「世界タイトルマッチの日本人対決」。ファンの興味には二つのパターンがあります。

一つは完全にAとBの役回りが決まっている試合で、このパターンがほとんどです。

寺地拳四朗と矢吹正道の初戦のような番狂せは、きわめて稀で、多くのケースでAサイドが完勝してきました。

もう一つは 50:50の互角の勝負。

今回の「天心vs拓真」はイベントを仕切るのが天心所属の帝拳プロモーションとはいえ、大橋ジムとの関係は〝グループ企業〟といっても良い関係。

天心側のオファーを拓真が二つ返事で承諾した構図ですが、どちらがAサイドか?という線引きは全く見えません。

海外ブッカーのオッズこそ天心有利と見立ててますが、勝敗は結果論、戦前の現時点では五分五分の戦いになるという予想が多数派でしょう。

このマッチアップ、ジャッジ泣かせのラウンドが多くなると見る向きもあるかもしれません。しかし、微妙なラウンドの多くが天心に流れるようなことはないはずです。

わずかプロ7戦、ちょうど50ラウンドを戦ってきた天心ですが、これまで採点が議論を呼んだことはありません。


50:50の勝負。とはいえ、2人はパンチャーやディフェンスマスターのような分かりやすいスタイルを持っていません。

厳しい言い方をすると特徴がない、決定力がない、アピールポイントがない。

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たとえば⬆︎「1ラウンドあたり平均何発のジャブを放ったか」のランキング(CompuBoxから)。

1位が寺地拳四朗、3位に中谷潤人ら、リードブローが多いボクサーの名前がずらり。

拳四朗と中谷ではリードに持たせる意味が全く違いますが、彼らのボクシングがリードのボリュームで対戦相手を弱体化させていくスタイルであることがハッキリ浮かび上がってきます。

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こちら⬆︎は「対戦相手のパンチ的中率が低い」ランキング。

ドミトリー・ビボルやシャクール・スティーブンソン、エリスランディ・ララ、デビン・ヘイニー…〝なるほど〟なディフェンダーが並んでいますが、9位に驚異のアタッカー井上尚弥の名前も。

井上尚の場合はディフェンスが優れているというよりも、対戦相手がその攻撃力を恐れて手数が出せない、マイク・タイソン現象が引き起こされていると捉えるのが自然です。この数字をそう考えると、相手を怯懦させるモンスターのスタイルが明瞭になります。


しかし…天心と拓真は、悪く言うと攻撃力も防御力も世界トップクラスからは大きく引き離されたボクサーです。

良く言うと「2人の強さは数字では測れない」ですが、それは過大評価。発展途上の天心はともかく、拓真に技術的な伸び代、モデルチェンジの柔軟性はほとんどありません。

そう、来月には30歳になる拓真は技術的、スタイル的に完全に飽和したボクサーです。

…そう、技術的には。


ただ、精神的には〝何か〟に触発されることがあれば、劇的な化学反応を起こすかもしれません。

本人が「世界タイトルよりも天心に勝つこと」と再三、口にしているように、天心が彼を触発する〝何か〟になるのか?

この2人が、実はファンが狂喜乱舞する〝混ぜるな危険〟の化学物質だった、なんてことがあるのか?

それとも、不発弾はいつまでも不発弾のままなのか?

全ては11月24日、あと5日後に明らかになります。