1930年代、ヘビー級に傾きすぎる注目度や報酬に嫉妬したヘンリー・アームストロングは10カ月で3階級制覇という超人技をやってのけました。
そして、偉大なアームストロングは、現在の米国で最も人気のあるウェルター級で、今なお破られていない19連続防衛という大記録まで打ち立てます。
しかし、アームストロングがジョー・ルイスに迫る人気や報酬を得たという記録はどこにも見当たらず「ヘビー級が動くが如くボクシングは動く」時代には何の変化も起こせませんでした。
当時はオリジナル8の時代です。複数階級制覇や防衛記録が今とは比較できないほど価値のあった時代です。
ウェルター級を拠点にそれをやってのけたアームストロングは、今でこそシュガー・レイ・ロビンソンに次ぐ評価を受けていますが、当時はヘビー級を前にした月見草に甘んじるしかありませんでした。
3階級同時制覇もウェルター19連続防衛も、当時はヘビー級が残りの7階級に落とした日陰で人知れず咲く花に過ぎなかったのです。
それにしても、いつからウェルター級がヘビー級と並び、凌駕することも珍しくないプレミアムクラスになったのでしょうか?
階級制スポーツにおいて無差別級が最大の注目と尊敬を集めないケースは、日本の女子柔道や女子レスリングに見られます。
しかし、そこには誰にでもわかる明らかに大きな理由があります。

一方で、男子プロボクシングで起きた階級下克上は、単純な理由では説明できません。
リングの主人公がメキシカンを中心としたヒスパニックに移行していることは、米国の人口構成比が地殻変動を起こしていることである程度は説明がつきます。
しかし、階級下克上の震源地はどこにあったのでしょうか?
どうして、ウェルター級最強のアームストロングがフロイド・メイウェザーのようなマネーになれなかったのか?
カルロス・モンソンはなぜ、カネロ・アルバレスのようにプライベートジェットを買えなかったのか?
もちろん、アスリート報酬が急騰しているという背景はあります。
しかし、それは人口構成比と同様にあらゆるプロスポーツに当てはまることで、ボクシング限定の「階級下克上」とは別の話です。
ヘビー級が失速して、ウェルター級やミドル級がノシ上がった上昇気流の正体は何だったのか?
その反逆の気流はいつ起きたのか?
その容疑者を問い糺しながら、下克上の真犯人を追い詰めてゆきます。

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フシ穴の眼
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