試合前のオッズは田中恒成の勝利が1/10(1.1倍)、プメレレ・カフが13/2(7.5倍)。


ストロー級からジュニアバンタム級まで4階級でアルファベットのタイトルをピックアップした恒成はビック・サルダール、モイセス・フエンテス、アンヘル・アコスタ、田口良一、ジョナサン・ゴンサレスと、アルファベット団体のエセ世界ランカーではなく、ESPNやリング誌が認める世界ランカーに勝利、その実力の輪郭がはっきりしたファイターです。

一方のカフの戦績は、プロ13戦10勝8KO3引き分けと無敗ながら、13試合はいずれも世界的には無名の選手を相手に地元南アフリカで積み重ねてきたもの。「世界最速」の恒成のスピードについていけないと見られていました。

結果はご存知の通り。

カフは恒成からダウンを奪って、後半の追い上げも振り切ってSDの勝利を収めました。26歳(30歳説も有力)の南アフリカ人が未知の強豪から、その渾名のとおりThe Truth(本物)であることを証明した試合になりました。

IMG_2664

このカフの次戦が3月半ばを目処に交渉が進められてします。交渉の相手は、なんとローマン・ゴンサレス。

「田中恒成に勝って、私は自分が世界のベストファイターであることを示した。私が、数々の伝説を作ってきたチョコラティトと戦うことに誰も違和感をおぼえないはずだ」。

南アフリカ東ケープ州のダンカン村はアパルトヘイト時代の旧黒人居住区、治安は劇的に改善されたと言われていますが、外国人旅行者が歩ける街ではありません。

特に、The Hood と呼ばれるエリアは暴力と犯罪の巣窟。


カフはここで育ちました。WBAフェザー級王者シンピウィ・ベトイェカも、このダンカン村の出身です。

Cafu seemingly had a one-way ticket to joining him in prison.

父親は酒びたり、カフはストリートで悪事に手を染め、刑務所へ一直線の人生に見えました。

「争いごとばかりだった。人を刺したこともある、刺されたこともある。それがThe Hood で生活するってことなんだ」。

それでも、母親は優しく、カフが飢えるようなことはありませんでした。父親も酔っ払って暴力を振るうようなことはなく、人生に絶望しているようでしたが、やはりカフには優しく接してくれました。

元ボクサーだった父親が地元のボクシングジムにカフを連れて行ったのは、なんと3歳のとき。

カフがThe Hood の深い闇に真っ直ぐ落ちなかったのは、夢と希望があったからでした。夢と希望、もっと具体的にいうなら、それはボクシングです。

「父親に連れられてボクシングジムに通うのは本当に楽しかった。いろんな技術を覚えて、成長している実感があった。この道を進めば、ずっと先に明るい未来があると信じることができたんだ」。

「もし、ボクシングが無くて、The Hoodで暮らしていたなら、そんなことは思いもしなかっただろう」。

「ストリートでは喧嘩に明け暮れるしかなかったけど、私にはボクシングがあった。すぐに刑務所に行く、長生きできないなんて言われたけど、私はこの町から脱出する方法を知っていた」。

カフは2018年5月26日にプロデビュー。19歳のときでした。

地域タイトルをコレクションしながら、主要団体のタイトルを窺う南アフリカ人にWBO王者の田中恒成からオファーが届くと、二つ返事で請け負いました。

「当時の私はWBO6位、田中は私を勝てる相手だと選んだ。それが間違いだった」。

ほとんど互角の攻防は、5ラウンドにダウンを奪ったカフと、最終12ラウンドにカフをダウン寸前に追い込んだものの倒せなかった恒成。その差が114−113*2/113−114のスプリットでカフに勝利をもたらしました。

26歳のカフにとってキャリア初の海外遠征、そして世界基準の相手との激突。まだまだ伸び代のある南アのThe Truthがチョコラティトまで飲み込んだとしても大きな驚きはありません。

「私が田中に勝てるなんて誰も思っていなかった。それでも第1ラウンドで、どうしようもない壁ではないとわかった」。

I want show kids anything is possible.  If I can do it, They aiso can.

「The Hood で絶望に鬱屈している子どもたちに、不可能なんてないと教えてあげたい。ほら、私ができたんだから君にも出来るさってね」。




*******

カフvsチョコラティト。

37歳になるニカラグアの伝説にまだ何か残されているのか?

恒成との試合から大きな自信と経験を上乗せしてリングに上がるカフですが、チョコラティトがある程度仕上げてくるならボディを中心とした美しいコンビネーションでカフが削られていくと予想します。

やはり、ロマゴンに思い入れしてしまいます。