テレンス・クロフォードの歴史的評価をどう下すべきなのか?

オリジナル8の時代ならタイトルを獲れなかった、いや世界ランカーにも数えられなかったボクサーがタイトルにありつけるばかりか複数階級にわたってベルトをコレクションできるのが4-Belt eraです。

また、ボクサーがリングに上がる回数はどんどん減少する傾向にあり、クロフォードも2020年からの5年間は年1回だけ。

4団体17階級時代とは、世界王者が8人しかいなかった時代から68人に増えただ毛ではありません。

各団体の世界ランクは対立王者の3人を間引いただけでなく、自らの団体の地域タイトル王者(認定料をコツコツ支払って団体に〝貸し〟があるボクサー)を優遇、どの階級を見ても全く同じランキングになっていることはあり得ません。

それどころか世界ランカー10人のリストも大きな齟齬を抱えている有様です。

このデタラメランキングから世界王者が生まれ、このデタラメランキングから挑戦者が選ばれ、そしてレギュラーやスーパー、上位タイトルまで粗製濫造されているのが4-Belt eraなのです。

クロフォード初登場

クロフォードがリング誌PFPに初めて登場したのは2015年7月。一時期ランクアウトした短い時期があったものの9年以上累計483週間にわたってPFPファイターであり続けています…が、この妄想ランキングに大きな意味はありません。

確かに、クロフォードは3階級にわたって18度の〝世界戦(というかアルファベット団体のタイトルマッチ)〟に全勝、15試合をジャッジの手を煩わせずに終わらせ、9つのベルトを手に入れました。

ウエルター級の歴史に名前を刻むグレート、ヘンリー・アームストロングやシュガー・レイ・ロビンソンは一つしかベルトをもらえませんでした。シュガー・レイ・レナードでも2つだけ。

クロフォードはウエルター級でアームストロングとロビンソンの4倍、レナードの2倍のベルトを集めたのです。

彼らを圧倒する数のベルトを集めたというのに、史上唯一の4団体統一ウエルター級王者クロフォードはその〝偉業〟に相応しい評価や人気を得ることができていません。

それどころか、専門家やファンに「あいつの集めたベルトはガラクタ」とまで言われる始末です。

ここで立ち止まって考えるべきは、4-Belt eraというボクシングどん底時代に生まれてしまったことに、クロフォードの責任は一片もないということです。

どん底(これが底ではなく、まだまだボクシングは底抜けに没落していますが)では、かつてメジャーだった頃のボクサーと同等の人気を博すのは不可能です。

また、年1試合しかできないのはプロモーターの責任。

フロイド・メイウエザーとマニー・パッキャオの時代とニアミスで終わってしまい、対戦相手の質はもちろん注目度という点でも「誰に勝ったのか」では40戦(全勝31KO)のキャリアでエロール・スペンスJr.との1試合だけという悲劇。

これでは人気も評価も付いてこないのは当然といえば、当然です。

しかし、それもクロフォードに責任を求めるのは酷過ぎます。

あと数時間後に試合開始ゴングが打ち鳴らされるWBAジュニアミドル級王者イスライル・マドリモフに勝利することはどの程度の評価の上積みになるのでしょうか?

ライト級タイトルを奪った劣化版(全盛期は強豪王者と呼ぶ人もいたかもしれません、〝かも〟です)のWBO王者リッキー・バーンズや、Undisputed championになったジュニアウエルター級のWBO王者トーマス・ダルモアやWBO王者ビクトル・ポストル、WBA /IBF王者ジュリアス・インドンゴ、やはり完全統一したウエルター級のWBO王者ジェフ・ホーン…4-Belt eraではどこにでも転がっているアルファベット王者たちです。

クロフォードに負けたとして、マドリモフがこのあと華々しい復活を遂げて「クロフォードはこんなに強いマドリモフに勝ったのか!」と改めてその強さを賞賛する日が来るでしょうか?

それとも「クロフォードが勝った相手はそのベルトと同じガラクタばかり」と〝念押し〟される、これまで通りの結果になるのでしょうか。

「あと何試合も戦わない」と公言するクロフォードですが、マドリモフに勝てば全てをひっくり返す相手が用意される可能性が膨らんでします。

今日の試合で初めて米国進出を果たした「リヤド・シーズン」。

サウジ娯楽庁長官トルキ・アル=シャイフは、これまで再三オファーしても首を縦に振ってくれないカネロ・アルバレスについて「簡単な相手ではないが、交渉が頓挫したわけではない。つまり、あとはカネだけの問題。それは、我々にとって一番簡単な問題だ」と、米国市場最大のスターを引っ張り込めると確信しています。

メインイベントの時間が近づいています。

アンダーカードで、年内にもデオンティ・ワイルダーとのパンチャー対決が期待されていたジャレッド・アンダーソンがコンゴの怪人マーティン・バコーレにまさかのTKO負け。

バコーレ、良い名前です。しかも空気を読まないファイター、大好きです。

メインでも波乱はあるか?