もう年末年始の休暇に入った人もいるでしょうが、私は明日まで。

忘年会の二日酔い頭を抱えながら、昨日に続いて朝の通勤電車からお届けするのは「箱根駅伝」のお話。

65BE2CF2-6A74-4A4F-B3CC-713658DAF964

箱根駅伝を主催する関東学生陸上競技連盟(関東学連)は今年6月、再来年(2024年)の100回大会で「全国化」に踏み切ると発表しました。

これまで関東の大学に限定されてきた出場資格を、全国の大学に広げるのです。

大学日本一を決める大会は全日本大学駅伝のはずですが、そう考えているスポーツファンは、実態を知っている人を含めてすら、一人もいないでしょう。

人気面でもはや知らない人がいなくなった箱根駅伝と、いつどこでやってるのかほとんど誰も知らない全日本大学駅伝。

IMG_7286 (1)

全日インカレよりも関東インカレの方が人気もステイタスも上、というような狂気の沙汰です。常識ではあり得ないことが、大学駅伝の世界では常態化しているのです。

ローカル大会をここまでメジャーに発展させた関東学連の努力を無視して良いのなら、箱根を全日本大学駅伝に格上げ、つまり関東学連が日本学連に箱根を〝奉納〟して、既存の全日本を廃止するのが最も理に適ったやり方です。

とにかく「全国開放」は大英断です。

もちろん、現実には全国大学駅伝を廃止できるわけがなく、何よりも豊潤な既得権益を関東学連が手放すわけがありません。

関東以外の大学が渇望していた「全国開放」は、2024年の第100回記念大会限定の実施になります。

この「全国解放」は全国の大学にとっては朗報でしかないはずですが、この「1回限定」というのが大きな問題を引き起こしています。

もっとわかりやすく言うと、1回だけでは何の意味もないのです。

まだエントリーも始まっていないのに、関西の複数の強豪大学は予選会に参加しない方針だと聞きました。

今年の全日本大学駅伝は上位15校までを関東の大学が占めました。レベルの高い関東では16位以降に食い込める実力のある大学も少なくありませんが、関東枠から全日本への出場を阻まれています。

「来年の予選会に出場しても全く勝ち目がない。全国開放しても関東の大学しか走らない、やらなきゃ良かったと言う大会になる」と言うのが、関西などの大学側の本音です。

全日本大学駅伝やインカレ・インターハイのように、北海道・東北枠・東海枠・関西枠…のようにブロックを作って出場校を決める方法もありますが、それでは「全国大会」になってしまいます。

今回の全国開放はあくまで「関東ローカルの箱根駅伝の出場資格を全国に広げる」試みであって「箱根を全日本駅伝化」するのではありません。

また、関東学連には将来毎年全国開放することを見越しての最初の一歩という思いもないでしょう。

巨額の投資を惜しまず強化した青山学院大ですら、本選出場まで5年かかりました。たった1年で予選会を突破するのは、青学よりもブランド力・資金力で大きく劣る地方大学には不可能です。

例えば、1万メートルを28分前半で走るランナーを二人作る、というなら何とかなるかもしれません。しかし、平均タイム29分00秒の選手を10人揃えるのは至難の業です。

①で触れた「出場枠は広がっているのに、予選会の出場チームは増えない」という最大の原因がそこにあります。

予選会には各校10名以上14名以下、出場人数は10名以上12名以下。エントリー者全員が1万メートル34分以内のトラックでの公認記録を有していること。

つまり、最低でも10人は1万メートル34分以内のタイムを持っていなければならないのです。

1万メートル34分。ピンと来ないかもしれませんが、1000メートル204秒。1500メートルなら306秒、5分6秒のペースです。

遅いです。大学の体育会はもちろん、高校で陸上長距離走ってて「ベストは34分です」なんて大したことありません。

正直、健康な男子で特別体が重い体質でなければ、1年練習したら34分なんて誰でも切れます。

ただ、それを10人集めるのは普通の大学では難しいのです。長距離だけで最低10人、他の種目や女子も含めると結構な大所帯の陸上競技部になってしまいます。

約30年前の私のベストは31分台、34分かかることはありませんでした。当時の予選会は20kmで10人が1時間6分平均で走れば本選出場で、私もそれくらいのタイムでは走っていました。

出場枠が広がる5年に一度の記念大会になると、予選突破の目安は1時間7分まで緩んでいました。

1時間6分が平均で箱根出場ですから、下位大学の出場10人の中には1時間10分近くかかるランナーもいるわけです。

正月にコタツの中で酒煽りながら「こいつも俺より遅いやん」と箱根駅伝を見ていたのを思い出しますが、私のようなのでも10人いれば出れるレベルだったのです。

しかし、今年の予選会(ハーフマラソン=21.0975km)で最後の10位通過した国士舘大学のタイムは上位10人の合計タイムで10時間48分55秒。一人当たり平均1時間4分53秒。20kmに換算すると約1時間1分、もはや1時間6分の私が何かの間違いで出せるタイムではありません。

ちなみに、当時の予選会では1時間1分で走れば間違いなく1位でした。

10人平均で1時間8分を切るのは、東大や慶應大学のようなセレクションのない大学でも、しっかり計画すれば十分狙えるタイムです。

しかし、20km換算で1時間1分、1万なら29分台で10人平均となると、西日本の強豪大学でも10人どころか5人育てるのでも極めて難しい仕事になります。

ましてや、それを来年の予選会までの短い時間で用意するとなると、確かに不可能です。

「全国開放なんていっても、結局どこも予選突破できるわけがない」。 

確かに、このままだと100回大会もいつもと変わらない関東の大学だけの箱根駅伝になってしまいます。

箱根駅伝はどこへ行くのか?