日本時間10月6日:ニューヨーク マディソン・スクエア・ガーデン

IBF/IBO世界ミドル級王者決定戦


ゲンナディ・ゴロフキンvsセルゲイ・デレビャンチェンコ
 
昨年9月に宿敵カネロ・アルバレスに敗れて全てのベルトを手放してしまったGGGが、やはり昨年10月に空位のIBFストラップをダニエル・ジェイコブスと争い惜敗したウクライナのテクニシャンと王者決定戦。
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旧ソ連圏から生まれた国家に籍を置く二人は、当然のごとく卓越したアマチュア実績を引っ下げてプロのリングに乗り込みました。

アマチュア実績では、デレビャンチェンコも五輪や世界選手権の常連でしたが、アテネ五輪銀など多くの世界タイトルを収集したGGGに大きく軍配が上がります。

プロデビューはGGGが2004年、デレビャンチェンコが2014年と10年もの歳月が横たわっています。それゆえプロでの実績も比較になりません。

カザフスタン人がミドル級のタイトル完全統一に迫りPFPキングの座を射止めた一方で、ウクライナ人はまだアルファベットタイトルですら一つも手に入れたことがないのです。

様々なギャップがある2人ですが、年齢では37歳と33歳。年齢の差は4つだけ。

十分なアマチュア実績を積んだデレビャンチェンコを「プロでは経験不足 」と見ることが間違っているのは、わずか14戦とはいえプロでの戦いぶりが証明しています。

そして、プロでの試合数の少なさが 、3倍近いプロ41戦の激闘を経た37歳のカザフスタン人に対してフレッシュさで大きなアドバンテージになるのも当然です。

つまりは、デレビヤンチェンコには見られない劣化の綻びがGGGには明らかに現れているのです。

試合直前のオッズはGGG勝利が1/5(1.2倍)、ザ・テクニシャン10/3(4.33倍)。判定までもつれないKO決着ならGGG21/20(2.05倍)、テクニシャン8/1(9倍) 。

オッズから読み取れるのは「普通に考えたらGGGのKO勝利」。

ただ、劣化の細胞はボクサーの肉体を短時間であっという間に侵してしまいます。

これからリングに上がるのが「普通の」ゴロフキンなのかどうかは、誰にもわからないのです。



目の前の敵をなぎ倒してきた稀代のスラッガーの夏が終わってしまったのは明らかです。勝利、それもノックアウトという結果しか考えられなかった季節は通り過ぎてしまいました。 

両者入場。

ウィ・ウィル・ロック・ユーに乗ってデレビャンチェンコ。GGGはいつもの通り、セブン・ネイションアーミー。 

マイケル・バッファーのマイクはいいですね。Let's get ready to rumble!!!!!

第1ラウンド、 GGGのプレスにデレビヤンチェンコが下がる。GGGが下がった相手にはめっぽう強いのはわかってるはずですが、それでも下がるしかないほど、強烈で巧妙な重圧なんでしょう。

打ち合いからGGGの右がクリーンヒット、ダウン!GGGから見て10−8。

ザ・テクニシャンの見た目にはダメージが感じられないものの、主導権は握られました。

第2ラウンド。状況打開を図るべくデレビャンチェンコが先に手を出して前進。 

冷静に迎撃するGGGですが、有効打はありません。ウクライナ人が右目上をカット。かなり深い傷です。10−9(20−17)。

第3ラウンド。ダウンと出血から悠長な作戦は放棄するしかなくなったデレビャンチェンコが総攻撃モードへ。この試合でGGGが初めて相手の勢いに後退を強いられます。9−10(29−27)。

次の第4ラウンドも同じような展開でしたが、打ち合いは全くの互角。どちらにも振れる微妙なラウンドですが、9−10(38−37)に振ります。

インタバルでデレビャンチェンコの傷にドクターチェックが入って迎えた第5ラウンド。全盛期にはあれほど支配的だったGGGとは別人がこのリングで戦っています。

終盤にウクライナ人にボディをえぐられたGGG。効かされたサインを滅多に見せないGGGがあからさまに後退してしまいます。9−10(47−47)、私の採点ではこの時点でイーブン。番狂わせの予感が漂い始めます。

6ラウンドはテクニシャンの異名にかなった「スナッピーなジャブが全部当たる!」「これは我々が事前に考えていたストーリーとは違う」(実況解説)。9−10(56−57)。ついにウクライナのテクニシャンがリード。

インタバルでジョナサン・バンクスから「正面に立つな、サイドに回れ」「先に手を出せ」とGGGに檄が飛びます。全盛期なら敵コーナーが叫んでいた声を、ゴロフキンがその耳で聞くのはどんな気分だったでしょうか。ゴロフキンはもはや〝横綱〟ではありません。

第7ラウンドはその指示通りにGGGから仕掛けます。先手を取られたらまずいという、焦りが見えます。

…相手の出方を余裕で流してから仕事を決める、かつてのGGGの姿はもうどこにもありません。互角の打ち合いですが、焦って頭ばかりを狙うGGGに対して、デレビャンチェンコの上下の打ち分けが有効。9−10(65−67)。ウクライナのテクニシャンがリードを広げます。

