リングの上では理不尽なジャッジや判定が起きますが、それでもそこは密室ではありません。

差別や偏見に満ちたジャッジや、それが想起されるような許しがたい判定は、観客=証人が見ています。

しかし、差別や偏見が大手を振って歩く場所もあります。

刑事と被告しかいない、観客も証人ものぞくことの出来ない窒息の取調室。

偏重した見方しか出来ない蒙昧な人間だけで構成された陪審員に、それを看過する裁判官。

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リング誌2014年7月号 THE FIGHT OF A LIFETIME より

And though they could not produce the gun

The DA said he was the one who did the deed

And the all-white jury agreed.

証拠の拳銃は見つからなかった。

それなのに検事は言った やったのは彼しかいない

白人だけの陪審団は賛成した 
  Bob Dylan 「HURRICANE」 

 ルービン〝ハリケーン〟カーターは1966年、警官三人を射殺したとして逮捕され、終身刑の判決を受けます。

獄中で「The Sixteenth Round」 (リングを降りてからの戦い)を出版するなど冤罪を訴えたカーターは、1985年連邦裁判所から無罪判決を勝ち取り、ついに自由を取り戻しました。

20年以上にも及ぶ長く厳しい戦いに勝利したのです。これほど偉大な勝利はありません。

しかし、袴田巌は偉大なハリケーンの2倍以上、50年以上も戦い続けています。

東京高裁は、静岡地裁が再審開始の根拠としたDNA鑑定について「手法に疑問があり信用できない」として、再審を認めないと地裁の決定を取り消しました。

再審を認めないことの根拠が「DNA鑑定が信用できない」ということなので、司法の根本「疑わしきは罰せず」に触れるものではありません。

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ただ、そもそもこの事件は、袴田巌を犯人に仕立てるためにいくつものストーリーを検察が捏造し、そのほとんど全てが大きな矛盾を露呈していることこそが、典型的な冤罪だとされているのです。

ハリケーン・カーターがそうであったように、偏見や差別、国家の仕組みとの苛酷な戦いに勝つには小さな正義が結集するしかありません。