アンソニー・ヤードのソリッドなアッパーにヒヤッとする場面もありましたが、アルツール・ベテルビエフが敵地で防衛成功、全勝全KOのレコードを19に伸ばしました。

8ラウンドにダウンを奪われたヤードには、全階級通じて最強打者と戦うには気持ち以外の戦力は何も残されていませんでした。

7ラウンドまでのスコアカードは2人が68-65、67-66で挑戦者を支持。もう1人は 67-66で王者。ヤードは予想以上に健闘しましたが、両者の火力の差は予想通りという試合でした。


PUNCHESBETERBIEVYARDE
Total landed136111
Total thrown334357
Percent41%31%
Jabs landed5236
Jabs thrown153160
Percent34%23%
Power landed8475
Power thrown181197
Percent46%38%
-- Courtesy of CompuBox

強打者でありながら、上質のジャブの使い手。「ベテルビエフが何者なのか」をよく表したスタッツです。



脅威のパンチャーでありながら、卓越した技術も持ち合わせているため、一発への依存度は高くない。何度も繰り返していますが、ベテルビエフは強い、です。

そのベテルビエフをプロモートするのは、落日のトップランク。かつて、世界一を争うプロモーターだったボブ・アラムも、今や91歳。

21世紀になってからもオスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、ミゲール・コット、マニー・パッキャオと宝石箱のように眩しかったトップランクの厩舎でしたが、ガラクタ置き場の色合いが年々濃くなっています。

ドミトリー・ビボル戦前にカネロが「ビボルは階級No.2の強豪」と間接的に最強評価したベテルビエフですが、スーパースターにとっては「危険極まりないロシア人」という非常警報装置が鳴りっぱなし、プロモーターにとってもハンドリングが非常に難しいファイターでした。

誰もが「カネロがベテルビエフに興味を示すのは、明白に衰えたという証明書が発行されてから」と見ていましたが、圧倒的不利の下馬評をひっくり返してビボルがカネロを破ったことで、潮目が大きく変わります。

ビボルがカネロとの再戦と並行して、175ポンドの完全統一を熱望。「注目されない」という宿命を背負っていたロシア人同士でしたが、そのライバルがこれ以上ない大魚を釣り上げたのです。

「ビボルvsカネロ2」がセットされるとしたら9月のメキシコ独立記念日週間。この試合の勝者と、ベテルビエフが年内に戦う、というのは難しいかもしれません。

「ビボルvsカネロ2」は、連敗が許されないカネロ陣営がビボルを消耗させるためにスーパーミドル級で行われる見通し。カネロが勝ってもベテルビエフ戦は回避するでしょうから、ビボルに勝ってもらわなければ困ります。

ビボルの立場から見ると、今年9月にカネロ、来年にベテルビエフと、2試合でスーパーミドル級とライトヘビー級のUndisputed Title2階級制覇というビッグチャンス到来。

カネロ戦はボクシング界の注目を集め、ベテルビエフ戦はマニア垂涎のプレミアムファイト。昨年、Fighter Of The Yearを独占したビボルが今年、来年も続けて3年連続受賞の可能性もあり得ます。

連続受賞は2年連続が記録。3年連続なら史上初の快挙です。

z-manny-decade

ちなみに、2年連続受賞はリング誌でジョー・ルイス(1938−39)、ロッキー・マルシア(1954−55)、インゲマル・ヨハンソン(1958−59)、ジョー・フレイジャー(1970−71)、モハメド・アリ(1974−75)、イベンダー・ホリフィールド(1996−97)、マニー・パッキャオ(2008−09)の7人。


最も権威のある全米ボクシング記者協会(BWAA)のSugar Ray Robinson Awardでは、アリとホリフィールド、パッキャオの3人だけ。

3年連続はならずとも、今年獲って2年連続ならBWAAでもリング誌でも「非ヘビー級」ではパッキャオ以来、史上2人目の快挙です。