」と即答。

州検察が 白人警官を第1級、2級ではなく第3級殺人罪で起訴されたことへも「軽すぎる」と一蹴。

抗議デモが暴徒化、 全米に広がりを見せていることにトランプ大統領が「略奪が始まれば、銃撃が始まる」と武力行使をちらつかせたことには「愚かだ。彼らは意味もなく怒ってるわけじゃない。火種は人種差別だ。そこに国が謝罪してきちんと対応しないと彼らは納得しない」と見事な答え。

スポーツ選手が政治や宗教的に偏った姿勢を見せるのは厳禁ですが、社会的な事件に対して自分の考えを発するのは悪くありません。

井上尚弥もこのコロナ感染での自宅待機やマスク着用の重要性を訴えていましたが、もっと鮮明な旗を振っていいと思います。 

「ボクシング」「女子」という二つの十字架を背負っているボクサーは、そのことがもっと重要に見えます。 

賢明な皆さまかお気づきだと思いますが、ハーディはアディダスを履き、ナイキを羽織り、エバーラストをはめています。いわゆる完全独占契約を結んでいないんです。

その話でいうと真っ先に思い浮かぶのは、イチローと松井秀喜でしょう。

グローブとバットはミズノ、シューズはアシックスなど使い分けたイチローに対して、松井はミズノ一色。

世界的にも超の付くスポーツセレブのイチローや松井と、女子ボクサーを同列に語る愚をあえて承知で書いてしまうと、ハーディは周囲がよく見えています。

そして、その〝周囲〟に向けては、女子にありがちな「自分を盛り立ててくれるありがとう」 だけではない「ちょっとおかしいやろ?」という剣先をしっかり突きつけてるのです。

しかも、その切っ先を向ける方向や角度もしっかりしてます。

愚痴しか言えないエストラーダやヤファイに教えてやってくれ。 

日本の大和撫子な女子ボクサーもハーディの牙を持って欲しい。もっと自分を表現していい!