ドミトリー・ビボルがヒルベルト・ラミレスに完勝、5月のカネロ・アルバレス戦に続いてメキシカンハンターぶりを発揮して今年を締めくくりました。

今年、最も活躍したボクサーは誰か?

ボクシングの場合、階級による人気(報酬)や、レベル、層の厚さが大きく異なります。それでも、そんな垣根を全部取っ払って「どの階級も平等」という視点で考えるのが、PFPであり、各種表彰です。

欧米のボクシングファンの中には「ウェルター級とストロー級を同列で語るのはおかしい」という見方が根強くあり、その主張もわからないではないのですが、PFPと表彰は17階級全ての選手にチャンスがある平等主義は間違っていません。

そんな平等主義に立脚して、今年のFIGHTER OF THE YEAR=Sugar Ray Robinson Award(全米ボクシング記者協会・BWAA選定)の行方を占います。


有力候補の筆頭はオレクサンダー・ウシク。「平等主義」を謳いながら、いきなりの〝ウクライナ贔屓〟発令です。

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ウシクは2017年にもBWAAとリング誌でFIGHTER OF THE YEARをW受賞しています。

ウシクがリングに上がったのは8月20日のアンソニー・ジョシュアと再戦した1試合だけ。ジョシュアはボクシングファンなら誰もが知る超ビッグネームですが、実力的にはPFPランキングにも名前が上がらない「標準的な世界ランカー」です。

ウシクはそのジョシュアを返り討ちしたものの、スプリットデジション。

「クルーザー級からヘビー級王者という最難関の2階級制覇(対戦相手にもよりますが軽量級の5階級制覇よりも難易度はずっと上)」だけでなく「ウクライナ」という〝印籠〟は、尊い平等主義を汚すものですが、多くのPFPランキングでウシクがトップ評価されるています。

ウシクが軽量級の2階級制覇でこの内容の試合をしていては、間違いなくFIGHTER OF THE YEAR なんて論外、PFPの俎上にも上がっていないでしょう。

平等主義を無視して、階級難易度を考慮してしまうと、awardやPFPは成立しません。

この厄介なウシクのことは一旦忘れて、有力候補をリストアップすると以下の3人。



▶︎ジャーメル・チャーロ:今年はブライアン・カスターニョとの再戦、1試合だけ。初戦で引き分けたカスターニョを見事に10ラウンドKO。4団体時代でジュニアミドル級史上初のUndisputed championに。

WBO王者だったカスターニョは、ESPNやリング誌などでチャーロに次ぐ階級2位評価の強豪でした。



▶︎ドミトリー・ビボル:カネロ・アルバレス、ヒルベルト・ラミレスとの2試合を連勝(いずれも判定勝ち)、WBAライトヘビー級王座を防衛。

カネロは当時PFPキングで、直近2021年と2019年のFIGHTER OF THE YEAR。世界評価で最高選手でした。

ラミレスはライトヘビー級でESPNとリング誌で共に3位の強豪。


▶︎井上尚弥:ノニト・ドネア(2ラウンドKO)、ポール・バトラーを序盤KO(予定)の2戦2勝2KOで、バンタム級のUndisputed championに。

全盛期はとうの昔に過ぎ去っているとはいえ、ドネアはESPNとリング誌で共に1位評価の強豪。

バトラーはバンタム級のトップ戦線で戦い続け、現在はアルファベット王者にもかかわらず、リング誌6位、ESPNはまさかの圏外。

バンタム級王者に2度就き、34勝15KO2敗というすばらしい数字をマークしているにもかかわらず、バトラーは驚くほど評価の低いボクサー。





【予想】チャーロの1試合は5月、新鮮な印象という点がマイナス。ビボルは2試合で二人の強豪に完勝、どちらも〝らしさ〟を発揮したとはいえ、地味な試合。

井上は2戦全勝2KOという数字でライバル二人を上回りますが、やはりバトラーの目も当てられない雑魚評価は懸念材料。

幻に終わったバトラー戦で10-1と圧倒的優位と見られていたジョンリール・カシメロの離脱が、本当に痛かったです。

バトラーでなくカシメロをKOしてのUndisputed championなら、もしFIGHTER OF THE YEARに選ばれなくても「BWAAは平等を無視した差別主義者の集団だ」と負け惜しみも言えるのですが…。


ただ、まだ結果が出たわけではありません。バトラー戦は12月13日。BWAAがこの試合を待って、選考記者に投票を促すのは間違いありません。

スペクタクルなKOシーンを演出すると、新鮮な印象点で一気に井上が票を集める可能性は十分です。

しかし、世界王者としてはどん底レベルに評価が低いバトラーにぐずつくようだと、日本人初の快挙は遠のいてしまいます。