軽量級の方が見た目のスピードが速い。手足の長い重量級は移動距離がながいので鈍重に映る。

小さな身体の軽量級の方が酸素供給能力に優れている。

ヘビー級では、ダルなガス欠シーンがよく見られ、退屈な試合になりがち。

減量によるダメージで打たれ弱い状態が現出しやすい軽量級では、スペクタクルなKOシーンが産まれやすい。

「軽量級は注目度が低く、競技人口も少なく、報酬も低く、世界王者でも副業(専業?)を持たないと食っていけないこともある、だからレベルも低い」なんていうのは欧米の傲慢だということはマニー・パッキャオを見れば一目瞭然。

生で観る重量級のど迫力は認めるが、ボクシングにおいて、特にテレビ観戦するのに最も面白いクラスは軽量級だ。

…なんてこのブログでも、滔々と説いて来ましたが、確かに今でもその考え方は間違っていないと思いますますが、昨日のヘビー級タイトルマッチみたいな大艦巨砲の大戦を見せつけられると…。

あんな試合をリングサイドで観たら、どんな感動と興奮だったでしょう。

テレビモニターを通じても、ワイルダー が繰り出すパンチの理屈を超えた凄まじさ、鈍重なはずのフューリーの恐るべきしなやかさが、真っ直ぐに伝わって来ました。

大きいことはいいことだ!!!

かつて、ホリフィールドは「ヘビー級は何もかもが違う」と断言していました。

「他の階級は、互いに肉体を削る弱体化を最小限に抑える引き算のゲームだが、ヘビー級は最強の肉体がぶつかる戦争。パワーも打たれ強さも減量で区切られたクラスでは考えられないほど頭抜けている」と説明し「ボクシングの階級は本当は二種類しかない。ヘビー級とそれ以外だ」とまで言い切っています。

ヘビー級と同様、減量ではなく、自分の体重と肉体をデザインして試合に臨むパッキャオとメイウェザーを例外にして、ほとんど全てのボクサーは、弱体化を最小限に抑える引き算ゲームでリングに上がっているのです。

最近なら井上尚弥、古くはファイティング原田まで、過酷な減量は、美談として語られることもありました。

しかし、そんなにキツイならもっと上の階級で戦えばいいだけです。

マイク・タイソンは日本で生まれていたら、ミドル級で戦わされたかもしれません。

タイソンよりも軽いモハメド・アリは、プロでは迷わずヘビー級を選びました。

アリの破天荒なピッグマウスはヘビー級だからこそ成立したのであって、軽量級の選手が同じ言葉を吐いても誰も相手にしないでしょう。

もちろん、ヘビー級のつまらない試合は、世界戦でも救いようがないものも珍しくありません。

それは、どのクラスでも同じです。

何がなんでも勝つ!という鋼鉄のハートと、どんなに強い相手にも怯まない高貴な勇気。

とりあえず負けたくない、KO負けだけは避けたい、そんな安全運転に終始する試合には、幻滅しかありません。

日曜日の白昼に見せてくれたワイルダー とヒューリーには鋼鉄のハートと、高貴な勇気を剥き出しにしてくれました。

特にヒューリーは嫌いな人も多かったでしょうが、あんなど根性を見せられたらファンになるしかありません。

重度の鬱病で、深い自己嫌悪と厭世に悩み、何度も自殺を考えたと言います。

その男があのパフォーマンスを見せるのです。

あのリング上の二つのダウンなんて、彼にとっては屁でもなかったのでしょう。

もっと痛烈に打ち砕かれた人生のダウンから、見事に立ち直ったのですから。

ワイルダー も、このスポーツにおいてパンチがあるということが何を意味するのかを、健忘症のボクシングファンに思い出させてくれました。

あの細身の薄い体で、20キロも重い岩のような相手に真っ向から立ち向かいました。



今年もあと1カ月を切りました。

年末から来春にかけても注目のファイトが続きます。

今度は井岡一翔に「やっぱり軽量級が面白い!」とワクワクする試合を、マニー・パッキャオにはどうしてワイルダー もヒューリーも超越するスーパースターなのか、きっちり証明して欲しいものです。