第二回ワールド・ベースボール・クラシック。

トーナメント形式のお粗末さから、決勝で戦う韓国とは予選ですでに4度も当たっていました(日本の2勝2敗)。

決勝までの8試合、イチローの打率は、あろうことか2割1分1厘。

1次ラウンド初戦、中国戦が終わったときには「あのレベルの投手を打つことは想定したことがなかった」と、珍しく戸惑いを隠せませんでした。

それでも、イチローを先発から外すことは、原辰徳監督も、ファンも全く考えていませんでした。打率2割でも彼が日本最高の打者であることに、誰一人としてこれっぽっちも疑っていなかったからです。

宿敵、韓国との決勝はもつれにもつれます。

3−2。1点リードで9回裏、最後の守り。抑えのダルビッシュが乱れます。あのダルビッシュが腕を振りきれていません、四球を重ねヒットを打たれて同点に追いつかれてしまいます。

ものすごく嫌なムードが漂います。10回表、2アウトながら、一、三塁にランナーを置いて打席にはイチロー。イチローが打たなければ、10回裏にサヨナラを喰らう、そういう流れが、そういうニオイが誰にでも嗅げる展開でした。

この試合まで、イチローの得点圏打率は驚きの1割5分4厘。

それでも、日本中の野球ファンは至上の幸せを感じていました。決定的な最後の場面をイチローに託すことが出来たのです。

打てなくても納得です。日本史上最高の打者が打ち取られたのだったら、それは日本の負けです。文句ありません。

最後に託したのがイチローだったから、だからこそ、あんなギリギリの場面でも、ファンは泰然自若の心境で見ることが出来ました。

「最後のバッターがイチローだったら日本代表が勝ってたかもしれない」。そんな往生際の悪いこと言って悶々とする必要がないわけですから。

イチローが抑えられたら仕方がない。そんなふうに納得出来る選手がいるチームを応援できるファンは、本当に幸せです。しかも、最後の場面をその選手に託せるなんて、なんという幸運でしょうか。もうその時点で十分です。

心配なことは、敬遠する塁が一つ空いていることでした。

しかし、予選ラウンドの対戦前に「向こう30年、日本には手を出せないと思わせたい」とイチローが発言したことで、韓国は国を挙げて猛反発、監督は敬遠を支持したものの、投手コーチがサインをイム・チャンヨンに伝えなかったというチグハグな采配も、日本には幸運でした。

考えてみると「野球を始めてから最悪の絶不調」に「30年発言」から、最後の打席まで、第二回WBCという大会は、イチローがマッチポンプでデザインしたと言っても良いのかもしれません。