2021年は、クラレッサ・シールズにとって失われた365日だったように見えるかもしれない。

男女通じて史上唯一の五輪2連覇(ロンドン2012〜リオデジャネイロ2016:いずれもミドル級) を成し遂げた彼女は、3月にマリエ・イブ・ディケアーに勝利してジュニアミドル級タイトルを完全コレクション。

ミドル級に続いてジュニアミドル級でもUndisputed Championに就いたのは、Four-Belt Eraでは男女通じて史上初の完全2階級制覇。

男子よりも歴史がない。男子よりも層が薄い。男子よりも注目度や報酬が低いから、選手レベルも低い。男子よりも試合が面白くない…だから、シールズの記録は大したことがない。

そう考えている人は、間違いなく彼女のキャリアを知らず、彼女の試合も見たことがないのだろう。 

この偉業は、五輪2連覇のあと、プロでわずか11戦で成し遂げられたのだ。五輪2連覇は簡単なことか?プロで完全2階級制覇はレベルが低いことか?

そして、彼女の試合は男子よりもアクションが豊富で、おそらくテクニックでも上だ。

しかし、米国ボクシング界は彼女にその実力に見合う評価を全く与えようとはしなかった。

「フロイド・メイウェザーならノックアウトできる」「ゲンナディ・ゴロフキンにも勝てる」。なんとか世間の耳目を引こうとするT-Rexの咆哮は虚しく響くだけだった。
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もし、彼女が男性なら、正当な評価を得てリングの中で世界中の尊敬と注目を浴びていただろう。

しかし、現実はそうではなかった。

だから…彼女はリングを出て、なんと鉄網のケージの中に入った。

6月にはブリットニー・エルキンを破り、総合格闘技デビュー。4カ月後に再びケージに入ったが、アビゲイル・モンテスにスプリットデジションで敗れた。

「MMAなんて無謀な挑戦。キャリアに傷がついた」という批判もあったが、世界は彼女の勇気をずっと見ていた。 

11月、英国のSky Sports&Boxxerがシールズと大型契約を締結したのだ。

“I knew that I would get paid a million dollars in boxing some way, somehow. And now we’re here.” 
 
「私は不当な扱いを受けていたわけじゃない。私は仕事相手として単純な人間。あなたも約束を守り、私も約束を守る、そこがスタート地点。自分の商品価値には自信を持っていたから、いつか7桁(100万ドル単位)の報酬を手にすることが出来ると信じていた」。

この場所に辿り着くまで、26歳のシールズは臥薪嘗胆の日々を送ってきた。

常識的には、2つの金メダルと、プロで2階級に渡って全てのベルトをコレクションした彼女がわざわざ米国を出る必要はない、と思うだろう。

ここ数年で、女子ボクシングの環境は大きく進歩したが、まだまだ先は長いということを思い知らされた。

シールズ本人は、米国ではなく英国、ヨーロッパが彼女に大きな契約書を持って歩み寄って来たことに驚きや戸惑いはなかった。

「私はHBOで戦い、Showtimeで戦い、DAZNで戦い、Fite TVで戦ってきた。ESPNとPremier Boxing Championsを除いて、あらゆるネットワークで戦ってきた。他の国での契約に迷うことはありえない。私はプロのファイターだから、最も有利で最高の条件を提示したSky Sports&Boxxerと契約するのは当たり前のこと」。

この契約は、1月29日に行われるシールズの完全統一ミドル級タイトルマッチ、エマ・コージン戦からキックオフする。そして、シールズがボクシングのリングで唯一敗れたサバンナ・マーシャル(中国河北省秦皇島市で行われた世界選手権の2回戦)とのメガファイトも包含されている。

「私のジョージ・フォアマンは、サバンナ・マーシャル。モハメド・アリにジョージ・フォアマンが必要だったように、私にはマーシャルが必要。ボクシングに絶対必要なのは、ライバル。さらに女子ボクシングが人気の英国では米国との決戦は特に盛り上がるから、ワクワクしている。英国に対して米国が一番強いということを見せつけることが出来たら最高」。

アリ対フレイジャーは史上最も有名なトリオロジーだったが、サバンナ戦は1戦限りの大勝負になるのか?と聞かれたT-Rexは「マーシャルを粉砕して、再戦を叫んだ彼女を返り討ちにするのもありだが、そうはならない。再戦の興味を失うような内容になるから」と圧倒的な自信を見せた。

「マーシャルを倒して 160ポンドのUndisputed Championに戻る。とりあえずはエマ・コージン戦。彼女は21勝11KO1分で、勢いの乗っている。素晴らしい試合になると思う」。
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「2021年は私にとって本当に良い年だった。私は24時間365日トレーニングを続けた。2階級で完全統一王者になり、MMAでも素晴らしい体験ができた。そしてボクシングに戻って、7桁の契約にサインしたばかり。来年には「LOLA2」(ロイ・ジョーンズJr.も本人役で出演するボクシング映画)も公開される。いくつかのスポンサーシップの契約も舞い込んでいる。2020年に比べたら本当に素晴らしい1年だった。ずっと我慢して、なんとかどうにか、今ここに辿り着いた。お楽しみはこれからだ」。