昭和が終わっても〝昭和〟はある。

それは、なにも日本に限ったことではない。

前方後円墳に廃線、昭和だから許された(許されてない?)アドベンチャラスなことは、まだまだあるのだ。

21世紀になったばかりの頃。社会人の私は60日程度、アルジェリアのアルジェに出張したことがありました。

現地のアシスタント(流暢な日本語を操る…という触れ込みでしたが実際は何度も聞き直さなければ何を言ってるのかわからない男)とは、仕事以外にもいろいろ世間話もしました。

そのアシスタント、デービースが日本の料理を紹介する図鑑を持ってきて「これ、いっぱい生えまくってる」と土瓶蒸しのページに載ってる松茸を指さすのです。

「いやいや、あんな繊細なもんアルジェに生えてるわけがない」と笑い飛ばす私にデービースは「今度連れて行くから松茸かどうか見てくれ」と言うのです。

アルジェリア…いい国です、素晴らしい国ですが〝流暢な日本語を操るデービース〟のようにちょっと信じられない国で、当時はアルカイダ系の組織がテロを起こして治安は決して良くありませんでした。

デービーは「(ナイジェリアの)ラゴスよりも100倍治安が良い」と言いますが、ラゴスと比べてと言う時点で、もはや治安を語る資格はありません。

あるときなど、デービースが「安全保障付き」という店で夕食をとって、すべての窓に頑丈な鉄格子が嵌め込まれた、アルジェの怖さをそれだけで教えてくれる借り上げ社宅に戻ると、ニュースでさっきの店が爆破されたと報道されていたのです。

「おまえ!これさっきのとこやないか!どこが安全保障付きやねん!2時間遅れてたら死んでるやないか!」と、私が絶叫すると、デービーは「あなたはラッキー、神のご加護がある。あの店が爆破されたのはこれが初めてだから、安全だった」と訳のわからないことを言うのでした。

「過去形の安全保障って…」。呆然とする私は、どうせ「いっぱい生えまくってる」という松茸も、松茸にちょっとだけ似てる毒キノコやろと確信しましたが、日本から遠く離れたアルジェの週末に行くところもなくデービーの荒っぽい運転のトヨタハイエースの助手席に乗って松茸山に行くのでした。

「早く、日本に帰りたい」。

そんなこと思うことなんて滅多にない私ですが、さっき飯食った店が爆破されたニュースを見ている時は「早く日本に帰りたい」「早く日本に生きて帰りたい」と、サイボーグ009の002のように生まれて初めて神に祈るのでした。



21世紀になってもアルジェリアは〝昭和〟のままなのである…。




ーーーーー前方後円墳に廃線、そしてアルジェ郊外の松茸山。これもここからは妄想ですよ。