「パンチャー」とは何なのでしょうか?

日本時間の今朝、またしてもテクニシャンとの両面を見せつけたアルツール・ベテルビエフが「パンチャー」であることは、誰も否定しないでしょう。

しかし、それは「ライトヘビー級」という閉ざされた世界だけで限定された〝限定免許〟なのかもしれません。

フライ級とジュニアバンタム級で「パンチャー」だったビック・ダルチニアンは、バンタム級から先は〝それ〟が交付されるファイターではなくなりました。同じようなサンプルは、直近の日本でも比嘉大吾らが見られ、全く珍しいものではありません。

〝軽量〟のデオンティ・ワイルダーが何階級も違う相手に対してもパンチャーであり続けるようなケースは、ヘビー級だけに見られる現象です。

高校時代に何本もホームランを打ち込んでプロ入りしたスラッガーがプロでは脇役に活路を見出すしかないように「パンチャー」という言語も、ヘビー級以外では〝限定免許〟として考えるべきなのかもしれません。

一方で、マニー・パッキャオやフロイド・メイウェザー、バーナード・ホプキンスのような、スタイルチェンジに伴う、明らかに意図された〝免許返納〟も、見られます。

彼らは、ダルチニアンや比嘉が抱いた自らのパワーが上の階級で通用しないというジレンマとは無縁でした。

パッキャオやメイウェザー、ホプキンスは「倒せなくなった」のではなく「倒そうとしなくなった」のですから。

それでも、何はともあれ、このスポーツで最も魅力的な瞬間は、パンチャーズ・チャンス、一発で全てが清算されてしまう刹那です。

今朝のベテルビエフとアンソニー・ヤードや、デオンティ・ワイルダーとルイス・オルティスのように、クロスゲームに見えても、その刻が来ると試合が終わる、そう直感できるのがパンチャーズ・ゲームです。

もし、ヤードのボクシングがドミトリー・ビボルを相手に展開されていたなら、メディアもファンも番狂せの予感に震えていたでしょう。

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誰にでも〝バッタモン〟だとわかっていたエドガー・ベルランガ。ボクシングは「天才」と「KOアーティスト」の大量生産工場です。そして、残念ながら、そのほぼ全てが不良品で、彼らは悲しいリコールに回されてしまいます。


野球で4点差が「セーフティリード」と呼ばれているのは「満塁本塁打を浴びても同点」だからです。

ボクシングは、セーフティリードがないという意味でも、これほどスリリングなスポーツは存在しません。

もちろん、それには大前提があります。

ビッグパンチャーがからむ、ということです。

ビッグパンチャーには、ベテルビエフや井上尚弥のような階級限定とはいえ、文句なしの免許皆伝から、ガーボンタ・デービスやエドウィン・バレロ のような何のテストもされていない不良品臭漂う怪しい商品まで幅広いラインアップがあることが特徴です。

それでも…正規品はもちろん不良品ですら、ボクシングファンを身悶えさせる魅力を放つのがビッグパンチャーです。

その系譜と型式を独断と偏見で振り返ってゆきます。