5年前、2019年のThe Ring magazine 2月号。
日本経済新聞などでも「日本人ボクサーが史上初の単独カバー」と紹介された、日の丸を背景にした井上尚弥を表紙に起用した一冊です。

かつての半分以下の64ページまで痩せ細ったにも関わらず、MMAコーナー「ENTER THE OCTAGON」が連載化されるなど、近い将来に雑誌タイトルが「The Ring & Octagon」(順番が逆転して「The Octagon & Ring」?)となるか、廃刊になるかの二つに一つと噂されていた時期でした。
表紙は「井上尚弥」。Fighter Of The Month(月間最高選手賞)は「村田諒太」を大番狂せで下したロブ・ブラント。Best I Faced(私が対決したキャリア最高の相手)は「ファイティング原田」。

PFPランキングは1位がワシル・ロマチェンコ。超軽量級からは6位の井上をはじめ、8位にシーサケット・ソールンビサイ、10位に井岡一翔に勝利したドニー・ニエテス。
トーマス・ハウザーの連載「JAB AND STRAIGHT WRITES」をご紹介。
*****現代のプロボクサーほど過去との比較に晒されているアスリートは、他のスポーツでは全く見当たらない。
マイク・トラウトは「ミッキー・マントルの領域には達していない」と批判されることはない。他のスポーツではそれが当たり前だ。
ところが、最近のボクサーは有名になればなるほど、過去のグレートと比較され「誰々と戦っていたならKO負け」と決めつけられてしまう。
ボクシングファンは懐古的で、ロマンティックな生き物なのだ。
ベニー・レナードは強かったか? 彼の時代なら文句なし、間違いなく強かった。しかし、100年の歴史を超えて全盛期のレナードとロマチェンコを戦わせるなら、私は迷わずロマチェンコに賭ける。
「レナードよりもロマチェンコが上」という話ではなく、時代とともに技術も進化するということだ。
ロマチェンコ、テレンス・クロフォード、カネロ・アルバレス、ゲンナジー・ゴロフキン、エロール・スペンスJr.のレベルのファイターたちは、どの時代でも通用するだろう。ある程度の時代を超越した実力を持っていたフロイド・メイウェザーやアンドレ・ウォード、バーナード・ホプキンスにも同じことが言える。
そう、通用する。
では、1980年代のシュガー・レイ・レナードは現在のウェルター級選手よりも優れているか?
全く疑う余地がない。レナードは全盛期のシュガー・レイ・ロビンソンを例外に、どの時代でも支配できるだろう。
しかし、他のスポーツでは何十年も前のアスリートは現代では通用しない。
史上最高の野球選手と誰もが認めるベーブ・ルースが、多彩な変化球と100マイルを超える速球を操る現代の投手を、生涯打率3割4分2厘のまま打ち込めるとは考えられない。
1932年の五輪で二つの金メダルを獲得した水泳選手は、現代では女子の準決勝に進むこともできない。
では、ボクシングにだけ例外が存在するのはなぜなのか?
現代のボクサーが優れているのは、栄養面と、試合間隔が空くことによるコンディショニング。昔日の栄養面と試合間隔では、現代のボクサーの精度は間違いなく落ちる。
テディ・アトラスは「ボクシングの技術はある日突然に全てが変化したわけではない。段階を踏んで進化してきたのだ」と語り、黒人ボクサーのパイオニアというだけではなく攻防一体のスタイルを編み出したジャック・ジョンソン、ユダヤ人ボクサーとして一時代を築いたベニー・レナードは現代に連なる技術体系を完成させた、と説明している。
殿堂入りのマッチメーカー、ブルース・トランプラーは「現代には大きな技術進化をもたらすボクサーがいなくなった。その理由は、1940年代から1950年代にボクシングの技術体系は完成していたからだ」と見ている。
さらに、トランプラーは「市場の縮小で選手だけではなく、優秀なコーチまでが少なくなったことも気になる」と指摘。
さらに、プロボクシングが安易なビジネスに偏向していったことも、ボクシングを退化させている一因だ。
他のスポーツでは最強対決が避けられないが、ボクシングでは最強対決が見れないことが当たり前。ボクシングで「誰に勝ったのか?」が問われるのは、そのためだ。
ロジャー・フェデラーとラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチは切磋琢磨することで、後続の若い選手たちが届かない高みに到達した。そこに「フェデラーは誰に勝ったのか?」なんて愚問がわく隙はない。
アトラスは「どんなに優秀なトレーナーでも教えられないことがある。どんなに厳しい練習をしても学べないことがある。最も重要なことは優れた相手とギリギリの戦いをすることでしか修得できない。今の時代はそれが致命的に欠けているのだ。現代のファイターたちは、いかに安全にいかに楽をしてより大きな報酬と評価を手にするかのゲームに興じているだけ。そんな馬鹿げたことが許されるのはボクシングだけだ」と考えている。
「シュガー・レイ・レナードがなぜ偉大なファイターになったのか?彼がトーマス・ハーンズに勝てたのは、ロベルト・デュランから学んだから。そして、デュランとハーンズから学び取ったことがマービン・ハグラー戦につながっている。デュラン戦の前にはウィルフレド・ベニテスとの厳しい戦いも潜り抜けた。レナードは彼らとの戦いの中で、コーチが教えることのできない、練習では修得することのできない、勝負の秘法を学び取ったのだ」。
Great Fighters are forged in fire.
鉄が打たれて強くなるように、ギリギリの戦いから学ぶことで偉大なファイターが生まれるのだ。*****

