【番組概要】日本プロレス界最大の祭典 新日本プロレス1.4東京ドーム大会を22年ぶり全国ネット放送!
“100年に一人の逸材”棚橋弘至の引退試合…そして”五輪柔道金メダリスト”ウルフアロンのプロレスデビュー戦! 熱い闘いの模様を豪華ゲストと共にお伝えします!


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この30年。プロレスは大きく揺れました。

それまで、日本のプロレスのメインストリームはアントニオ猪木のストロングスタイルでした。

力道山の試合をNHKが放送しなくなってから、幾星霜。「プロレスが〝八百長〟である」ことは常識になりましたが、それでもプロレスファンは「プロレスラーは本当は強いんです!」(桜庭和志)と信じていました。

いや、信じているふりをするしかなかったというのが正確かもしれません。

事実は、真剣勝負の世界で、前田日明のようなガチ童貞のプロレスラーが強いわけがない、のです。

真剣勝負の舞台で惨敗を続け、挙句に真剣勝負の舞台から逃亡。プロレス市場は低迷します。

とはいえ「実はプロレスラーは弱いんです」「UFCとは違うショー、演劇の世界なんです」とはいえません。



「プロレスラーは本当は強いんです!」を信じるしかない、そこが拠り所のファンにとっては尚更です。

ただ、猪木に魅せられたファンをつなぎとめるだけではプロレスの未来はない、そんな状況に追い込まれていました。

「ストロングスタイルからの脱却」。つまりは「アントニオ猪木を否定すること」。

そんなことが出来るとしたら、新日本プロレス以外の団体からしか考えられませんでしたが…まさかまさかの棚橋弘至でした。

「ストロングスタイルからの脱却」「アントニオ猪木を否定」。口には出さずとも、従来の新日ファンは「こんなものを見にきたんじゃない!」と激しいブーイングを浴びせました。

しかし、猪木が見せたのと同じ「何度倒されても声援を受けて立ち上がる男たちの姿」は、ストロングスタイルには共鳴しなかった女子だけでなく、新しい男性ファンまで開拓、全く新しいベクトルでプロレスは復活、大きなマーケットを形成しています。

ド派手な衣装に、明るく軽いパフォーマンスの旗振り役となった棚橋は「猪木さんの『元気』を僕風にアレンジするとこうなるんです」とカラリと笑いました。

棚橋弘至がスキップで駆け抜けた26年。それは、表面的には「ストロングスタイルからの脱却」「アントニオ猪木を否定」であっても、その真奥に流れていたのは「猪木イズムを守り抜いた年月でもあった」(朝日新聞)のです。

もう、これぞプロレスです。



棚橋弘至。

個人的にはそこまで好きではない時期がありましたが、プロレスファンの友人からイチから教えられ、生のリングを見せてもらって、彼が猪木を〝殺した〟のではなく、彼が〝猪木の生まれ変わり〟であることを確信しました。

そうです、日本には〝猪木〟が2人いた時間があったのです。

フェイクとギミックがグラグラ煮詰められた最高のご馳走です。



さて、フェイクとギミック。この最高級の調味料を使って、フェイクとギミックとは対極にあったリアルの至高である五輪で金メダリストを獲った男がどんな料理を作るのか?

ウルフアロンが口先ならとんでもない役者であることは、ここ数年で完全証明されました。口先はプロレスラーにとって、リングの外で最も重要な技術です。



もう証明する技術はリングの中にしかありません。