ヘビー級を除くと、ボクシングの世界にはリングの外での戦い「減量」が存在します。
井上尚弥ら超軽量級では脱水の影響などから試合当日も完全に健康体に戻らず、試合中に足の痙攣などに悩むボクサーも珍しくありません。
完全な健康体、つまり自分の中で絶対的に強い状態でリングに上がるよりも「より弱い相手を求める」のが主目的の減量によって肉体を削る方が相対的な強さを手に入れることが出来るーーーというのがボクシング界だけでなく、階級制格闘技の常識です。
超軽量級の中ではメジャーの色彩の濃いフェザー級で頓挫したノニト・ドネアがバンタム級に出戻った理由は「自分が最も輝ける場所」と判断したからでしたが、それは「より弱い相手がいるバンタム級」だからというのが本音です。
ドネアにとっての「自分が最も輝ける場所」は、かつて口にしていた「ライト級でPPVファイター」でしたが、夢はずっと手前で砕け散ってしまいました。
もちろん、アスリートとして懸命の判断であり、当然の選択です。「フェザー級は何もかもが違う」(ドネア)と白旗を挙げたのですから、選択肢は〝後退〟以外に考えられません。
ドネアは、マニー・パッキャオやフロイド・メイウェザーのような画期的な技術はなく、自分よりも大きな相手をコントロールするためのモデルチェンジを施す器用さも欠落した、ワンパターンのパンチャー。
もちろん、このスポーツの面白さを体現してくれるのがドネアのような純度の高いパンチャーです。
リミットの無いヘビー級のボクサーは、自分の作戦や対戦相手によって体重をデザインして戦いますが、メイウェザーやパッキャオも井上に代表される「弱体化する過酷な減量」とは無縁でした。
このあたりの異次元さは、井上や井岡一翔ら日本のボクサーには全く理解不能かもしれません。
メイウェザーはジュニアミドル級(154ポンド)の試合でオスカー・デラホーヤ戦が150ポンド、ミゲール・コット戦が151ポンド、コナー・マクレガー戦に至っては茶番劇とはいえ149.5ポンドで計量しました。
さらに、パッキャオに至ってはリミットを大きく下回るのがデフォルト。150ポンド契約のアントニオ・マルガリート戦の前日計量は144ポンド。
メイウェザーやパッキャオは「自分も弱体化しながらより弱い相手を求める」減量とは全く違う、「適正体重よりも重い人気階級でより大きなカネと注目を求める」体重コントローラーでした。

9月30日にカネロ・アルバレスが持つスーパーミドル級のUndisputed titleに挑戦するジャーメル・チャーロも「適正体重よりも重い人気階級でより大きなカネと注目を求める」冒険に船を漕ぎ出したファイターです。
トレーナーのデレク・ジェームスは「筋肉で増量したら良いという問題ではない。筋肉はオモリになるし、可動域を狭めたり反射を鈍らせる危険もある。カネロは確かにハードパンチャーだが距離は短く、追い足もない」と、体重とカネロとの相性を踏まえて「(リミットの168ポンドを大きく下回る)163か164ポンド で仕上げるつもり」と語っています。
“I want him to be fast, I want him to be athletic, I want him to be mobile. The heavier you are, it’s like you’ll be lethargic, slower. You have to be faster,” said James about Charlo.
チャーロはスピードと身体能力、機動力を生かした戦い方をしなければならない。体重を増やして鈍重になってはダメなんだ」。
そして、カネロと戦うあらゆる選手、陣営が懸念を口にする「ラスベガスのジャッジ」。
ジェームスも不信感を露わにしています。「ラスベガスのジャッジがカネロ贔屓なのは、もう誰も否定できない。我々も微妙なラウンドは全部持っていかれると覚悟している。判定が読み上げられたドミトリー・ビボルの表情を見たかい?115−113のスコアを聞いて、私もビボルと同じ思いだった。そういうことか、と」。
「あの試合がたった1ラウンド差だったなんて馬鹿げてる。しかし、ラスベガスはカネロの町だから、我々はビボルのように内容で圧勝、公式で辛勝になるかもしれない」。
Jermell Must Win Rounds Decisively Against Canelo
カネロに勝つには、明白に取ったラウンドを積み重ねるしかないんだ。
「ジャーメルは1ラウンドで80発以上のパンチをまとめて、ラスベガスのジャッジを黙らせるしかない。同じ数だとジャッジは100%カネロに付ける」。
現在のオッズはカネロ勝利が4/11(1.36倍)、 チャーロ11/5(3.2倍)。
チャーロがいきなり2階級上げてくること、急遽の代役だったことまで含めると、このオッズは思いがけないほど接近しています。
もちろん、カネロの心身に迫る劣化 の影も読み取った数字でしょう。
カネロはハンドスピードとパワー、ディフェンス技術で高い能力がありますが、足が遅いためにクロスレンジに相手を閉じ込めなければなりません。
チャーロにはカネロが嫌う長い距離をキープしながら、接近してくるカネロを迎撃する、ビボルと同じかそれ以上の技術を持っています。
カネロがジュニアミドル級時代、挑戦をアピールするチャーロ兄弟とのポテンシャルオッズはわずかとはいえアンダードッグでした。チャーロ兄弟がカネロのジョーカーを握っていると見られていたのです。
もちろん、今のカネロはひ弱な面もあった154パウンダーではありません。
ライトヘビー級でもトップ選手、ジャーメルのスピードや身体能力に戸惑うことはあるかもしれませんが、そのパワーが脅威にならなければ、ジェームスが心配するジャッジに勝敗を委ねることのない、あっけない結果に終わるかもしれません。
井上尚弥ら超軽量級では脱水の影響などから試合当日も完全に健康体に戻らず、試合中に足の痙攣などに悩むボクサーも珍しくありません。
