ボクシングに限らず、スポーツに向けられる関心は常に限定的でドメスティックです。

米国ではボクシングは完全にニッチスポーツ、一般のスポーツファンはカネロ・アルバレスも知りませんし、タイソン・フューリーと聞いても「マイク・タイソンと関係があるのか?」と聞き返してくるほどです。 

その限定的でマニアックなファンに支えられているマイナースポーツ・ボクシングの中でも、105ポンド(ストロー)から122ポンド(ジュニアフェザー級)の「超軽量級」はほとんど関心が払われることがない空気階級です。

まして外国人となると、PFP2位の井上尚弥の試合ですら直前までオッズが出ることなく、リング誌やESPNは電子版でも専門家の試合予想をアップしません。

オッズがどれだけ早く立ち上がるか、戦前予想や試合結果を分析する記事がどれだけ詳細かは、注目・関心度を示すバロメーターです。

ある程度の人気選手になれば、ファンが期待するマッチアップは試合が決定していなくてもポテンシャルファイトとしてオッズが立ち上がりますが、現状の井上ではそれすらも夢のまた夢です。

「PFPと人気は全く関係がない」というのは、カネロがPFP圏外だった頃にすでにスターダムの頂点に駆け上がっていたこと、2年間もPFPキングに君臨したローマン・ゴンザレスのキャリア最高報酬が60万ドル(HBOが捻出した1試合だけ)という事実から、どんな低脳でも簡単に理解できるでしょう。 

このブログでも「米国で名前を挙げるとは?」という視点として「雑誌をカバーする」という 事象から「スポーツイラストレイテッド」や「ESPNマガジン」「リング誌」の表紙を飾れば、米国で一定の認知を得たことになるーーなんて書きました。
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実際、リング誌に井上尚弥が2019年1月号で集合写真、2月号と9月号で単独カバーする快挙を果たしました。しかし、その内容は軽い日本特集で、通常の単独カバーとは程遠い薄い内容でした。

また「井上vsノニト・ドネア」は2019年の Fighter Of The Year に選出されましたが、この試合もオッズは直前まで立たず、戦前予想は本誌はおろか電子版でも組まれず、米国での関心の低さがひしひしと伝わりました。

挙げ句の果ては、昨年8月、ジョンリール・カシメロ戦について日本側との放映権料で交渉が行き詰まったとき、ESPNは「米国では超軽量級に関心があるファンはいない。井上は日本では大騒ぎのようだが多くのファンはその名前も聞いたことがない」と厳しい牽制球を投じました。

「米国で無視されている名前も知らない外国人を放送してやるんだから、それなりの放映権料を、憧れ料も含んだ金額で払え」ということです。


低脳な井上信者は「PFP2位とは世界で2番目に注目されているということ」と信じ込み、井上の海外記事を洗いざらい探し出してそれを煽る一部メディアが信者の蒙昧をさらに加速させてしまいました。

井上はもちろん、超軽量級の外国人は嫌われること、軽蔑されることよりも酷い、ほんの一部のマニアを例外に、多くのボクシングファンには存在が視界に入っていない状況なのです。

ここから、どうやって名前を挙げるのかを考えなくては、どうしようもありません。

ボブ・アラムが「井上は報酬の大幅減額を受け入れた」と公言した一方で、大橋秀行は「報酬は当初と変わらない100万ドル」と口にする矛盾。そして、ネバダ州アスレティック協会(NSAC)や米国メディアからは井上の報酬について一切発表なし。

「MGMグランドでメイン」を張った西岡利晃のデジャブです。あのときも、小さな会場と貧弱なプラットフォームにもかかわらず西岡の報酬は100万ドルでした。

もちろん、西岡も井上も100万ドルを受け取ったのでしょう。しかし、それはマニー・パキャオのように米国から引っ張り上げたカネとは全く違います。ナジーム・ハメドと同じ、富裕国からのスポンサードが還元されただけです。

もちろん、これは全く恥ずべきことではありません。富裕な母国がそれだけのバックアップをしたい才能だからこそです。

しかし、それならハメドのように最初から正直に公開すべきです。隠すから恥ずかしいんです。西岡もあとで辛い思いをしてしまうんです。

メディアも井上を褒める記事を血眼になって探すよりも「味方であるべきESPNが『多くのファンは井上なんて名前も知らない』と書きやがった!みんな怒れ!」と、真実を報じるべきなんです。

大本営発表な真実を捻じ曲げた報道は「米国では人気があるのに日本ではイマイチ井上の凄さがわかっていない」という真逆の事実を植え付けてしまうのです。

「井上は米国でスーパースター候補」「PPVに乗ってファイトマネー20億円」という虚構を築き続けてきた手前、今更本当のこと、都合の悪い記事は報じることができないのでしょう。

もちろん、木村悠のように単なる無知から「スーパーフライ級は米国ではその名前が興行に付くほど人気のあるクラス」と書いちゃうのも罪は罪ですが、知ってて低脳な信者を煽るのはさらにタチが悪い。

井上の場合は2017年の米国初登場でNSACから182,500ドル(約2000万円)の報酬が発表されました。今以上に無名の井上に、日本の放映権料から歩合的に上乗せされたのは当然です。

それでも、日本での報酬よりはるかに低く、渡航費など諸経費まで差し引かれるとビジネスとしては何をしてるのか訳がわかりません。そして、日本のメディアが報じたのは4000万円。「日本でやってた方がはるかに実入りがあった」とならないように補填したのでしょう。

前置きが長くなりました。

そんな井上や、先日の井岡一翔と田中恒成らとは技術もハートもはるかに劣るYouTuberらの方が段違いの関心を集めるのが米国という国です。

YouTuberよりはましとはいえ、今朝、ダウンを盛り返してルーク・キャンベルをノックアウトしたライアン・ガルシアもまたライト級という人気クラスとメキシコの血筋で過大評価されている典型です。

井上とは違い、早くからオッズが立ち、すべての専門メディアで勝敗予想が組まれるなど、高い注目を集めてきました。そして、今朝の「スター誕生」。

やりきれない話です。本人がリング上でぶち上げたように、ガーボンタ・デービスとの無敗対決が大勝負です。


一方で、米国でまず関心が払われない超軽量級で、さらに外国人である井上は、いつ日本に戻ってくるのでしょうか。

唯一の救いは、井上本人が現状をよく理解している言葉を紡いでくれていることでしょう。

「最低でもフェザー級」とラスベガスでの戦いを希求し、「米国で名前を挙げるにはメキシコのライバルが必要」とこのままではどうしようもないこともわかっています。

フェザー級程度では「パッキャオが見た風景」など全く見えてこないことも承知してるでしょう。

「35歳で引退」なら、あと7年。

人気クラスの入り口・ライト級まで辿り着くには、十分な時間です。そのとき、22歳のガルシアや23歳のテオフィモ・ロペスははもっと上の階級に移っているでしょうが、彼らに匹敵する人気者が待ち構えているのを願うばかりです。