「井上は激戦のジュニアバンタムから敵前逃亡した」。

PFP1位のローマン・ゴンザレスを2度にわたって破ったシーサケット・ソールンビサイ。そのシーサケットと互角の戦いを繰り広げたファン・フランシスコ・エストラーダ。 軽量級最高クラスの人気者カリド・ヤファイ。〝パッキャオの後継者〟ジェルウィン・アンカハス。階級を下げてきた元バンタム級王者ルーシー・ウォーレン。〝香港のヤファイ〟レックス・ツォー。

実力者カルロス・クアドラスが、アルコールと薬物依存のリハビリのため戦線離脱したものの、現在の軽量級で最も活況を呈しているのがジュニアバンタムであることに誰も異論は無いでしょう。

これから115ポンドのUndisputed Championを決めるべく収斂されていく最終段階を前にして、井上尚弥が「減量が限界」と自己都合で戦線離脱したことは本当に残念でした。

しかし、負け惜しみか屁理屈に聞こえるかもしれませんが、競技人口という尺度で見ると、バンタムはジュニアバンタムよりも遥かに層が厚いのです。

全てのボクサーを網羅したデータベースはありませんが、一つの目安としてBoxRec(4月29日付)を見ると、ジュニアバンタム687人に対してバンタムは1014人。わずか3ポンドで47%も増えるのです。

ちなみに全17階級で競技人口No.1はウェルター(2033人)で、これはほとんど変動がなく、ファイトマネーの分布でもウェルターが飛び抜けて恵まれています。

一方バンタムは13位、ジュニアバンタムは15位です。村田諒太のミドルは日本では「最も層が厚い」と表現されることが多いのですが、現実にはウェルター、ジュニアウェルター(1994人)、ライト(1968人)、ジュニアミドル(1855人)に続く5位(1491人)となっています。

タレント豊富で、最強決定ステージが落ち着いたジュニアバンタムが強豪同士の激突を繰り返して、トップ選手で無敗をキープしているのは人気にプロテクトされたヤファイとツォーくらい、ロマゴンに代表されるように〝底が見えた〟ボクサーが目につきます。

階級最強決定という点からも、シーサケットがPFP1位ロマゴンを完全に沈めたことで決着、これからはシーサケットの〝防衛戦〟が見所とはいえ、ストーリーとしてはクライマックスは越えてしまいました。

かたやバンタムは、長らく強豪同士の対決が少なく井上尚弥を筆頭に、最強候補で無敗のライアン・バーネット( WBAスーパー/元IBF王者)、バーネットの対抗馬ゾラニ・テテ(WBO王者)、強豪ザハナト・ザキヤノフ、英国の人気者ポール・バルターにリー・ハスキンス、10年無敗のジェイミー・マクドネル(WBA王者)らが群雄割拠。
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10年以上も無敗を続けるジェイミー・マクドネルは、世界王者でありながら対立王者やボクシング観戦には全く興味がなく、井上尚弥のことも知りませんでした。英国のTV番組でシュガー・レイ・レナードがゲストとして隣に座っても「誰?」と周囲に聞いたと言いますから〝筋金入り〟です。沸騰する英国ボクシング界の中で地味な存在に甘んじているドンカスターのタフガイが、凄まじいモチベーションで5月25日の井上戦に挑んで来るのは間違いありません。

ウェイティングサークルには、プエルトリコのスター候補WBCラテン王者エマニュエル・ロドリゲス(5月5日に敵地でバルターと空位のIBF決定戦)、WBCシルバー王者ノルディン・ウーバーリ、5月19日に河野公平を挑戦者に迎えるWBAオセアニア/英連邦王者ジェイソン・マロニー(河野が16戦13KO無敗のオージー相手に大番狂わせを起こせば面白いのですが)、WBF/IBFインターコンチネンタル王者ズブキレ・マグワカ、46戦無敗の24歳ペッチ・ソーチッパタナら、いまだ無敗のファイターが世界ランクを賑わしている手垢がついていない階級です。 

ちなみにフェリックス・デルベホが頓挫した今、プエルトリコ期待の一番星、ロドリゲスは、敵地でバルターと戦うにもかかわらず、バルター勝利が3.4倍、ロドリゲス1.3倍、アバウト3−1で有利のオッズが建てられています。バルターはそのキャリアで黒星はテテにKOされた一つだけという強豪なのですが。

井上的には、〝マニー〟ロドリゲスに勝って欲しいですね。同い年の25歳、彼が東海岸プエルトリコのヒーローになってくれたら、マディソン・スクエア・ガーデンが待っています!

バンタムはジュニアバンタムと比較すると遥かに層が厚くて、これから最強決定のクライマックスを迎える階級なのです。


屁理屈と言われようが、負け惜しみに聞こえようが、「118ポンド、53.52㎏。とにかくだからバンタム級は凄いのだ!」。