第7ラウンド2分ちょうど。カウントアウトではありませんでしたが、ある意味それ以上に戦慄の破壊劇でした。


[Round1]今月39歳になるベテルビエフは劣化の兆候がほとんど見られない。

今日のライトヘビー級タイトルマッチを前に、試合を生中継したESPNが「Who are the most dangerous punchers in men's boxing?ボクシング界で最も危険なパンチャーは誰か?」と題した記事をアップしました。

1位がアルツール・ベテルビエフで、2位が井上尚弥。

3〜10位はデオンティ・ワイルダー、テレンス・クロフォード、ガーボンタ・デービス(アブドゥル・ワヒド)、スブレエル・マティアス、ジェイ・オペタイア、ヂャン・ヂレイ、寺地拳四朗、ジャロン・エニス。

この10人の中でワンパンチ・フィニッシャーと呼べるのはワイルダーだけですが、ベテルビエフも他の9人とは異次元のパンチャーであることは明らか。

「ジャブの差し合いで主導権を握る」と意気込んでいたカラム・スミスが、思い通りの展開で大きなダメージを蓄積することになった光景は異様なものでした。

「距離を測る」「自分の距離とタイミングをキープする」「相手の攻撃を分断する」。それが、スミスや私たちのジャブの定義でしたが、ベテルビエフのジャブは技術的には伸びも引きも速く、拳も返さない典型的なジャブにも関わらず、対戦相手はゴツンゴツンと岩石で殴られているような反応を見せるのです。

スミスの左は昆虫の触角ですが、ベテルビエフのそれはミサイルの速射でした。ジャバーがジャブを差し合えない、「一つもらっても三つ、四つ当て返す」なんて理屈が通用しない、異次元のジャブでした。



[Round2]ベテルビエフのPFP評価は低すぎる。

丸1年近くブランクがあるという事情があるにせよ、ベテルビエフのPFP評価はThe Transnational Boxing Rankings BoardとESPNで7位、リング誌では圏外。

脳内妄想のお遊びにしても、ちょっと想像力が足りなさすぎです。

ワイルダーのような、ただのパンチャーではありません。

しかし、今年、ビボルを倒してUndisputed championになっても、ヘビー級のメガファイトの勝者にFighter Of The Yearは持っていかれ、PFP1位も難しそう。

アマチュア時代に大舞台で2度敗れているオレクサンデル・ウシクに〝雪辱〟でもしない限り、過小評価の運命は変わらないのかもしれません。

https://fushiananome.superknova.org/archives/29510325.html



[Round3]ベテルビエフとビボルの完全統一戦はラマダン明けの4月か5月。

この種の頂上決戦はプロモーターやテレビ局、選手同士の思惑が交錯して、実現までに賞味期限が切れてしまうことも珍しくありませんでした。

しかし、それはあくまで資本主義国の米国マーケットでの話。そこでは「もう少し先延ばしした方が果実が大きくなるんじゃないか?」という強欲や、「やるなら自分たちの主催でないと受け入れられない」という数え切れないエゴが渦巻いているのです。

そんな複雑な利害関係を一言でいえば「カネ」の問題。つまり、カネでカタがつくのです。

サウジアラビアが用意する招致料や報酬などは、巷間言われているような金額を大きく上回っているはずです。常識的な金額の範囲内なら、あのMGMグループが「招致合戦は無意味」と、戦わずして白旗を揚げるはずがありません。

プロモーターもテレビ局も選手も「先延ばしなんてしている場合じゃない。サウジの気が変わらないうちにサインをしなければ!」という金額であるのは間違いありません。



[Round4]ベテルビエフはビボルも沈める。

ベテルビエフの異次元のパンチ力の前にはビボルは第二のオレクサンドル・グヴォズディクになるでしょう。

前半、ポイントで優勢に立つかもしれませんが、36分間立ち続けるのはミッション・インポシブルです。

さらに、サウジアラビアならムスリムのベテルビエフへの声援が少しだけ大きくなるのは間違いありません(といっても大観衆が集まるわけではありませんが)。



[Round5]モロニーは想像以上に弱かった。

WBOバンタム級王者ジェイソン・モロニーが、完全安牌と思われたサウル・サンチェスに大苦戦。オッズが「ベテルビエフvsスミス」と同じ4−1だったとは思えない、薄氷の勝利でした。

元々評価の高くなかったモロニーですが、予想以上の弱さを露呈、いつ誰に負けてもなんの不思議もない穴王者です。

来月23日に中谷潤人が予定通りにWBC王者になれば、モロニーが熱望している「地元豪州で団体統一戦」に「弟のカタキ打ち」という看板まで掲げられるのですが…。

是非、年内に実現して欲しいです。




[Round6]焼け野原バンタムは美味しい果実が収穫どき。

評価の低いモロニーがさらにその株を落としましたが、今のバンタム級シーンではこのオージーが強豪の1人なのです。

モロニーが辛勝したサンチェスは、那須川天心が選択するようなアルファベット団体がでっち上げた〝世界ランカー〟。もし、天心が選んだら非難轟々だったでしょう。

WBAの井上拓真、WBCのアレハンドロ・サンチアゴ、IBFのエマヌエル・ロドリゲス、どれも触れなば落ちんの穴王者です。

バンタム級の世界発進が整った日本のコンテンダーたちが4つのタイトルを独占したとしても、なんの驚きもありません。



[Round7]中谷潤人はバンタム級最強でも完全統一できない。

井上尚弥が喰い散らかした残飯と残骸が王者に就いているバンタム級シーンで、まだこのクラスで1試合も戦っていないにも関わらず中谷潤人の評価は頭抜けています。

専門家予想とオッズの通りに中谷がサンチアゴに圧勝すると、モロニーだけでなく日本人の118パウンダーたちも対戦に逡巡するかもしれません。

すでに公言している通り、中谷のターゲットはジュニアフェザー級のUndisputed champion井上尚弥。

実現すると、目標としているPFPキングに王手をかけ、Fighter Of The Yearまで射程に捉えるメガファイトになります。

バンタム級完全統一の目処が立たなければ、中谷は来年にも階級を上げるでしょう。