スポーツイラストレイテッド誌から、ハリウッドを代表する悪役スター、ダニー・トレホの生き様をご紹介。
「ボクシングこそが芸術だ」と断言するトレホの言葉は、ボクシングファンなら誰もが支持するでしょう。
10代で凶悪犯罪に手を染め、刑務所に。そこから更生してハリウッドきっての悪役スターに。南カリフォルニアの無法地帯から、艶やかで華やかな映画の街へ。
******
The devil constantly pestered him, and his rebellious attitude would transform into a criminal one where Trejo the teenager became involved with armed robbery, drugs and violence.
まだ10代だというのに重度のヘロイン中毒で、いつもラリってた。
家電量販店に火炎瓶を投げ入れて強盗を働くような無法者だった。
どうせ自分はろくな人生を送れない。それなら好きなことやって死ぬのがいい。
人に迷惑をかけるな?困っている人を助けろ?馬鹿言ってんじゃない。
そんなことして、何の得になるんだ?世の中は損得だけだろう?
逃げ足は早かったから、捕まることは少なかったけど…逃げおおせたときでも、空を見上げると悲しくなった…。
こんなことがいつまで続くんだろう?って。そう考え出すと、悲しくて涙が止まらなかった。
当たり前だけど、逃げ切ったことの方が多かったけど、何度も捕まった。
最後は、サン・クエンティン刑務所の独房にぶち込まれた。やっぱり、ろくな人生じゃない。
またシャバに出ても、自分はこの生き方しかできない。まともな会社や店は、俺みたいなやつを雇ってくれないだろう。次は、もっと大きなことをしでかして、大金をかっぱらおう。
捕まったら、もうおしまいだから、舌を噛んで死ねばいい。
トイレとベッドしかない狭くて暗くて臭い部屋で、そんなことばかりを考えていた。
おかしな話で…いやそれは当たり前で素晴らしい考えなんだが、刑務所では短い自由時間に本が読めるんだ。
まともに小学校にも通ってなかったから、本なんて読んだこともないし、そもそも字がよくわからないから…。
でも、不思議なことってあるもんだ。「オズの魔法使い」をとにかく全部読んだんだ。正確には、わからない単語とかあるから、読んだというより、紙に印刷された文字を目に焼き付けたんだけど。
ちょうど、その頃に母親が死んでしまったんだ。
にがい味わいが、全身を痺れさせた。
どうしようもない後悔って、あるんだ。
なんというか、それまでは、もう、俺の人生なんてどうにでもなれって思ってたのに、捨てばちになってたのに「このままじゃいけない」って、はっきりわかったんだ。
最低の話だろう?
母親が死なないと、そんなことにも気づけないなんて…。もう、自分が情けなくて、涙も出なかった。
窓のない独房で「母さん、ごめんな」って、夜空を見たかったけど、窓がないから、天井を見上げるしかなかった。
俺の両親はメキシコ移民だった。それが、どれだけの苦労か、誰にだってわかるだろう。両親も俺も、とにかくタフでなければ生きていけなかった。
生きるってことは誰にだって、タフな仕事だ。でも、メキシコ移民にとって米国で生きるってことは、戦いそのものなんだ。
ボクシングは…無性に好きだった。いつから好きだったかわからないくらい、物心ついた頃からボクシングを見たり聞いたりするとドキドキした。
叔父が「危険な街では護身ができなきゃ死ぬだけだ」とボクシングを教えてくれた。
ああ、俺はプロボクサーになりたかったんだ。いや、いまでもプロボクサーになりたい。
俺は76歳になるけど、いまでも拳にバンデージを巻いてグローブをつけて、俺と戦ってくれる敵とリングで殴り合いたい。
刑務所の中でやっとボクシングが出来た。チャンピオンになった。嬉しかった。
でも、何の因果か、刑務所を出て、この俳優業で生きている。
映画やドラマは芸術だ。やりがいもある。俺は幸運だ。
“I love boxing. I think boxing is an art,” he says, wearing his Trejo’s Tacos t-shirt, just one of his multiple restaurant/food truck companies. “The perfect example is Floyd Mayweather. A lot of people don’t like him, man. I don’t care, I’ve never broken bread with him, met him a couple of times, but a far as boxing is concerned, I’ve never seen a better boxer. Just all out boxer.”
ボクシングを愛してる、死ぬまで愛し続けるだろう。ボクシングを野蛮と軽蔑する人がいるけど、ボクシングは絶対の芸術だ。
フロイド・メイウェザーを見たことがあるか?あれが野蛮か?
