風は追い風。

英国シェフィールドで生まれ、育ち、いまもそこを拠点とするダルトン・スミスにとって、ブレンダン・イングルとナジーム・ハメドは特別な存在だった。

英国最高のトレーナー、イングルの薫陶を受けたハメドはニューヨークへ乗り込み、旋風を巻き起こしたグレートだ。

その2人の映画「GIANTS」が封切りを待つタイミングで、スミスはニューヨークでWBCジュニアウエルター級王者サブリエル・マティアスに挑戦する。

そして、英国にとってジュニアウエルター級は最近ならアミール・カーンやジョシュ・テイラーを輩出した、思い入れの強い階級。

英国ボクシング史上で最も人気のあったファイターの1人、リッキー・ハットンも、このテン・ストーン級のスーパースターだった。そのハットンが昨年、天国に召された。



There’s only one Ricky Hatton


「英国でも米国でも大きなファンベースを持っていたハットンは、いつも私の憧れだった。リッキー・ハットンこそ唯一無二のヒーローだったんだ」。

ハットンの跡を継ぐ。それはダルトン・スミスの目標であり、英国ボクシングファンの願いでもあった。

オッズは王者が8/13(1.62倍)、スミスは13/10(2.3倍)。

「アンダードッグは気にしない。ハットンは何度も番狂せを起こした。コンスタンチン・チューに挑戦した時は、みんな自殺行為と言ってたじゃないか」。

ニューヨーク行きの飛行機が直前でキャンセル、トレーナーの父グラントとは別々の便で移動する、ちょっとしたトラブルにも見舞われた。

「全く問題なかった。父親が先乗りした翌日に私も合流できた」。

プエルトリカンが大きなコミュニティを形成しているニューヨークは完全敵地だが、スミスは意に介さない。

「マティアスはプエルトリコでIBFタイトルをリーアム・パロに奪われてるじゃないか。ホームアドバンテージは気にしないよ。私のファンも数百人がバークレイズセンターに来てくれる、心強いよ」。

フロイド・メイウェザーとマニー・パッキャオとラスベガスで戦ったハットンは4000人以上のサポーターを引き連れた。スミスはその道のスタートラインに立っている。

風は追い風。



ダルトン・スミスの入場曲はArctic Monkeys の When the Sun Goes Down。シブい選曲です。


オープニングラウンド。様子見の王者はジリジリとプレッシャーをかけるが、手数は少ない。スミスはコーナーとロープには詰まらず、手数でリング中央へ押し戻す。スミスの右フックが力強い。10−9、明白に挑戦者。

第2ラウンド、激しい打撃戦へ。これは強打の王者が得意の展開。10−9でマティアス。

第3ラウンドもスミスは打撃戦の応じる。スミスの右が有効だが、どちらが倒れてもおかしくない。10−9でマティアス。

第4ラウンド。互角の打撃戦。挑戦者の右目から出血。10−9でマティアス。

そして第5ラウンドスミスの右がクリーンヒット、マティアスがぐらついたところに右の追い打ち。王者がカンバスに転がり大の字に。

なんとか立ち上がったマティアスでしたが、足元はおぼつかない。それを見た主審のリッキー・ゴンサレスが試合を止めました。

「アンダードッグにされたのはキャリア初めて、モンスターと戦ったのもキャリア初めてだ。タフな相手だった」。

"I didn't really stick to the tactics tonight. I played him at his own game. You can't hurt me and I knew I'd get to him."

マティアス相手に打撃に応じたのは作戦か?と聞かれて「作戦通りじゃない。相手の土俵で戦ったんだ。彼は俺を倒せない、でも俺は奴を倒せると思ったから」。

ヘビー級のファビオ・ウォードリー(WBO)、ウエルター級のルイス・クロッカー(IBF)、ジュニアライト級のジャザ・ディケンズ(WBA)に続く、英国5人目のタイトルホルダー誕生です。

このクラスのフロントランナーは人気者テオフィモ・ロペス(リング誌/WBO)。1月31日にマディソン・スクエア・ガーデンにシャクール・スティーブンソンを迎えて4度目の防衛戦を行います。

オッズは王者テオフィモが9/4(3.25倍)、シャクール1/3(1.33倍)と明白に挑戦者有利と見られていますが、テオフィモが勝ってスミスとの統一戦となると英国でもメガファイトになりそうです。

そして、このクラスにはアンディ平岡も腕を撫しています。

人気階級、テオフィモ・ロペス、ダルトン・スミスーーー日本に引っ張り込むのは非常に難しい相手ですがミューヨークやロンドンの大会場、最高の舞台が待っています。

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