パウンドフォーパウンド。

階級制のボクシング競技で「階級を無視して一番優れたボクサーは誰か」という、妄想ランキングです。

著名な歴史家や解説者、ESPNや英国BBCの見解ですら妄想です。

PFPはアメリカで最もボクシングのステイタスが高かった1950年代、とはいえその注目度がヘビー級に偏重していた時代に、ボクシングの歴史を革新する技術を披露した偉大なシュガー・レイ・ロビンソンこそが「歴史・階級を超えて最高のボクサー」とする「脳内の評価基準」です。

それは「ロビンソンありき」の物差しですから、特に米国メディアでは非常に保守的です。

ところが、保守的なメディアもいい加減です、保守的だから実はいい加減なんでしょうけど。

まずロビンソン1位が起点、大前提。それは、わかります、譲ります。譲るしかありません。

私たちにとっての長嶋茂雄や王貞治なのでしょうから。良い意味での不可触領域です。

ロビンソンに続く2位以下のランキングでは、8階級時代(当時もJrウエルター級などがありましたが無視していい存在)に3階級制覇したヘンリー・アームストロング、誰が考えても1位でも文句無しのアリがいますが、私がこのスポーツにのめり込んだきっかけになったロベルト・デュランがリング誌の歴代評価に食い込んでいることを知った時は歓喜しました。

私は当時、中学生。超ど田舎の学校図書室なのに、何とリング誌が毎月届けられていました。

美しい写真が満載で、ラウンドガールのページには水着姿の金髪美女が並んでいるのに、ボクシングの専門誌という先入観からか、誰も興味がなかったのか、私しか読んでいなかったようで、新品の外国雑誌の独特のインクと紙の匂いを嗅ぐ独占的な快感にありつけました。

貧弱で幼稚な英語力で立ち向かったリング誌から立ち上ったのは、レナード、ハグラー、ハーンズ、デュランという、超の付くスーパースターが惜しみなく総当たりの激突を見せてくる一大オペラでした。

実際の試合から1ヶ月以上遅れた記事を読んでたわけで、しかも太平洋を越えたスポーツの試合。

時間も距離も、すごいラグがあるのに、老舗のボクシング雑誌から立ち上る凄まじい熱気に、小さな図書室で毎月立ちくらみしていました。

この偉大な4人が激闘がラウンドロビン(総当たりの激闘)を繰り広げた結果、その序列の筆頭は、事実上最強のハグラーでもなく、瞬間最大風速で最強のハーンズでもなく、最も華やかなレナードでもありませんでした。

デュランなんです。4人の中で最も下のライト級王者から無敗のレナードを破ってウエルター級王者をもぎ取ったのが、この史上最高の総当たりで勝った唯一の白星。それでもデュランが一番と言われ、ファンも異論はなかったんですが…。

【もう60歳】

ところが、昨年、アリが天国に召されてから「アリ亡き今、生きてるボクサーで誰が最高か」というPFPをリング誌が企画「よくよく考えたらレナードだよね」という結果になってしまいました。

デュランは2位降格。

えーー?あの総当たり戦の結果だけで裁定したら、そりゃレナードだけど、だったらこの30年間は何だったの?って話です。

でもPFPってそういうものです。真剣に考えたらダメなんです。

権威ぶってるリング誌でも笑っちゃうくらいにグラグラですから。

真実が証明されるのはリングの上だけです。

新聞紙の上でも、ネットの画面でもありません。リングの上だけです。その場所以外で、どんなに偉い人が何を語ろうが、それは全てが絶対的な虚構です。

真実ではありません。

脳内で考えるPFPや試合予想は、往々にして硬直した保守に凝り固まった見方に偏向するものです。

「アリをリングに上げてはいけない。殺される。フォアマンはアリやフレージャーとは全く別次元のボクサーだ」

「ダグラス?ホリフィールド戦の前哨、アジアへの顔見せとはいえタイソンはあまりにも安易な相手を選びすぎだ」

「パッキャオがデラホーヤに殺される。二人が並んだ会見を見ろ、この試合はミスマッチじゃない、犯罪だ」


。。。真実は現実のリングの上だけにしかありません。そこが全てです。

個人的には妄想や予想は大好きなんですが。