プロボクシングには看板となるスター選手が常に存在してきました。

彼らはボクシング人気が下落、スポーツとしてのステイタスが地に堕ちても、クローズド・サーキットやPPVという独特の集金システムによって巨額のファイトマネーを獲得、Forbes誌などのアスリート長者番付の上位、ときにはトップに立つことも珍しくありませんでした。

1980年代初めに、私が米国ボクシングの面白さに取り憑かれてから40年余り。その間のスターを列記すると、シュガー・レイ・レナード、マイク・タイソン、オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ、カネロ・アルバレス…。

彼らは同時代を共有しながら、新旧交代の形でスターのトーチをリレーしてきました。

直近ならカネロはメイウェザーやパッキャオが現役の時期に、すでに後継者としての資質を世界に知らしめていました。

そして。

レナードにはマービン・ハグラーやトーマス・ハーンズ、ロベルト・デュラン。

タイソンにはイベンダー・ホリフィールドとレノックス・ルイス。

デラホーヤにはフェリックス・トリニダード。

メイウェザーにはリッキー・ハットンやミゲール・コット、デラホーヤ、そしてパッキャオ。

パッキャオにはマルコ・アントニオ・バレラ、エリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケス、ハットン、コット、デラホーヤ。

主人公の周りには、常に強力なライバルたちが存在し、ボクシング市場を活性化させていました。

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さて、現在のカネロを査定してみましょう。

メキシコの時代に人気階級を席巻、スポーツ史上最高金額の契約金を結ぶなど、マネーの点では過去のスターと比べても遜色ありません。

ボクシングのステイタスが落ち込んでいることから、一般的なスポーツファンの認知度がほとんど無いのは仕方がありません。

「強力なライバル」という点では、ボクシングファンであってもすぐに誰かを思い浮かべるのは難しいかもしれません。

印象的な勝利を探しても、やはりすぐには思い出せません。

カネロのサポーターは「ゲンナジー・ゴロフキンがいるじゃないか!」とご立腹するかもしれません。

しかし、ミドル級に上げてすぐにGGGとの決戦に挑んだのならまだしも、155ポンドというジュニアミドル級に1ポンド足しただけのキャッチウェイトで勝てる相手を選びながら、GGGの衰えを待っていたのは世界中のボクシングファンの笑い者でした。

また「微妙なラウンドは全てカネロに流れる」という不思議な判定も、ボクシングファンを興醒めさせてしまいました。

ドーピングも含めてカネロがお騒がせのスターであることは間違いありません。

しかし、このお話の中で問題とするのは、スターの系譜、ポスト・カネロです。

前述したように、旧スターと新スターは時代を共有しています。

カネロは今年7月で35歳になりますが、トーチを渡すべき次のスターはどこを見渡しても影も形もありません。

ライアン・ガルシア?ガーボンタ・デービス?ジャロン・エニス?

冗談はやめましょう。

カネロが引退、あるいは実力的に完全な黄昏れどきを迎えて人気も下降、そんな未来はすぐそこに迫っています。


今から救世主が突然、現れるのか?

それとも、カネロ引退でスター不在の暗黒時代に突入するのか?