インタバルでバンクスは「五分の展開。ポイントを取っていかないと勝てない。不用意に正面に立つな」。バンクスが採点をどう見ていたかはわかりませんが、本来なら言わなくても攻めるGGGに発破をかけるということは、恐らく「負けてる」と判断したのではないでしょうか。

インタバルでまたもドクターチェック。試合が止められるかもしれないと大観衆からブーイング。さすがにここでは止められません(が、ここでストップもありうるのがまともなスポーツですが)。

第8ラウンドも互角の打ち合いが続きます。GGGが意地を見せて押し込む場面も作ります。解説陣が繰り返すまでもなく「クロスゲーム」です。10−9(75−76)。

必死の反撃で疲れたのか第9ラウンドは下がるシーンが目立ったGGG。9−10(84−86)。判定を考えるとGGGにとって危険水域に入りました。バンクスはわかってるはずです。

第10ラウンドはGGGのキャリアで最も窮地に追い込まれた3分間となってしまいます。カザフスタンのスラッガーは空振りも目立ち疲労は極限に。9−10(93−96)。この時点でGGGは最低でもダウンを追加しなければ判定では勝てない状況に陥りました。

第11ラウンド。チャンピオンシップラウンド。デレビャンチェンコのパンチが多彩です。どちらも消耗していますが、GGGの方が疲労は深い。9−10(102−106)。

最終回。どちらも採点に確信は持てないはずです。真っ向からの打ち合いに。打ち負けて下がったのはGGGですが終盤に反撃。印象点も加味すると10−9(113−115)。

すごい試合でした。途中、何度か「あと1発でGGGが倒れるかもしれない」というシーンをいくつも作ったウクライナ人は今がキャリアハイです。そして、GGGの季節は完全に終わりました。

ゴロフキンが被弾したパンチ数230は、Compu Boxが統計したカザフスタン人の過去25試合で最多。

デレビヤンチェンコが素晴らしかった以上に、GGGにかつての面影はありませんでした。
Punch Stats
PUNCHESGGGTechnician
Total landed243230
Total thrown720738
Percent34%31%
Jabs landed10747
Jabs thrown406266
Percent26%18%
Power landed136183
Power thrown314472
Percent43%39%
-- Courtesy of CompuBox
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公式採点は115−112×2/114−112のユナニマスデジションで「Once more!」ゴロフキンが世界王座に返り咲きました。

試合中は「トリプルG」の合唱でカザフスタンの37歳に声援を送っていたMSGの大観衆でしたが、スコアが読み上げられとBooと不満の声も。

GGGの勝利者インタビューではブーイングが最高潮に。

GGGが下がり、明らかに効かされたシーンを見慣れていない私の採点がデレビャンチェンコ寄りにバイアスがかかっていたかもしれませんがESPNも114−113、デレビャンチェンコを支持しました。

本人の責任ではないとはいえ、全盛期に強豪との対戦が叶わず、衰えてからカネロやジェイコブス、デレビャンチェンコと手強い相手に苦戦を強いられたGGG。

今日のボクシングからは、かつての支配的な圧力と破壊的なパンチが完全に喪失されたとしか映りませんでした。

「私はデレビャンチェンコのプロモーターだが、GGGは大のお気に入りのファイターだ。ただ、今夜は私の好きなGGGはリングにいなかった。そして彼は勝者ではない」(ルウ・ディベラ)。 

ゴロフキンは「''I need a little bit more. I need to still get stronger in my camp. Just more serious. I need to work hard. I need a little bit more focus.'' もう少し出来たはずだった。キャンプからもっとしっかり仕上げるべきだたが。集中力も十分ではなかった」とベストの状態ではなかったと言い訳しましたが、ミドル級の第一線ではもはや傑出した存在ではありません。

多くの強豪の中の一人です。そしてそのパワーは時間とともに衰えています。「最後まで衰えないのがパワー」というのは通説ですが、GGGの場合は違います

GGGは「今日は私にとって上手くいかないことが多かった。セルゲイは思い通りに戦えたかもしれない」とまるで敗者のようなコメントも。

デレビャンチェンコは「カットが全て。血が目に入って右目が見えなかった。そしてGGGはその目を狙ってきた。言い訳じゃない、これがボクシングだ。カットがなければもっと正確で強いパンチが打ち込めたが仕方がない。再戦に応じてくれるなら倒す自信がある」と手応えを語っています。

今夜の報酬はゴロフキンが250万ドル。これに自らが代表をつとめるGGGプロモーションから興行収益の一部がプラスされ合計750万ドルが現金で支払われるほか、DAZNの親会社からも750万ドル分の株式が支払われる見通しです。

デレビャンチェンコはキャリアハイの400万ドルと公表されていますが、最低保障は520万ドルとされており、大金星を逃したウクライナ人にも上積みがありそうです。