残念ながら、軽量級にShowTimeのPPVでメインを張るようなメガファイトが用意されることは、まずありません。

欧米で関心が一気に下落するジュニアフェザー級以下の超軽量級では、歴史上この種のメガファイトは一度も行われていません。

IMG_0059
思い返すと、ルーベン・オリバレスは良い時代に生まれました。

軽量級で最も高額な報酬が期待できるのは、小さな会場の単独メインよりも、メガファイトのセミファイナルや前座というのが今の時代の現実です。

世界タイトルマッチというだけで軽量級でも単独ピッグイベントを打てた時代はとうの昔に去り、メガファイトでは軽量級の世界戦をおざなりでセットされることが当たり前になりました。

軽量級は歴史的に関心が低いだけでなく、オマケ扱いする興行を繰り返すことでもその存在感は矮小化され続けています。

一方で「スピードとスタミナで中重量級を凌ぐ軽量級が見るには一番面白い」というナイジェル・コリンズ元リング誌編集長のような見方もあり、それは間違いなく正解です。

リングサイド、生で見るならヘビー級の迫力には及びませんが、ファイターの重量感がはっきり伝わりにくいテレビで見るなら、激しい攻防が圧縮された軽量級が最強です。

さらにネット配信の台頭により、スマホなど小さな画面で見ることが増えているのも軽量級に追い風かもしれません。

この忌々しいパンデミックも、ゲート収入へのこだわりを捨て、テレビやネットでの見せ方により多くの投資を招くとしたら、風は軽量級向きかもしれません。

それでも、ここまで蔑ろにされてきた軽量級が米国で認知されるのは、並大抵のことではありません。

成長市場でも無関心のジャンルに耳目を集めるのは難しいというのに、シュリンクし続けているボクシング市場のパイは限られています。

軽量級が〝主役〟の座を掴むには、既存のウェルター級やヘビー級のファンを奪うしかありません。

80年代にウェルター級に代表される中量級がヘビー級のパイを食うことに成功、今に至るのは全米からUSAコールを受けて金メダルを獲ったシュガー・レイ・レナードの存在と、彼の周りに恐ろしいほど魅力的なライバルたちがひしめいたからです。

米国ボクシングファンにとってただでさえ関心の低い軽量級で、縁もゆかりもない日本人ファイターがウェルター級やヘビー級のメガファイター並みに認められることは非現実的にも程があります。

コリンズのようなマニアックな専門家目線は、多くのボクシングファンにとってはどうでもいいことかもしれません。

先日、中谷正義が人気階級のホープを大逆転で下した報道で、日本でも「現地では井上尚弥以上のインパクト」と報じられたのを複雑な思いで読みました。

井上の試合はESPN+に対して中谷はESPN本体、視聴者数が文字通り桁違いです。インパクトが桁違いなのは当たり前です。

そして、中谷がライト級ではなく、ウェルター級やヘビー級で同じことをやってのけたら、もっと大きなインパクトを残したでしょう。

井上だってもしミドル級なら、カネロとの一騎打ちを世界中のボクシングファンが渇望するボクシングファンなら知らない人はいない存在だったでしょうが、現実はPFP2位(リング誌)でも「INOUE is lauded in his native Japan but does not get as much attention as the other pound-for-pound stars. Many fight fans have never heard of Inoue.〜ESPN~井上は日本では大騒ぎされているようだが、世界的には他のPFPスターほど注目されていない。多くのボクシングファンは井上の名前すら聞いたことがない」(ESPN)のです。

また、北米ボクシングシーンを支配しているメキシコの現況を見ても、軽量級が文字通り軽視される傾向がますます強まっています。

ファン・フランシスコ・エストラーダが40年前に生まれていれば、もっと多くの注目と報酬を得ていたでしょう。

層が厚く、ライバルひしめく注目度が高い中量級でカネロ・アルバレス が大活躍していることも、ライト級以下の軽量級を好んでいたメキシコ(系)人の嗜好を変えてしまったのかもしれません。

アンディ・ルイスJr.がメキシコ(系)史上初のヘビー級王者になったとき、メキシコはカネロの勝利を遥かに上回る盛り上がりを見せたといいます。
image
メキシコ史上初の世界ヘビー級王者は、大統領を表敬訪問。メキシコは軽量級の名選手を数多く輩出してきた大国だが、ヘビー級王者誕生は長年の悲願。その方向は正しい、そして日本はヘンテコな言い訳ばかりが先行して人気階級からあまりにも目をそらしすぎて来たのではないか?

北米のトレンドリーダーであるメキシコで〝重量級指向=高級嗜好〟が進んでいることは、このエリアで戦う軽量級選手とって歓迎すべき事態ではありません。

米国で大きな花火を本気で打ち上げるつもりなら、バンタムやフェザーでは話になりません。

もちろん、今夜のお話は「南蛮野郎どもにひと泡吹かせよう」ということではありません。

奴らが知らない、ボクシングの魅力を満載した軽量級のビッグファイトのお話です。 
estrada-chocolatito
Saturday 13, March 2021 USA  
Ring Magazine JUNIOR BANTAMWEIGHT Title
World Boxing Council World Super Fly Title
World Boxing Association Super World Super Fly Title

メキシコに生まれながら軽量級の悲哀を嫌というほど味わっているエストラーダも不憫ですが、PFPキングの座に2年も君臨したローマン・ゴンザレスもまた、その実力と試合の面白さが報酬には全く反映されていません。

その軽量級の二つの宝石が来年3月13日に激突します。

9年越しの再戦です。

世界中の軽量級マニアが、9年間も涎を枯らさず待ち焦がれたカードです。

9年という星霜はアマ無敗、プロでも無敵の完全無欠のままPFP1位になったロマガンを階級の壁にぶち当て、PFP10傑から追放し。再び浮上のきっかけを掴ませる、そんな歳月です。

この長い時間の中でエストラーダは、高い実力評価を順風満帆に上積みさせ、PFPでもレギュラーの座を獲得、ロマゴンとの立場は完全に逆転しました。

彼らが拳を交えるジュニアバンタム級のトップ戦線、大晦日に対決する井岡一翔と田中恒成も進出しています。
スクリーンショット 2020-12-22 21.38.55

軽量級は欧米での注目度が低いことの裏返しで、プロモートやテレビ局の壁は薄く、強豪同士の対決が実現しやすい土壌にあります。

「井上vsジョンリール・カシメロ」が 普通に交渉されるのもこの〝不人気〟の恩恵に他なりません。これがウェルター級なら。対戦交渉はテーブルに着くまでにいくつもの大障害を乗り越えなければ前に進めません。

HBOが咲かすことの出来なかった「スーパーフライ」という名の徒花。

日本で〝決勝戦〟が行われる形でデザインを描ければ最高なのですが。