昨夜、テレ朝系で放映された「ファン1万人がガチ投票!プロ野球総選挙」。

初仕事となった職場、新年会の席でも「あれはおかしい!」と話題になりました。

テレビ朝日の公式HPを見ると「プロ野球史上もっともスゴイ選手が「野手」「投手」部門でそれぞれ決定!」「番組では野球ファン1万人に一大アンケートを実施!さらに現役選手、OB選手、さらに野球記者、さらにさらに!野球に詳しいタレントにも徹底リサーチ!史上初の「歴代スター選手番付」が完成した!」ということしかわからず、「ファン1万人」の属性(性別・年代・居住地など)には触れていません。

日本全国1億2千万人の総意を測るサンプル数として、「1万人」という数字は、マーケティング・リサーチの視点からは、十分すぎるものです。

問題は、そのサンプルの属性や内訳ですね。属性のバランスを無視してしまうと「男女差」「年代差」「地域差」の公平を欠いてしまいます。特に、「プロ野球史上もっともスゴイ選手」という時代をまたがるテーマで、属性をランダムにリサーチしてしまうと、総意からかけ離れた無茶苦茶な結果になるのは目に見えています。

また、調査時期や方法によっても大きなバイアスがかかりますね。

このリサーチは、大谷翔平の去就が注目された昨年後半に実施されたと思われるので、この事実上の人間国宝に多くの票が集まったことは容易に想像できます。

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【MLBで年間最高選手の栄光に輝いたイチローの偉業を大きく超えるプレーヤーなど、未来永劫この国から生まれるわけがないと確信していました。彼はMLBの規格の中で頂点を掴んだのですから。しかし…長年、日本のファンが「規格外だ…」とタメ息をつき敗北感にさいなまれていたMLBの世界から逆に「規格外だ」と驚愕される日本人が出現するなんて、妄想すら出来ませんでした。欧米から「想像力の塊だ」と称賛されているのは日本のマンガですが、まさかマンガの世界を具現化する若者が現れるなんて…。大谷翔平はクールジャパンの最終兵器なのかもしれません!といっても、このベビーフェイスの怪物はMLBでは何一つ成し遂げていません、ゼロです。伝説の1ページ目はまだめくられてもいませんが、どんなファンタジー小説もSF映画もぶっ飛ぶような途轍もない物語が、日本人の若者を主人公として、今まさに始まろうとしているのです!】

方法という点では、「純粋想起なのか助成想起なのか」「シングルアンサーなのかマルチアンサーなのか」によっても、その結果は大きく異なります。街中でいきなり「プロ野球史上もっともスゴイ選手は?」とマイクを向けられると、長年のファンでも「大谷?」と口走ってしまいそうです。

しかし、100人程度のグレートを絞って提示、「この中から〝プロ野球史上もっともスゴイ選手〟を5人選んで下さい。1位点から5位点で順位を決めます」と聞かれると、大谷を1位に選ぶファンは激減するのではないでしょうか。

プロボクシングには〝史上もっともスゴイ選手〟を測るPFPという物差しが根付いています。陸上競技や水泳などのタイム競技は〝数字〟という絶対的な指標を持っています。

その一方で、本当の国技と言い切って差し支えない野球の世界には〝史上もっともスゴイ選手〟を測る物差しが見当たらない状況です。

「時代を牽引し、日本列島を熱狂させた」という物差しなら、これはもはや長嶋茂雄でしかありえません。

「アスリートとして最も高いステージで最も大きな成果を収めた」という物差しなら、多くのファンがイチローで納得するでしょう。

「偉大。苛烈な逆風を全身に受けながら開拓不可能と思われたフロンティアに後輩たちの道標を刻んだ偉大さ」という物差しなら、野茂英雄、その人しかいません。

昨夜、多くの野球ファンを楽しませてくれた番組が議論を呼んでいる理由は、おそらく「リサーチの基本」から大きく逸脱していたこと、〝スゴイ〟の「物差し」を全く提示しなかったために、その順位の「裏付け」もやはり全く見えてこなかったことです。

「プロ野球史上もっともスゴイ選手=エンターテインメントに秀でた選手」であるなら、新庄剛志(阪神)は大いにアリですよね。

「プロ野球史上もっともスゴイ選手=もっとも劇的な瞬間を演出した選手」であるなら、リーグ優勝を決定させる、まさかの代打逆転サヨナラ本塁打を放った北川博敏(元阪神)を挙げて文句のある人はいないでしょう。

「プロ野球史上もっともスゴイ選手=圧倒的な実力をまざまざと見せつけた選手」であるなら、オールスターで9連続三振を奪った江夏豊(阪神)でしょう。

何はともあれ、野球中継が激減というか、ほぼ絶滅状態の現在、ゴールデンタイムにこういう番組がオンエアされることは、野球ファンばかりか、野球界にとっても最高です。

納得できない方は「喝!」と怒号しているでしょうし、異論反論が渦巻くのは当然ですが、プロ野球にとっては間違いなくプラスな、楽しい番組でした。