10年以上もの長い、長い時間。
ジョンリール・カシメロは陽の当たらない場所で、無名であることに苛立ち続けていました。
3階級制覇を果たしても、その報酬は10万ドルに遠く及ばず 、母国フィリピンですら十分な人気と評価を得ているとは言い難い状況が続いていました。
3階級制覇しても10万ドルにも届かない…。中量級ではありえない大惨事です。それが珍しくないのが、軽量級の世界です。
WBOバンタム級王者になったことで、ついに掴んだビッグファイト、IBFとWBA のストラップを持つ井上尚弥との激突は「これで10万ドルファイター」と意気込んでいた31歳のフィリピン人でしたが、パンデミックによって延期を余儀なくされます。
そして、井上側のプロモーターから「報酬の大幅減額に応じなければ試合はキャンセル」と迫られたところで、井上戦を自ら放棄します。
昨年から契約したMPプロモーションズのシーン・ギボンズ代表は「トップランクの興行では我々は外様だけど奴隷じゃない。プレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)とShowTIMEと関わりの深い我々がトップランクにしがみつく理由はどこにもない」と啖呵を切って、その通りに今年一番のメガファイトのアンダーカードの座をゲットしました。
しかも、キャリア初の全米生中継。
正解です。「ものすごくおカネがいいんです。このまま防衛していけば天文学的数字になる」と呑気な嘘を並べる人がいる井上陣営とまともに付き合う必要はありません。
PBC>>>トップランク、ShowTIME>>>ESPNを考えても、MPの大ボスが愛想を尽かして三行半を叩きつけたボブ・アラムに媚びる必要などありません。
井上も「米国のボクシングファンは名前も知らない」なんて、確かに事実でもESPNだけは書いちゃいけないことを垂れ流すようなトップランク連合とは縁を切るべきかもしれません。
2012年2月10日、敵地アルゼンチン・ブエノスアイレスで初めて世界王者のベルトを巻いたとき(ルイス・ラザルテ戦:10ラウンドTKO/IBFジュニアフライ級暫定)は、肋骨を骨折した状態で戦いました。
あれから10年が経とうとしていますが、クアドロアラスの苦難の旅はまだ終わりません。
今回もパンデミックで試合が宙吊りになったことから、家族が待つフィリピンに帰国することも考えたカシメロでしたが、新トレーナーにクラレンス〝ボーン〟アダムズを招いて、米国での試合を模索していました。
アダムズは元WBAジュニアフェザー級王者(リング誌はformer WBA bantamweight titleholder とバンタム級としていますがこれは間違い)でギボンズとは30年来の知古、かつてカシメロを指導した経験もありました。
「カシメロのことはよくわかってる。彼の長所も、もちろん短所も。フィリピンでも最も知名度の低い世界王者だが、たった1試合で全てが変わる。今回の試合はフィリピンでも観れるからね。井上戦を諦めたことで、辛い日々がまた続くと思ったが、トップランクの無茶な要求を飲まなくて良かった」。
呼ばれたらどこでも、世界10カ国のリングに上がって戦い続けるカシメロについてアダムスは「本当に強いファイター。南アフリカやニカラグア、メキシコ、パナマ、カナダ、イギリス、アルゼンチン、中国、タイ…少ない報酬で敵地巡りをしたいボクサーなんてどこにもいない。でも彼にはそれしかなかったんだ。そして、そんなサーカスライフと低報酬が変わるチャンスに私たちは直面している」と希望の未来を描きます。
明日の試合でミカーに勝てば、未来が広がるのは間違いありません。
井上との試合は消滅したといっても、バンタム級の完全統一を目指す日本人にとって、ベルトを持っているカシメロは相思相愛の恋人であり続けます。
「東京か埼玉で井上戦」というカシメロの夢が叶うかもしれません。そうなれば、クアドロアラスにとって11カ国目のリングになります。
さらに、水面下で交渉が進められていると噂のギレルモ・リゴンドー戦や、明日のイベントに出場するルイス・ネリとアーロン・アラメダが争うWBCジュニアフェザー級王者決定戦の勝者に挑戦する4階級制覇の計画も、ギボンズは明らかにしています。
とにかく、明日です。ガーナからやって来た「童顔のターミネーター」を倒して、次に駒を進めるのです。
29歳のミカーは2012年ロンドン五輪52㎏級に出場、銅メダルを獲るマイケル・コンランに負けてベスト8敗退。ロベイシ・ラミレスが金メダルに輝いた大会です。
