まだ正式決定には至っていないものの、井上尚弥のバンタム級完全統一、最後のピースを奪ってコレクションを完成させる戦いが年内に開催される模様です。

リング誌、WBA、WBC、IBFのタイトルを掌握した井上に残されたストラップはポール・バトラーが持つWBOだけ。

井上は「自分が得意としないタイプ」「力の差はないと思っている」と発言しているものの、33歳の英国人に軽量級最高ファイターと互角に戦える武器は何一つとして見当たりません。

プロキャリアでの敗北は二つだけですが、一つはジュニアバンタム級バージョンのゾラニ・テテに斬り落とされ、もう一つは地元でエマヌエル・ロドリゲスに準完封負け。

ロドリゲス戦からは8連勝ですが6回戦が3試合、8回戦が2試合、ヨアン・ボワイエのような引っ越し屋さんが本業のアルバイターも含まれています。

直近のジョナス・スルタン戦こそ綺麗に勝利しましたが、スルタン相手にアンダードッグでした。もともと、対戦予定だったジョンリール・カシメロとはオッズは1-10、咬ませ犬レベルの評価。

英国でも人気がない軽量級、その中でもさらに日陰のボクサー、それがバトラーです。




ボクシングでは、Styles make Fights という言葉が度々繰り返されてきました。

ーーどんな展開・結果に成るかは、両者の戦力よりも、スタイルによって左右される。

シュガー・レイ・ロビンソンはジェイク・ラモッタ、モハメド・アリはケン・ノートン、トーマス・ハーンズはアイラン・バークレー、マニー・パッキャオはファン・マヌエル・マルケス、どんなグレートにもやりにくそうに戦わざるをえない〝ジョーカー〟が存在しました。

ラモッタやノートン、バークレー、マルケスは無敵に見えたスーパースターを無力化させるパスワード、ナンバーを知っていたのです。

無敗でキャリアを終えた(今の所)フロイド・メイウェザーですら、ホセ・ルイス・カスティージョやマルコス・マイダナのようなファイターには手を焼きました(多くの識者・メディアが指摘しているようにカスティージョ初戦は敗北でもおかしくない内容でした)。

では、バトラーも単純な戦力比較を超越して、井上尚弥のナンバーを知っている可能性があるでしょうか?

常識的に考えてありえません。

ラモッタとノートン、マルケスは一発殿堂。バトラーと同列には語れない、ステージがいくつも上のレジェンドでした。

バークレーもミドル、スーパーミドル、ライトヘビーの層の厚いクラスを3階級制覇したパンチャー。

カスティージョやマイダナも時代を代表するプレッシャーファイターでした。

それに比べて、バトラーは…。34勝のうち15のKOをマークしているとはいえ、そもそも雑魚との対戦が多いボクサーです。井上に対してパンチャーズ・チャンスがあるとはとても言えません。

井上が「得意じゃない」という動き回るスタイルも、マルケスのように精妙なカウンターを持っているわけでもなく、カスティージョのような激しい機動力もありません。

世界基準の相手なら誰でもアンダードッグになる、たまたまタイトルを獲っただけの王者、それがバトラーです。

タイトルを持っていなければ、戦う価値が1ミリもない相手です。

井上が減量失敗や急病で最悪の体調でリングに上がる、そんなことでもなければ、どう考えても負ける相手ではありません…常識的には。