▶︎▶︎▶︎現代で、Great Fighters are forged in fire.を地で行くファイターはマニー・パッキャオくらいでしょう。
アジア人、軽量級というナメられる要素満点だったことが幸いして、ビッグネームの方からオファーが押し寄せたのですが。
日本経済新聞などでも「日本人ボクサーが史上初の単独カバー」と紹介された、日の丸を背景にした井上尚弥を表紙に起用した一冊です。

かつての半分以下の64ページまで痩せ細ったにも関わらず、MMAコーナー「ENTER THE OCTAGON」が連載化されるなど、近い将来に雑誌タイトルが「The Ring & Octagon」(順番が逆転して「The Octagon & Ring」?)となるか、廃刊になるかの二つに一つと噂されていた時期でした。
表紙は「井上尚弥」。Fighter Of The Month(月間最高選手賞)は「村田諒太」を大番狂せで下したロブ・ブラント。Best I Faced(私が対決したキャリア最高の相手)は「ファイティング原田」。

PFPランキングは1位がワシル・ロマチェンコ。超軽量級からは6位の井上をはじめ、8位にシーサケット・ソールンビサイ、10位に井岡一翔に勝利したドニー・ニエテス。
トーマス・ハウザーの連載「JAB AND STRAIGHT WRITES」をご紹介。
*****現代のプロボクサーほど過去との比較に晒されているアスリートは、他のスポーツでは全く見当たらない。
マイク・トラウトは「ミッキー・マントルの領域には達していない」と批判されることはない。他のスポーツではそれが当たり前だ。
ところが、最近のボクサーは有名になればなるほど、過去のグレートと比較され「誰々と戦っていたならKO負け」と決めつけられてしまう。
ボクシングファンは懐古的で、ロマンティックな生き物なのだ。
ベニー・レナードは強かったか? 彼の時代なら文句なし、間違いなく強かった。しかし、100年の歴史を超えて全盛期のレナードとロマチェンコを戦わせるなら、私は迷わずロマチェンコに賭ける。
「レナードよりもロマチェンコが上」という話ではなく、時代とともに技術も進化するということだ。
ロマチェンコ、テレンス・クロフォード、カネロ・アルバレス、ゲンナジー・ゴロフキン、エロール・スペンスJr.のレベルのファイターたちは、どの時代でも通用するだろう。ある程度の時代を超越した実力を持っていたフロイド・メイウェザーやアンドレ・ウォード、バーナード・ホプキンスにも同じことが言える。
そう、通用する。
では、1980年代のシュガー・レイ・レナードは現在のウェルター級選手よりも優れているか?
全く疑う余地がない。レナードは全盛期のシュガー・レイ・ロビンソンを例外に、どの時代でも支配できるだろう。
しかし、他のスポーツでは何十年も前のアスリートは現代では通用しない。
史上最高の野球選手と誰もが認めるベーブ・ルースが、多彩な変化球と100マイルを超える速球を操る現代の投手を、生涯打率3割4分2厘のまま打ち込めるとは考えられない。
1932年の五輪で二つの金メダルを獲得した水泳選手は、現代では女子の準決勝に進むこともできない。
では、ボクシングにだけ例外が存在するのはなぜなのか?