完全な健康体、つまり自分の中で絶対的に強い状態でリングに上がるよりも「より弱い相手を求める」のが主目的の減量によって肉体を削る方が相対的な強さを手に入れることが出来るーーーというのがボクシング界だけでなく、階級制格闘技の常識です。
超軽量級の中ではメジャーの色彩の濃いフェザー級で頓挫したノニト・ドネアがバンタム級に出戻った理由は「自分が最も輝ける場所」と判断したからでしたが、それは「より弱い相手がいるバンタム級」だからというのが本音です。
ドネアにとっての「自分が最も輝ける場所」は、かつて口にしていた「ライト級でPPVファイター」でしたが、夢はずっと手前で砕け散ってしまいました。
もちろん、アスリートとして懸命の判断であり、当然の選択です。「フェザー級は何もかもが違う」(ドネア)と白旗を挙げたのですから、選択肢は〝後退〟以外に考えられません。
ドネアは、マニー・パッキャオやフロイド・メイウェザーのような画期的な技術はなく、自分よりも大きな相手をコントロールするためのモデルチェンジを施す器用さも欠落した、ワンパターンのパンチャー。
もちろん、このスポーツの面白さを体現してくれるのがドネアのような純度の高いパンチャーです。
リミットの無いヘビー級のボクサーは、自分の作戦や対戦相手によって体重をデザインして戦いますが、メイウェザーやパッキャオも井上に代表される「弱体化する過酷な減量」とは無縁でした。
このあたりの異次元さは、井上や井岡一翔ら日本のボクサーには全く理解不能かもしれません。
メイウェザーはジュニアミドル級(154ポンド)の試合でオスカー・デラホーヤ戦が150ポンド、ミゲール・コット戦が151ポンド、コナー・マクレガー戦に至っては茶番劇とはいえ149.5ポンドで計量しました。
さらに、パッキャオに至ってはリミットを大きく下回るのがデフォルト。150ポンド契約のアントニオ・マルガリート戦の前日計量は144ポンド。
メイウェザーやパッキャオは「自分も弱体化しながらより弱い相手を求める」減量とは全く違う、「適正体重よりも重い人気階級でより大きなカネと注目を求める」体重コントローラーでした。

9月30日にカネロ・アルバレスが持つスーパーミドル級のUndisputed titleに挑戦するジャーメル・チャーロも「適正体重よりも重い人気階級でより大きなカネと注目を求める」冒険に船を漕ぎ出したファイターです。
トレーナーのデレク・ジェームスは「筋肉で増量したら良いという問題ではない。筋肉はオモリになるし、可動域を狭めたり反射を鈍らせる危険もある。カネロは確かにハードパンチャーだが距離は短く、追い足もない」と、体重とカネロとの相性を踏まえて「(リミットの168ポンドを大きく下回る)163か164ポンド で仕上げるつもり」と語っています。
“I want him to be fast, I want him to be athletic, I want him to be mobile. The heavier you are, it’s like you’ll be lethargic, slower. You have to be faster,” said James about Charlo.
チャーロはスピードと身体能力、機動力を生かした戦い方をしなければならない。体重を増やして鈍重になってはダメなんだ」。
そして、カネロと戦うあらゆる選手、陣営が懸念を口にする「ラスベガスのジャッジ」。
ジェームスも不信感を露わにしています。「ラスベガスのジャッジがカネロ贔屓なのは、もう誰も否定できない。我々も微妙なラウンドは全部持っていかれると覚悟している。判定が読み上げられたドミトリー・ビボルの表情を見たかい?115−113のスコアを聞いて、私もビボルと同じ思いだった。そういうことか、と」。
「あの試合がたった1ラウンド差だったなんて馬鹿げてる。しかし、ラスベガスはカネロの町だから、我々はビボルのように内容で圧勝、公式で辛勝になるかもしれない」。
Jermell Must Win Rounds Decisively Against Canelo
カネロに勝つには、明白に取ったラウンドを積み重ねるしかないんだ。
「ジャーメルは1ラウンドで80発以上のパンチをまとめて、ラスベガスのジャッジを黙らせるしかない。同じ数だとジャッジは100%カネロに付ける」。
現在のオッズはカネロ勝利が4/11(1.36倍)、 チャーロ11/5(3.2倍)。
チャーロがいきなり2階級上げてくること、急遽の代役だったことまで含めると、このオッズは思いがけないほど接近しています。
もちろん、カネロの心身に迫る劣化 の影も読み取った数字でしょう。
カネロはハンドスピードとパワー、ディフェンス技術で高い能力がありますが、足が遅いためにクロスレンジに相手を閉じ込めなければなりません。
チャーロにはカネロが嫌う長い距離をキープしながら、接近してくるカネロを迎撃する、ビボルと同じかそれ以上の技術を持っています。
カネロがジュニアミドル級時代、挑戦をアピールするチャーロ兄弟とのポテンシャルオッズはわずかとはいえアンダードッグでした。チャーロ兄弟がカネロのジョーカーを握っていると見られていたのです。
もちろん、今のカネロはひ弱な面もあった154パウンダーではありません。
ライトヘビー級でもトップ選手、ジャーメルのスピードや身体能力に戸惑うことはあるかもしれませんが、そのパワーが脅威にならなければ、ジェームスが心配するジャッジに勝敗を委ねることのない、あっけない結果に終わるかもしれません。
コメント
コメント一覧 (1)
今思えば井上尚弥は全くの逆でしたね。ライトフライで戦ってた時は明らかに弱っていて相対的に弱かった。逆に減量が楽になったバンタムの方が圧倒的に強さが増した。
フシ穴の眼
が
しました