先週の日曜日。英国バーミンガムアリーナでジョンリール・カシメロがゾラニ・テテを番狂わせでノックアウト。

これで、井上尚弥がコンプリートを目指すバンタム級のベルトコレクション、そのWBOピースの所有者が南ア人からフィリピン人に名義替えされました。

それにしても、それにしても…。

それにしてもフィリピン人です。

なんなの?こいつら?
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10〜15年前のパックマンは世界中のボクシングファンをメロメロにさせました。「ボクシングってこんなに面白いのか!」。小さなアジア人なのに、ナイキのCMも最高にかっこ良かった!

何の予備知識も要らない、単純に「見ればわかる」世界を提供してくれました。そして、そのエッセンスは偉大なパンチョ・ビラから受け継がれた「ハングリーな出稼ぎスピリッツ」でした。



貧困な国からハングリーで優れたボクサーが輩出されることは、我が国も経験したことです。

しかし、日本が戦後から60年代までのせいぜい20年弱しか貧困を経験せずに世界屈指の富裕国へテイクオフした一方で、フィリピンが迷い込んだ貧困のトンネルはいまだに出口が見えません。

〝そこ〟で待っていても、いつまでたっても暗い夜が永遠に明けないのだとしたら…出稼ぎに行くしかありません。豊かな国に道場破りです。

悲しいかな、彼らが愛する母国には彼らのエネルギーを受け止める余裕が無いのです。

ハングリーだけが武器の貧困な出稼ぎボクサーが、片道切符だけを握りしめてアメリカや日本に殴り込んだとき、何をしでかすか。


私たちボクシングファンは、今までそれをいやというほど見せつけられてきました。

1923年にフライ級史上最強のジミー・ワイルドをニューヨーク・ポログラウンズで叩きのめしてアジアに初めて世界タイトルをもたらした〝最初のパッキャオ〟パンチョ・ビラ。

1940年にはセフェリノ・ガルシアが、あのヘンリー・アームストロングの4階級制覇を阻止。もし、1940年のロスアンゼルス・ギルモアスタジアムでガルシアが負けていたら…。

パッキャオの「史上唯一のリネラルチャンピオン4階級制覇」は「アームストロング以来、史上2人目」になっていたところでした。

ガルシアは半世紀後に現れる可愛い後輩に、最高の援護射撃を放っていたことになります。

そして、ドネアよりも50年以上も前に眩い閃光を煌めかせ、米国西海岸で暴れまわったフラッシュ・エロルデ。

ウンベルト・ゴンサレスとアレハンドロ・ゴンサレス、メキシコが誇る強打のゴンサレス2人を大番狂わせで粉砕したルイシト・エスピノサとローランド・パスクワ。

1992年には「完全な咬ませ犬」とリング誌にこき下ろされたモーリス・イーストに平仲明信が攻め落とされてしまいました。

1998年にはマニー・パッキャオが〝密室のタイ〟でフライ級最強のチャチャイ・ダッチボーイジムを1−6のオッズの通りの劣勢をひっくり返す大逆転KO。

パッキャオについてさらに恐るべきは、21年前にスタートしたパックマン・ロードがまだゴールを迎えていないという驚愕の事実です。

90年代、00年代、10年代、そして20年代。4つのディケイドで世界王者とか、いくらなんでもやりすぎです…。

そして、2007年にはノニト・ドネアがPFPファイターのビック・ダルチニアンを電光石火の左フックで斬り落とします。

なんなの、こいつら。

Aサイドが勝つように仕組んだリングの空気が読めないのか?


カシメロの体にも、偉大すぎる先人たちと同じ破天荒の血液が流れているのは間違いありません。

ボクシングの歴史に灼熱の拳で克明にマーキングされてきたフィリピン人による大番狂わせの被害者リストには豪奢なビッグネームがずらりと並んでいます。

だからといって、そこに井上尚弥の名前までが刻まれることなど、絶対に許してはいけません。

…が、しかし。ボクシングの面白さ、スポーツの本質を全身全霊で表現し続ける彼らの魅力に抗うことなど、誰にもできません。

彼らはBサイドと呼ぶことすら似つかわしくない、極貧のどん底から這い上がり、私たちが巧妙に仕組んだ台本を思い切り引き裂いてきたのです。

「高校7冠」とか「五輪金メダル」とかそんな作りモノ、養殖モノは、彼らには1人もいません。

彼らはすべからく天然物です。


10年前の2009年、まだリング誌が米国Yahoo!スポーツと蜜月関係にあった頃の「TOP 10 FILIPINO BOXERS OF ALL TIME」を独断と偏見で勝手に更新、修正、シャッフルしちゃいます。