現代のボクサーが優れているのは、栄養面と、試合間隔が空くことによるコンディショニング。昔日の栄養面と試合間隔では、現代のボクサーの精度は間違いなく落ちる。
テディ・アトラスは「ボクシングの技術はある日突然に全てが変化したわけではない。段階を踏んで進化してきたのだ」と語り、黒人ボクサーのパイオニアというだけではなく攻防一体のスタイルを編み出したジャック・ジョンソン、ユダヤ人ボクサーとして一時代を築いたベニー・レナードは現代に連なる技術体系を完成させた、と説明している。
殿堂入りのマッチメーカー、ブルース・トランプラーは「現代には大きな技術進化をもたらすボクサーがいなくなった。その理由は、1940年代から1950年代にボクシングの技術体系は完成していたからだ」と見ている。
さらに、トランプラーは「市場の縮小で選手だけではなく、優秀なコーチまでが少なくなったことも気になる」と指摘。
さらに、プロボクシングが安易なビジネスに偏向していったことも、ボクシングを退化させている一因だ。
他のスポーツでは最強対決が避けられないが、ボクシングでは最強対決が見れないことが当たり前。ボクシングで「誰に勝ったのか?」が問われるのは、そのためだ。
ロジャー・フェデラーとラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチは切磋琢磨することで、後続の若い選手たちが届かない高みに到達した。そこに「フェデラーは誰に勝ったのか?」なんて愚問がわく隙はない。
アトラスは「どんなに優秀なトレーナーでも教えられないことがある。どんなに厳しい練習をしても学べないことがある。最も重要なことは優れた相手とギリギリの戦いをすることでしか修得できない。今の時代はそれが致命的に欠けているのだ。現代のファイターたちは、いかに安全にいかに楽をしてより大きな報酬と評価を手にするかのゲームに興じているだけ。そんな馬鹿げたことが許されるのはボクシングだけだ」と考えている。
「シュガー・レイ・レナードがなぜ偉大なファイターになったのか?彼がトーマス・ハーンズに勝てたのは、ロベルト・デュランから学んだから。そして、デュランとハーンズから学び取ったことがマービン・ハグラー戦につながっている。デュラン戦の前にはウィルフレド・ベニテスとの厳しい戦いも潜り抜けた。レナードは彼らとの戦いの中で、コーチが教えることのできない、練習では修得することのできない、勝負の秘法を学び取ったのだ」。
Great Fighters are forged in fire.
鉄が打たれて強くなるように、ギリギリの戦いから学ぶことで偉大なファイターが生まれるのだ。*****

▶︎▶︎▶︎現代で、Great Fighters are forged in fire.を地で行くファイターはマニー・パッキャオくらいでしょう。
アジア人、軽量級というナメられる要素満点だったことが幸いして、ビッグネームの方からオファーが押し寄せたのですが。
コメント
コメント一覧 (3)
ある意味、ボクシングビジネスに革新的なことです。
フシ穴の眼
が
しました
錦織世代やもっと後のチチパス達の世代に時代が訪れなかったのは凄すぎます。錦織圭はある意味で時代の被害者ですね。
フシ穴の眼
が
しました