野茂を否定したことで、というよりも正確にいうと「否定した野茂が日本球界の頑迷な常識を打ち砕いてしまったがために」稀代の悪役、最低の指導者の烙印を押されてしまった鈴木啓示。

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「史上初 10登板 20本塁打 10盗塁 達成」を歴史的な大快挙と大騒ぎしていたあの頃…ものすごく可愛く思えます。あのときですら、私たちは大谷翔平を愚かなまでに過小評価していたのです。…そして、それはおそらく今ですら。



しかし、もし。

鈴木啓示の前に野茂英雄ではなく〝大谷翔平〟が現れていたなら?

もちろん、鈴木啓示は二刀流を否定していたでしょう。

「そんなもん、無理に決まってるやろが。ユニコーンなんて実在せぇへんねんから」と。


しかし、それをもって批判される程度は、野茂のケースよりも軽微で済んだ気もします。


鈴木啓示にとって野茂英雄は、最悪のジョーカーでした。

あの時代に野茂の練習を違和感なく受け止められる監督やコーチは少数派でした。

鈴木啓示は間違っていなかった。

私は、そう思います。

もし、どうしても鈴木啓示が間違っていたと言うのなら、それは「日本人が大リーグに通用するわけないやろが」と、吐いてしまった本音だけです。

「野茂とは練習方法や起用法でぶつかってしまったが、大リーグ挑戦については、日本であれだけの実績を残したんやから、活躍できると信じてる」とエールを送っていたら…。

広岡達朗らが声を揃えて連呼していた「日本人が大リーグで通用するわけがない」。

それは畢竟、自分たちが全身全霊を捧げて打ち込んできた日本の野球を根底から否定することだと、どうして気づけなかったのでしょう?

メジャーに上がれない、あるいはメジャーで通用しなかったポンコツ外国人にアホみたいに大活躍されるのを目撃し続けた彼らにとって、メジャーは怪物ランド、鬼ヶ島に見えたのでしょう。

野茂と鈴木が衝突した時代は、NPBとMLBには交流すら許されない大きな格差があると信じられていました。

極めてレアですが、NPBに落ちてきた外国人選手がメジャーに戻って活躍することはありましたが、それはそもそもが外国人だからと考えられました。

つまり「日本人だからダメ」という考えです。

あれから30年が経ち、野茂が蒔いた種子は野茂ですら想像もしなかったであろう、とんでもない花まで咲かせてしまいました。



信じることです。

当たり前ですが、疑わしいことばかりが溢れている世の中で、信じることは疑うことより遥かに難しい、のですが。