その年にプロ転向、デビューから13連続KOをマーク、24戦全勝19KOとまだ負けは知りませんが、強豪との手合わせは一度もありません。
それなのに破竹の13連続KOのあとの11勝は6KOとペースダウン、スプリットやマジョリティの接戦も強いられ、ダウンも喫しています。
なんとか全勝をキープしていますが、心身ともに脆さも垣間見せており、カシメロの変なパンチでコロッと倒されそうです。
ただ、計量での仕上がり具合と肌艶は素晴らしかったとレポートされていますから「誰に負けても不思議じゃない」カシメロにとっては全く油断はできません。
ギボンズは「スタイル的にはジョシュア・クロッティのバンタム級バージョン。高いガードでジリジリと前に出てくる、ガーナ人に特徴的なボクシングをする。ただし、ミカーは強豪とは戦っていない。カシメロとは経験値が全く違う」と分析。
アダムズは「簡単に勝てると思わないこと。頭ばかり狙う喧嘩ファイトはそろそろ卒業。ボディから丁寧に攻め上げていく。そのときが来るまではGOサインは出さない」と慎重です。
さらに、アダムズは「カシメロはネクストパッキャオと呼ばれることなく31歳になったが、彼こそがネクストパッキャオだ。これまで数え切れない若い才能がそう呼ばれてきて、化けの皮が剥がされているが、彼は本物。それを証明する夜がついにやって来たんだ」と、最大級の期待を込めています。
そして、前戦(2019年11月30日ゾラニ・テテ戦)とはコンディションが違うとも断言。「10月上旬のキャンプ入りで144ポンドもあった。まず、体重を落とすことが最優先で、戦術もクソもない状態だった。しかし、今回は井上戦のおかげでシェイプアップしたまま。減量ではなく実践練習に十分な時間が使えた」。
▶︎ことカシメロについては「戦術もクソも無い状態」がベストな気もしますが…。「丁寧なボクシングでミカーを削る」なんて器用な真似が出来るかどうか、お手並み拝見です。
カシメロにとってこの試合は非常に重要です。勝てば、リゴンドーや井上、さらに4階級制覇への道も見えてきます。
負ければ〝振り出しに戻る〟です。
豪快に勝つのも、ポカッと負けるのも、どっちもありうる気がします。それがカシメロのカシメロたる所以ですが、もちろん前者を期待しましょう。
ジョンリール・カシメロは陽の当たらない場所で、無名であることに苛立ち続けていました。
3階級制覇を果たしても、その報酬は10万ドルに遠く及ばず 、母国フィリピンですら十分な人気と評価を得ているとは言い難い状況が続いていました。
3階級制覇しても10万ドルにも届かない…。中量級ではありえない大惨事です。それが珍しくないのが、軽量級の世界です。
WBOバンタム級王者になったことで、ついに掴んだビッグファイト、IBFとWBA のストラップを持つ井上尚弥との激突は「これで10万ドルファイター」と意気込んでいた31歳のフィリピン人でしたが、パンデミックによって延期を余儀なくされます。
そして、井上側のプロモーターから「報酬の大幅減額に応じなければ試合はキャンセル」と迫られたところで、井上戦を自ら放棄します。
昨年から契約したMPプロモーションズのシーン・ギボンズ代表は「トップランクの興行では我々は外様だけど奴隷じゃない。プレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)とShowTIMEと関わりの深い我々がトップランクにしがみつく理由はどこにもない」と啖呵を切って、その通りに今年一番のメガファイトのアンダーカードの座をゲットしました。
しかも、キャリア初の全米生中継。
正解です。「ものすごくおカネがいいんです。このまま防衛していけば天文学的数字になる」と呑気な嘘を並べる人がいる井上陣営とまともに付き合う必要はありません。
PBC>>>トップランク、ShowTIME>>>ESPNを考えても、MPの大ボスが愛想を尽かして三行半を叩きつけたボブ・アラムに媚びる必要などありません。
井上も「米国のボクシングファンは名前も知らない」なんて、確かに事実でもESPNだけは書いちゃいけないことを垂れ流すようなトップランク連合とは縁を切るべきかもしれません。
2012年2月10日、敵地アルゼンチン・ブエノスアイレスで初めて世界王者のベルトを巻いたとき(ルイス・ラザルテ戦:10ラウンドTKO/IBFジュニアフライ級暫定)は、肋骨を骨折した状態で戦いました。
あれから10年が経とうとしていますが、クアドロアラスの苦難の旅はまだ終わりません。
