ワンヘン・ミナヨーティン(タイ)50勝(18KO)無敗。【WBC世界ストロー級王者】評価B
IMG_0803
今年5月2日、ワンヘン・ミナヨーティンがリロイ・エストラーダを5ラウンドKOに屠り、WBCバージョンのタイトル9度目の防衛に成功しました。

これで、ワンヘンはデビューから50連勝を飾り、フロイド・メイウェザーの持つ「全勝王者の記録」に並びました。

メイウェザーの50連勝は昨年8月にボクシングデビュー戦のMMAファイター、コナー・マクレガーとの〝茶番劇〟で達成したもので、メディアやファンは「ロッキー・マルシアノの49連勝無敗の記録を更新したとは認めたくない」と揃って批判的な反応を示しました。
IMG_0312
ところが、きちんとした世界戦で打ち立てた、このワンヘンの偉業に対して米国メディアの扱いは小さく、その内容も「メイウェザーは数多くの有名な相手と戦い、ワンヘンとは3桁も4桁も違う報酬を手に入れていた。比較する対象ではない」(ESPN)と冷淡なのです。

こうなったら、空位のWBCバンタム級王座決定戦への出場が内定しているペッチ・ソー・チッパッタッナ(46勝31KO無敗)も是非王者になって、同胞のワンヘンとともにメイウェザーの記録をどんどん更新していただきたいものです。

そうなると、米国メディアは「全勝王者の記録」に興味を失って、その数字にふれることも激減するでしょう。

それにしても「Rocky Marciano’s 49-0 record」は、非常に都合の良い〝神話〟です。

この数字遊びが最も注目を浴びたのは、1980年代に盤石の強さを見せたラリー・ホームズでした。ホームズの挑戦は48連勝とタイ記録まであと一つという試合で、マイケル・スピンクスに番狂わせで敗れて潰えました。

マイク・タイソンにもその夢が託されましたが、ジェームズ・ダグラスにやはりまさかの大番狂わせで「50」には遠く及ばない37連勝で落伍を余儀なくされました。

この「都合の良い神話」は、米国人だけ、特にヘビー級にあてはめられる自己満足なのです。

フリオ・セサール・チャベスは、1993年にパーネル・ウィテカにドローで連勝を止められるまで87戦全勝72KOをマーク、マルシアノの49を38も上回る大記録を打ち立てていました。

チャベスと同じメキシコのカルロス・サラテも1978年にウィルフレド・ゴメスとの「両者合わせた戦績が73勝72KO1分」という超弩級の強打者対決に敗れるまで、51戦全勝50KOとマルシアノの記録を更新していました。

米国メディアは「二人のメキシコ人はその後もキャリアを続けて負けたから記録は無効」とでも言い張るのでしょうか?

「全勝王者の記録」は、一定の意味がありそうですが、チャベスのように強豪をことごとく蹴散らして三階級制覇しながらの87連勝は途轍もない偉業とはいえ、50戦近くまで無名選手相手に勝利をかき集めたチッパッタッナの評価は複雑です。

無敗のまま、王者としてキャリアを終えることに、全く価値がないとは思いません。

チャベスはもちろん、サラテやタイソンもそれぞれ51勝無敗、37勝無敗で引退していたら、現実の評価以上の虚飾の伝説になっていたはずです。マルシアノ同様に、盲目的な信者が増殖したことでしょう。 

しかし、そこに、どれほどの価値があるのでしょうか?

その後のリングで、生身の自分と戦い、のたうち回ったサラテやタイソンにこそ真実が、より高い価値があります。

完璧に見えるものは、全て欺瞞です。正真正銘の真理などがあるわけがありません。もし、そんなものがあると説く者がいたら、そいつこそが偽物です。

ましてや、リングの上で二つの拳だけで戦うボクサーにおいては。