もちろん、リングの中のフロイドのことだ、あれは野蛮から一番遠い存在だろう?
どっからどう見ても、芸術か科学の二択だ。俺は芸術だと思うが、科学だと思うヤツがいても否定はしないぜ。
フロイドは嫌われ者だが、それとこれとは話が別だ。圧倒的な芸術家や、優れた科学者は人に好かれるとか嫌われるとかは関係ない。
一つ間違えば野蛮や暴力だったりするけど、同じ舞台で美しい高等技術が披露される、それこそが芸術だ。
きっと、そういうことだ。芸術家や科学者が、人気で評価されるなんてことはない。
そして、このメキシコの血は誇りだ。
実は、アンディ・ルイスJr.とは長い付き合いで、去年6月の世紀の大番狂わせには狂喜乱舞した。
アンディは、試合がない期間は建設現場で生活費を稼いでいた。俺は援助したかったが、それが彼をダメにするのをわかってたから、ずっと我慢していた。
アンディは俺にカネを無心したりしなかった。こいつは絶対に勝つと思ったよ。実際、大金を張ったからね。
メキシコに初めてヘビー級タイトルをもたらしたアンディには大統領が謁見するなど、一夜で国民的ヒーローになった。
メキシコがアンディに夢中になった。カネロ・アルバレスどころじゃない。
俺も彼をお祝いした。「ここからだ。これはまだ半分だ。再戦で勝てば完成だ」と。彼もわかってくれると思ったが…アンディの答えは「特別注文のロールスロイスを買った」だった。
「もう一生、建設現場で働かなくてもいい大金が手に入った」と笑う彼の横面を殴りたくなったが、それは仕方がない。
俺は彼をハグして「アンディ、君の武器はスピードだ。それだけは忘れるな」と耳元でしっかりゆっくり伝えた。
アンディがサウジアラビアの体重計に乗ったとき、もう全てがわかった。
彼は負けたあとに連絡をくれたが、叱り飛ばしたよ。
「チャンピオンになって自惚れるヤツがいるか!チャンピオンになったらこれまでの2倍は練習しないとダメだ!フロイドを見ろ!一度も負けてないのに、自惚れるのはポーズだけで、いつもギリギリまで追い込んで練習していた!あれこそがチャンピオンだ!」。
******
ダニー・トレホはレストランやフードトラックのビジネスも展開しています。
このパンデミックで大打撃を受けていますが、失業者や困窮した人に弁当を配るなど福祉活動にも積極的に取り組んでいます。
昨年8月には、ロサンゼルス市街で起きた交通事故に遭遇したトレホは横転した車中に閉じ込められた乳児を救出、「スクリーンのヒールは、現実ではスーパーヒーロー」と賞賛されました。
トレホは、日本でも人気のロバート・ロドリゲスの作品によく出てますからご存知の方も多いと思います。
まー、普通にいい味出してます。
「ボクシングこそが芸術だ」と断言するトレホの言葉は、ボクシングファンなら誰もが支持するでしょう。
10代で凶悪犯罪に手を染め、刑務所に。そこから更生してハリウッドきっての悪役スターに。南カリフォルニアの無法地帯から、艶やかで華やかな映画の街へ。
絵に描いたような「ドン底から栄光へ」の物語です。
一方で、西海岸では Mexican-American でなければ物語は紡がれないという、新たな〝差別〟が醸成されているように感じてしまうのは、私のようなひねくれたボクシングファンだけでしょうか?
The devil constantly pestered him, and his rebellious attitude would transform into a criminal one where Trejo the teenager became involved with armed robbery, drugs and violence.
まだ10代だというのに重度のヘロイン中毒で、いつもラリってた。
家電量販店に火炎瓶を投げ入れて強盗を働くような無法者だった。
どうせ自分はろくな人生を送れない。それなら好きなことやって死ぬのがいい。
人に迷惑をかけるな?困っている人を助けろ?馬鹿言ってんじゃない。
そんなことして、何の得になるんだ?世の中は損得だけだろう?
