会社近くの居酒屋でBSの「スポーツ×ヒューマン “屈辱”のエース いまこそ進化を 巨人・菅野智之」って番組を見て、家路へ向かう電車の中。

虎党としては、菅野なんて一刻も早くMLBでもパ・リーグでもとにかくタイガースと対戦しない、対戦が減るリーグに行って欲しい、もう顔も嫌い、声も嫌い、姿形も嫌い、とにかく生理的に受け付けない選手ですが…やはりすごいアスリートです。

昨シーズンは11勝6敗、防御率3.89。ローテーション投手として十分な数字です。

しかし、嵯峨野にとってはキャリア7年間で勝ち星はワースト3、防御率はルーキーイヤーの3.12から大幅に悪化するワースト。

深刻な腰痛や故障に悩まされたため、本来のピッチングが出来なかったのです。だから、しっかり故障を治して、元の最強スタイルを取り戻す。ーーーそれが普通の思考回路です。

故障も何もなくて打ち込まれたのなら、まだわかりますが、そうではないのです。

ましてや「これまでの野球人生でフォーム改造に取り組んだことなどなかった」というのですから。

そんな菅野が、上野由岐子らも通う「鴻江スポーツアカデミー」の門を叩きます。

五輪など大舞台を踏んだ上野ですが、菅野とはアスリートとしての立ち位置が全く違います。マイナースポーツで五輪以外では注目されないソフトボールと、事実上の国技・野球で日本を代表するエース。

上野の「(巨人のエースとは)背負ってるものが違うけど」という言葉に、菅野は「そんなことじゃないです」と即答します。

そんなことじゃない。菅野にとって、ピッチングのメカニクスやフォームに何度も悩んで、それを何度も乗り越えてきた上野は、教えを乞うべき先生以外の何者でもないのです。

37歳の上野が「良い結果が出ているときは変えることができないから、こんなチャンスはない」という助言に、30歳の菅野はうんうん頷いていました。

あれほどの実績を築いた大投手が謙虚な姿勢で、何かを学ぼうと必死にもがいている姿は、感動的で「自分が菅野なら絶対こういう取り組みは出来ないだろうな」と、一流アスリートの源泉を見た思いでした。

そして、偉大な選手でも一度悪い成績を出してしまったからといって、それまでの自分を大きく変えることを躊躇うのが当たり前なのに、菅野の貪欲な向上心にも恐れ入りました。

有楽町のガード下で菅野の素晴らしさに純粋に感銘している巨人ファンと、まさかまだ進化するんちゃうやろなと嫌な予感にあえぐ阪神ファンやその他球団ファン。

「いやあ、でもイチローはやっぱり次元が違ったなあ」と赤霧島を飲み干したところで、場はほどけました。

どんなに良い結果を出しても、それが邪魔な古いサナギの殻かのように脱ぎ捨てて、毎年モデルチェンジを繰り返したイチロー。

去年打ち込まれたイチローを研究して次のシーズンに挑みかかっているのに、打席に立っているイチローは去年の構えと違う…相手投手としてはもう研究する気が失せてしまいます。

新フォームの菅野については、運動生理学の専門家も怪我がしにくいスタイルだと評価は上々。

しかし、スポーツは現実社会と違って公明正大、実力だけが大手を振って闊歩する世界です。現実世界で菅野ほど勇気をもって変わる努力をする人は、好意を持って高く評価されるでしょうが…。

しかし、現時点の菅野は2勝0敗ながら、防御率は2.91。これから怪我をするかもしれません。そうなると、きっとこういう声が溢れるでしょう。

「30歳まで慣れ親しんだフォームを改造するなんて大間違い」「怪我の原因はあの変なトルネード投法のせい」…。

スポーツは実力と結果だけが支配する世界です。その本質は公平でも正大でもない、残酷です。

あのドキュメンタリーを見ると、フォーム改造は成功とも読み取れますが、まだなんの結果も出ていません。

もちろん、変則短期のペナントレースとはいえ、まだ始まったばかりです。

全ては、これからです。

虎党が巨人のエースを応援するなんて、絶対にあってはいけない、バレたら粛清・リンチに発展しかねない裏切り行為ですが…このブログをやつらが見てるわけがないので、応援させていただきます。

ただし、阪神からあげる勝ち星は開幕戦の1勝だけです。あとは4球団から荒稼ぎして、最多勝でも最優秀防御率でも沢村賞でも、勝手に好きなだけ獲って下さいな。