今の日本ではセカンドチャンスを掴むことは、ほとんど絶望的に見えます。

薬物や暴力事件や、果ては家庭内事情のはずの不倫でも。

ときには誰が被害者なのかわからないにも関わらず、謝罪会見で頭をさげる人々。

もちろん、復帰を許すべきでない人もいます。

「家庭が大切。男も育児休暇をとって妻を助けるべき」と熱弁しながら、奥さんが切迫早産で入院中に不倫していた宮崎謙介元衆議院議員などは、仕事として主張していることと真逆の行為に手を染めたのですから、辞職は当然です。

宮崎は〝公約破り〟に等しいことをやったのです。本当に小さな小さな公約すら守ることが出来なかったのですから政治家失格です。

「野球と子供が大切」と泣いて訴えても、入れ墨を彫り薬物に手を出した清原和博にしても少なくとも入れ墨を消すまでは球界復帰は許すべきではありません。

彼は「日本は入れ墨に神経質すぎる。外国人は良くて日本人はダメって理解できない」と頭の悪いことを吐き出していましたが、清原が全身に入れた墨は、多くの外国人のタトゥーとはまったく違う、反社会組織が入れる類の、野球選手が彫ったり、子供に見せてはいけない種類のものでした。

そんなものを体に彫る人間がどの口で「野球と子供が大切」と言っているのでしょうか?頭が悪いにもほどがあります。

「男は忘れてはいけない悔しいことがあったとき、入れ墨を彫る」というのも、呆れてしまう言い訳です。それって暴力団が入れ墨を彫る理由じゃないですか。アスリートなら受け入れがたい屈辱は、グラウンドで返す以外にないはずです。

どこまで負け犬なのか。

彼らは深く後悔してるかもしれませんが、後悔先に立たずです。宮崎と清原を同列に語るのは違うかもしれませんが、口先と真反対のことを平気で繰り返したという点で同類です。

もちろん、不祥事を起こしながらセカンドチャンスをものにした「復活の人」も少なくありません。

しかし、それでも致命的に思える不祥事がプラスに働くことなど、めったやたらにあることではありません。

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そんな希少な例が前園真聖のケースです。

私は横浜フリューゲルスの熱狂的なサポーターでしたが、当時の前園のことはどうしても好きになれませんでした。

その才能は誰もが認めるところでしたが、いい加減な練習態度に傲慢な振る舞い、オタシリオ監督から「前園は後半になると運動量が目に見えて落ちる」と途中交代させられると、監督に対して「信じられない。何様のつもりだ」と暴言を吐きました。

フリューゲルスを強豪チームに仕立て上げてくれたオタシリオの判断は、全くもって正解です。

前園はチームを出て、当時は人気クラブだったヴェルディ川崎へ移籍するも精彩を欠き、ブラジルや韓国Kリーグでプレーするも思うような活躍はできないまま引退。

日本代表のキャプテンマークをつけて挑んだアトランタ五輪、マイアミの奇跡が前園のピークでした。

くすぶった才能は、第二の人生をテレビ東京の解説者などでスタート。一時は広告代店が全国区でSランクを付けたCMキャラクターの価値は、ゼロにまで下落していました。

俺はこんなもんじゃない。いつも過小評価されて損してる…そんな鬱憤がどんどん積み重なっていたのかもしれません。

そして、あの事件を起こしてしまいます。

2013年10月13日、泥酔した前園はタクシー運転手に殴る蹴るの暴行をはたらき逮捕されてしまうのです。

「やってはいけないことをやってしまった」と謝罪会見で涙を流す前園に同情する人は、少数派でした。

これで前園は表舞台から姿を消すだろう、誰もがそう思いましたが、事態は意外な展開を見せます。

前園が謝罪に訪れたタクシー運転手の方が「大きな騒ぎになってしまって申し訳ないね。大丈夫ですか?」とねぎらったというのです。

警察に通報したのは暴行の現場を目撃した通行人で、運転手の方は「大事にするつもりは一切ありません。被害届なんて考えもしてません。これからも頑張ってください」と エールの手紙を前園とメディアにも送ったのです。

あのとき、運転手の方が怒りの記者会見を開いていたら、今の前園はないでしょう。

そして、自身の傲慢を猛省する、その心根の奥にあった純真を松本人志が見抜かなければ、メジャーな舞台に上がることはなかったでしょう。 

こんなことは絶対に言ってはいけませんし、思ってもいけませんが…あの日、前園が泥酔してあのタクシー運転手の方を殴らなければ…今も前園はくすぶったままで地方局の小さな番組の片隅を濁らす存在のままだったかもしれません。