メガファイトが立て続きます。

今度はカネロ・アルバレス対フリオ・セサール・チャベスJr.。舞台はラスベガスの新たな聖地、T-モバイルアリーナ。

164.5ポンドのキャッチウエイトで行われる12回戦で、タイトルこそかかっていませんが、二人は目に見えない大きなものを賭けて戦います。

アルバレスが勝てば、すでに水面下で進んでいる9月予定の待望のゲンナディ・ゴロフキンとの一戦の詰めの交渉が開始されます。そして、チャベスが番狂わせを起こせばエンスト状態で地に落ちた評価をひっくり返すことが出来ます。

この二人はの対決は、絶対に避けることの出来ないまさしく運命の激突でした。

本物のボクシング大国メキシコでは近隣階級に人気選手を二人抱えるようなことは、絶対に許しません。歴史的にも「どちらが強いのか」を必ず決めてきました。今の日本では山中慎介、井上尚弥、井岡一翔が近隣階級で人気を集めていますが、陣営はもちろん、なぜかファンも彼らの激突を希求しません。最も盛り上がるカードであることは誰もが分かっていても「日本人の世界王者が星を潰し合うことはない」という心理が働いているのでしょう。もちろん、負けた方はその輝きを一気に失いますが、勝った方は相手の輝きまで根こそぎ奪ってさらに大きな星になれるのです。


【A NATURAL RIVARY〜 CANERO ALVAREZ AND JULIO CESAR CHAVEZ JR. WERE DESTINED TO FIGHT ONE ANOTHER FROM THE BEGINNING〜 リング誌5月号】

さて、カネロとチャベスです。カネロが最初にチャベス戦を公言したのは2009年8月、今から8年も前の夏のことです。WBCウエルター級のユース王座決定戦でマラト・クゼエフを2ラウンドKOで屠った勝利インタビューでした。熱狂的なファンが詰めかけた超満員のリングで、前月に18歳になったばかりの少年は、メキシコ最大のスーパースターの血を受け継ぐチャベスJr.との対戦を強烈にアピールしたのです。

「チャベスと戦う準備は出来た。チャベスの階級(当時154ポンド=ジュニアミドル級)でやってやる。私より強いという人もいるようだから彼をテストしてやるよ」。

二人の立場は、いつでも非常によく似たものでした。ボクシング熱が最も高い国で、狂信的なファンを持つスーパースター候補である一方で「カネロは温室栽培のアイドル」、「ジュニアは過保護な親の七光り」という批判も常に付いて回っていました。そして二人ともに「もし勝っていたら世界中のボクシングファンが認める」という大試合(ジュニアはセルヒオ・マルチネス、カネロはフロイド・メイウエザー戦)を落としてしまいます。

また、時期は微妙にずれるものの、ゲンナディ・ゴロフキンとの対戦交渉を進めながら頓挫、二人ともファンからは「ゴロフキンから逃げた」と非難されました。

ゴロフキンとの交渉がもつれる以外はカネロはスーパースターの道を驀進します。マルチネスに勝ったミゲール・コットとの人気スター対決を制して2階級制覇。この時奪ったWBCのベルトは返上しましたが、今なおリング誌公認の世界ミドル級王者です。「カネロ級(155ポンドのキャッチウエイト)」と揶揄されながら、一度もミドル級の正規リミットで戦うことなく、ベスト体重と思われるジュニアミドルに戻りましたが、この階級では強豪をことごとくうち破り、マネー引退の今、文句無しの最強です。

片やジュニアはマルチネスに敗れたあたりから迷走します。薬物検査で大麻の陽性反応が出て9ヶ月の出場停止処分を食らったり、試合に向けて体重管理が出来ない怠慢も重なります。挙げ句の果てには約1年のブランクを作って臨んだアンドリュー・フォンフォラ戦ではキャリア初のダウンを奪われる劣勢の中、最後は試合を投げてしまいます。その後も、だらしない体重管理は改められず、二線級の相手と塩気の多い試合をこなしてきました。

英国ウィリアムヒルのオッズはカネロ勝利は1.15倍、ジュニアは5.5倍と開いています。体格差は大きいものの、ここ数年の二人の充実度は対照的で、それが反映された数字です。

カネロ有利は否めませんが、試合は簡単には終わりそうにありません。