7月28日 WBO世界ジュニアライト級王者決定戦

1位:クリストファー・ディアス vs 2位:伊藤雅雪

ワシル・ロマチェンコがホルヘ・リナレスのライト級王座に挑戦するために返上したタイトルの、新王者決定の一戦となります。

日本人ボクサーが海外で戦う理由は限られています。日本の大手ジムでエースと呼ばれるようなポジションの世界チャンピオンは、まず海は渡りません。昨年の井上尚弥のように、勝利が担保された完全雑魚相手のケースは例外です。

日本で戦うほうが報酬がはるかに高いのに、わざわざ危険な海外のリングに上がる必要などありません。そして双方ともにエースのカードを地元に引っ張りたい、より良い条件で戦いたいと考えるのは当然で、実現には幾つものハードルを越えなければならないのです。

井岡一翔も山中慎介も井上尚弥も、海外のスター選手とはグローブを交えることが出来ません。一方、昨年だけでも村中優や石田匠はカリド・ヤファイに英国リングに招かれ、木村翔は上海の屋内スタジアムでゾウ・シミンと戦いました。
01857070
木村翔が大番狂わせを起こした上海オリエンタルスポーツセンター。2016年1月30日にはトップランクがメインにシミン、セミに村田諒太を配する総勢28試合の大興行「王者(シミン)の帰還」を挙行しました。
 
maxresdefault
フロリダのキシミーシビックセンター。一見、ボクシングの会場には見えませんが、カリブが近いだけに各団体のラテンタイトル戦などが行われてきました。ウィルフレド・バスケスJr.もこの会場で戦っています。

 7月28日、フロリダ州キシミーのシビックセンターのリングに上がる伊藤も大手ジム所属ではなく(帝拳プロモートですが)、もちろん日本のエースではありません。

日本で世界戦を打つのに最低でも必要とされる2000万円前後の資金を集めることなど到底不可能な環境でも、 23勝12KO1敗と綺麗に星を並べてきました(日刊スポーツなど一部メディアで「(全て都内で戦って)23戦全勝」と報道されましたが2015年2月9日に日本ジュニアライト級王者・内藤律樹に挑戦、惜敗しています)。

23戦全勝は対戦相手のプエルトリカンの方です。内、KOは15。2016年4月にレイ・シメネスとの無敗対決を制して、空位のWBOユースのフェザー級王者に就き、昨年12月はブライアン・クルーズに判定勝ち、今年3月にはブラウリオ・ロドリゲスを4ラウンドでストップしてNABOジュニアフェザー級王者を獲得しています。

Pitufo(ベルギーの漫画の登場人物スマーフ)というちょっと微妙なニックネームを持つディアスは、伊藤より4つ年下の23歳、ボクシング大国プエルトリコのホープの一人です。
スクリーンショット 2018-06-24 12.27.51
似てる?
 
とはいえ、プエルトリコ最大のスター候補フェリックス・デルベホの前座をつとめるなど脇役扱いが続いていました。

しかし、今年3月17日マジソン・スクエア・ガーデンのシアターでベルデホが、格下相手にまさかの10ラウンドTKO負け。

思わぬ形で〝空位〟となったフェリックス・トリニダード、ミゲール・コットの後釜の座を狙う第1グループに躍り出たのが、このディアスです。

先月、英国でポール・バルターを切り刻んでバンタム級のIBFバージョンを強奪したエマニュエル・ロドリゲスも〝後釜候補〟ですが、いかんせんバンタム級、世界でもプエルトリコでも脇役階級です。

ジュニアライトもけして注目度の高い階級とは言えませんが、ウェルターを頂点とする肥沃な山裾を形成しているクラスです。スーパースターにとってはスタート地点、通過ポイントになる階級なのです。

プエルトリコメディアは「ディアスがコットからトーチを受け取ることができるかどうかの最初のテスト。満点回答が求められる」と期待しながらも、デルベホの挫折がまだ生々しいせいか「伊藤や(ライバル王者の)ミゲール・ベルチェルトやフランシスコ・バルガスには勝てるだろうが、ジャーボンタ・デービスは難しい」と弱気です。

現在、プエルトリコにはアルベルト・マチャドがやはり無敗(19勝無敗16KO)でWBAスーパー王者に就いています。このベルトは昨年10月21日に体重超過の前王者ジェスレル・コラレスと打撃戦を展開、7ラウンドまで全てのスコアカードでリードを許しながらも左一発で逆転KO勝ちして獲ったものです。

正直、コラレスはスピードは世界基準とはいえ、それすら際立ったレベルではありません。他は全てが世界基準以下の凡庸なボクサーです。しかも規律も欠落しています。

体重ハンデがあったとはいえ、コラレスとどっこいのマチャドは穴王者の匂いをプンプン漂わせています。

そのマチャドは来月21日、つまり「伊藤vsディアス」の1週間前にラスベガスのハードロックホテル&カジノでガーナからの刺客ラファエル・メンサーを迎えます。

アフリカの〝スイート・ピー〟も31戦全勝23KOと無敗ですが、これまでガーナを出て戦ったことは一度もありません。当然、強豪との手合わせはなく、その実力は神秘のベールに包まれています。

メンサーがデビュー戦のリングが組まれた「アズマー・ネルソン 総合スポーツ競技場」に名前を残す偉大な先輩を追いかけるポジションにつけるかどうか、そっちの方が注目かもしれません。

伊藤にも是が非でも頑張っていただいて、この階級の台風の目になって欲しいものです。そして、内山高志が拘束された、このジュニアライトを踏み台にしてビッグファイトのリングへの道を切り開いてください。