今回もパンデミックで試合が宙吊りになったことから、家族が待つフィリピンに帰国することも考えたカシメロでしたが、新トレーナーにクラレンス〝ボーン〟アダムズを招いて、米国での試合を模索していました。
アダムズは元WBAジュニアフェザー級王者(リング誌はformer WBA bantamweight titleholder とバンタム級としていますがこれは間違い)でギボンズとは30年来の知古、かつてカシメロを指導した経験もありました。
「カシメロのことはよくわかってる。彼の長所も、もちろん短所も。フィリピンでも最も知名度の低い世界王者だが、たった1試合で全てが変わる。今回の試合はフィリピンでも観れるからね。井上戦を諦めたことで、辛い日々がまた続くと思ったが、トップランクの無茶な要求を飲まなくて良かった」。
呼ばれたらどこでも、世界10カ国のリングに上がって戦い続けるカシメロについてアダムスは「本当に強いファイター。南アフリカやニカラグア、メキシコ、パナマ、カナダ、イギリス、アルゼンチン、中国、タイ…少ない報酬で敵地巡りをしたいボクサーなんてどこにもいない。でも彼にはそれしかなかったんだ。そして、そんなサーカスライフと低報酬が変わるチャンスに私たちは直面している」と希望の未来を描きます。
明日の試合でミカーに勝てば、未来が広がるのは間違いありません。
井上との試合は消滅したといっても、バンタム級の完全統一を目指す日本人にとって、ベルトを持っているカシメロは相思相愛の恋人であり続けます。
「東京か埼玉で井上戦」というカシメロの夢が叶うかもしれません。そうなれば、クアドロアラスにとって11カ国目のリングになります。
さらに、水面下で交渉が進められていると噂のギレルモ・リゴンドー戦や、明日のイベントに出場するルイス・ネリとアーロン・アラメダが争うWBCジュニアフェザー級王者決定戦の勝者に挑戦する4階級制覇の計画も、ギボンズは明らかにしています。
とにかく、明日です。ガーナからやって来た「童顔のターミネーター」を倒して、次に駒を進めるのです。
29歳のミカーは2012年ロンドン五輪52㎏級に出場、銅メダルを獲るマイケル・コンランに負けてベスト8敗退。ロベイシ・ラミレスが金メダルに輝いた大会です。
その年にプロ転向、デビューから13連続KOをマーク、24戦全勝19KOとまだ負けは知りませんが、強豪との手合わせは一度もありません。
それなのに破竹の13連続KOのあとの11勝は6KOとペースダウン、スプリットやマジョリティの接戦も強いられ、ダウンも喫しています。
なんとか全勝をキープしていますが、心身ともに脆さも垣間見せており、カシメロの変なパンチでコロッと倒されそうです。
ただ、計量での仕上がり具合と肌艶は素晴らしかったとレポートされていますから「誰に負けても不思議じゃない」カシメロにとっては全く油断はできません。
ギボンズは「スタイル的にはジョシュア・クロッティのバンタム級バージョン。高いガードでジリジリと前に出てくる、ガーナ人に特徴的なボクシングをする。ただし、ミカーは強豪とは戦っていない。カシメロとは経験値が全く違う」と分析。
アダムズは「簡単に勝てると思わないこと。頭ばかり狙う喧嘩ファイトはそろそろ卒業。ボディから丁寧に攻め上げていく。そのときが来るまではGOサインは出さない」と慎重です。
さらに、アダムズは「カシメロはネクストパッキャオと呼ばれることなく31歳になったが、彼こそがネクストパッキャオだ。これまで数え切れない若い才能がそう呼ばれてきて、化けの皮が剥がされているが、彼は本物。それを証明する夜がついにやって来たんだ」と、最大級の期待を込めています。
そして、前戦(2019年11月30日ゾラニ・テテ戦)とはコンディションが違うとも断言。「10月上旬のキャンプ入りで144ポンドもあった。まず、体重を落とすことが最優先で、戦術もクソもない状態だった。しかし、今回は井上戦のおかげでシェイプアップしたまま。減量ではなく実践練習に十分な時間が使えた」。
▶︎ことカシメロについては「戦術もクソも無い状態」がベストな気もしますが…。「丁寧なボクシングでミカーを削る」なんて器用な真似が出来るかどうか、お手並み拝見です。
カシメロにとってこの試合は非常に重要です。勝てば、リゴンドーや井上、さらに4階級制覇への道も見えてきます。
負ければ〝振り出しに戻る〟です。
豪快に勝つのも、ポカッと負けるのも、どっちもありうる気がします。それがカシメロのカシメロたる所以ですが、もちろん前者を期待しましょう。

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