まだ成熟し切っていない若い国の価値観が平面的で均質であるのは、当然です。

国が成熟するにつれ、価値観が立体的に多様化するのも当たり前です。

この国でもボクシングがメジャースポーツだった時代が、1960年代に確かにありました。

毎日のように、民放各局がボクシングの試合を中継していた本当の黄金時代です。

新人王戦でもゴールデンタイムにオンエアされていたのですから、世界タイトルマッチとなると大きな注目と尊敬が集められていたことは容易に想像出来ます。

あれから半世紀以上が経ち、世界タイトルマッチが中継されなくなっても全く驚きではない時代になりました。

かつては日本人が世界の舞台に上がることが出来る唯一無二のスポーツだったボクシングですが、今では国旗掲揚、国歌斉唱の神聖な儀式も放送で省かれることが珍しくありません。

いつのまにかボクシングの世界タイトルマッチは、厳かな国際試合から、アルファベットをいたずらに組み合わせた怪しげな団体が軽はずみに承認する、一般のスポーツファンには何がどうなっているのか分かりにくいニッチスポーツに堕落してしまいました。
Cinco-De-Mayo-WBC-belt-300x200
WBCのベルトは約40万円前後とされますが、ファイトマネーに比例した承認料を考慮するともっと割高な〝時価〟で、富裕国の王者や人気のある王者が保持して欲しいというのが、WBCに限らずあらゆる団体の本音です。

半世紀を超えるWBCの歴史で最も高額とされるのはこのシンコデマヨ・ベルト…完全に腐ってます。

戦後、日本ボクシング界は四隻の巨大な〝黒船〟によって変質を余儀なくされてきました。

一隻目の〝黒船〟は「団体分裂・階級の増殖」です。

一つの団体は主要と呼ばれるものだけでも4つが乱立、8つの階級は17にまで繁殖しました。

ボクシング凋落の原因は、社会の成熟からスポーツ観戦の主役がブルーカラーの男性から、女性も含めた家族で応援できる競技に変遷しているから…というだけでは本質を捉えていません。

最も大きな理由は「団体分裂・階級増殖」によって、世界王者のステイタスが瓦解したことです。

そして、これは日本ボクシング界に限らない、世界的な潮流です。


しかし、残りの三隻の〝黒船〟は、日本の内奥から迫り来ました。

①力道山のワールド・リーグ戦を〝殺し〟て、日本人初の本当の世界体験となった「東京1964」。

②Jリーグ誕生と野茂英雄によるメジャースポーツの「世界開放」。

③そして深刻な勘違いを生み続ける幻覚剤「マニー・パッキャオ」。

この三隻の〝黒船〟に日本のボクシングがどう変節したのかをクロニカルに辿ってゆきます。

おお、ちょうど次駅で新横浜駅です。

続きはまた。