「ボクシングの威厳を守った」。

そんな表現もされた井上拓真の那須川天心に対する勝利。

天心が単なる異業種からの乗り込んで来たというだけでなく、その言動を快く思わないボクシングファンも多かったということでしょう。

異分子ではなかったものの、自分たちの嗜好に全く合わなかった亀田一家へのアレルギー反応も常軌を逸していました。

ボクシングファンが発症した天心と亀田の拒絶反応の種類は違いますが、その根底にあるのは「ボクシングは権威がある」から、それを汚すな、よそ者は入ってくるなという意識でしょう。

この激しい拒絶反応が、当の対戦相手にはほとんどないことは非常に面白いことです。

悩める井上拓真は「那須川天心に勝つ」ということへのモチベーションが、世界タイトルよりも大きかったと何度も口にしてきました。

内藤大助は「(亀田興毅と戦っていなければ)ずっとガソリンスタンドでバイトしてたかもしれない。少なくとも、こんなふう(いろんなテレビ番組に呼んでもらえる人気タレント)にはなっていない」と、むしろ感謝の気持ちを吐露しました。

私の予想は天心の勝利で、拓真の方に大きな重圧がかかる、拓真のコーナーは決して優れていないという考えからでした。

現実に、拓真には大きな重圧がかかっていたと思いますが、彼はそれを跳ね返しました。また「家族の絆」以上のものはないコーナーは、家族の絆、それこそが強烈な強みでした。

27歳の天心にはこれからも認定団体が優遇、何度もチャンスが与えられるでしょう。

天心に関しては、短い時間でよくここまで来たなという思いもありますが、ここから厳しい勝負が始まると思います。

解説人が言っていたように「天心はこれから世界王者にもなれる」というのは、4Belt Eraのアルファベット・タイトルの一つは転がってくるという意味です。

強い相手に勝ってPFPが取り沙汰されるファイターになれる、そんな意味ではありません。



TAKUMA INOUE OUTFOXES TENSHIN NASUKAWA IN POINTS WIN, SEALS WBC 118-POUND TITLE(リング誌)


Takuma Inoue outclasses Tenshin Nasukawa to claim WBC 118lbs gold.(ボクシングシーン)



「天心が勝った方がボクシング界は盛り上がる」。それは事実だったでしょうが、この結果でも盛り上がるはずです。

この試合はセットされた時点で、どう転んでもボクシング界の勝利が約束されていました。

2人にとって、次戦が大切になるのは当然です。そして、それは天心にとってより切実。拓真も、これからのキャリアで天心を上回る動機づけが出来るかどうか、難しいテーマを抱えてしまいました。

まあ、見ているファンはそれはそれで楽しみが増えるのですが。