逃げ足は早かったから、捕まることは少なかったけど…逃げおおせたときでも、空を見上げると悲しくなった…。
こんなことがいつまで続くんだろう?って。そう考え出すと、悲しくて涙が止まらなかった。
当たり前だけど、逃げ切ったことの方が多かったけど、何度も捕まった。
最後は、サン・クエンティン刑務所の独房にぶち込まれた。やっぱり、ろくな人生じゃない。
またシャバに出ても、自分はこの生き方しかできない。まともな会社や店は、俺みたいなやつを雇ってくれないだろう。次は、もっと大きなことをしでかして、大金をかっぱらおう。
捕まったら、もうおしまいだから、舌を噛んで死ねばいい。
トイレとベッドしかない狭くて暗くて臭い部屋で、そんなことばかりを考えていた。
おかしな話で…いやそれは当たり前で素晴らしい考えなんだが、刑務所では短い自由時間に本が読めるんだ。
まともに小学校にも通ってなかったから、本なんて読んだこともないし、そもそも字がよくわからないから…。
でも、不思議なことってあるもんだ。「オズの魔法使い」をとにかく全部読んだんだ。正確には、わからない単語とかあるから、読んだというより、紙に印刷された文字を目に焼き付けたんだけど。
ちょうど、その頃に母親が死んでしまったんだ。
にがい味わいが、全身を痺れさせた。
どうしようもない後悔って、あるんだ。
なんというか、それまでは、もう、俺の人生なんてどうにでもなれって思ってたのに、捨てばちになってたのに「このままじゃいけない」って、はっきりわかったんだ。
最低の話だろう?
母親が死なないと、そんなことにも気づけないなんて…。もう、自分が情けなくて、涙も出なかった。
窓のない独房で「母さん、ごめんな」って、夜空を見たかったけど、窓がないから、天井を見上げるしかなかった。
俺の両親はメキシコ移民だった。それが、どれだけの苦労か、誰にだってわかるだろう。両親も俺も、とにかくタフでなければ生きていけなかった。
生きるってことは誰にだって、タフな仕事だ。でも、メキシコ移民にとって米国で生きるってことは、戦いそのものなんだ。
ボクシングは…無性に好きだった。いつから好きだったかわからないくらい、物心ついた頃からボクシングを見たり聞いたりするとドキドキした。
叔父が「危険な街では護身ができなきゃ死ぬだけだ」とボクシングを教えてくれた。
ああ、俺はプロボクサーになりたかったんだ。いや、いまでもプロボクサーになりたい。
俺は76歳になるけど、いまでも拳にバンデージを巻いてグローブをつけて、俺と戦ってくれる敵とリングで殴り合いたい。
刑務所の中でやっとボクシングが出来た。チャンピオンになった。嬉しかった。
でも、何の因果か、刑務所を出て、この俳優業で生きている。
映画やドラマは芸術だ。やりがいもある。俺は幸運だ。
“I love boxing. I think boxing is an art,” he says, wearing his Trejo’s Tacos t-shirt, just one of his multiple restaurant/food truck companies. “The perfect example is Floyd Mayweather. A lot of people don’t like him, man. I don’t care, I’ve never broken bread with him, met him a couple of times, but a far as boxing is concerned, I’ve never seen a better boxer. Just all out boxer.”
ボクシングを愛してる、死ぬまで愛し続けるだろう。ボクシングを野蛮と軽蔑する人がいるけど、ボクシングは絶対の芸術だ。
フロイド・メイウェザーを見たことがあるか?あれが野蛮か?
もちろん、リングの中のフロイドのことだ、あれは野蛮から一番遠い存在だろう?
どっからどう見ても、芸術か科学の二択だ。俺は芸術だと思うが、科学だと思うヤツがいても否定はしないぜ。
フロイドは嫌われ者だが、それとこれとは話が別だ。圧倒的な芸術家や、優れた科学者は人に好かれるとか嫌われるとかは関係ない。
一つ間違えば野蛮や暴力だったりするけど、同じ舞台で美しい高等技術が披露される、それこそが芸術だ。
きっと、そういうことだ。芸術家や科学者が、人気で評価されるなんてことはない。
そして、このメキシコの血は誇りだ。
実は、アンディ・ルイスJr.とは長い付き合いで、去年6月の世紀の大番狂わせには狂喜乱舞した。
アンディは、試合がない期間は建設現場で生活費を稼いでいた。俺は援助したかったが、それが彼をダメにするのをわかってたから、ずっと我慢していた。
アンディは俺にカネを無心したりしなかった。こいつは絶対に勝つと思ったよ。実際、大金を張ったからね。
メキシコに初めてヘビー級タイトルをもたらしたアンディには大統領が謁見するなど、一夜で国民的ヒーローになった。
メキシコがアンディに夢中になった。カネロ・アルバレスどころじゃない。
俺も彼をお祝いした。「ここからだ。これはまだ半分だ。再戦で勝てば完成だ」と。彼もわかってくれると思ったが…アンディの答えは「特別注文のロールスロイスを買った」だった。
「もう一生、建設現場で働かなくてもいい大金が手に入った」と笑う彼の横面を殴りたくなったが、それは仕方がない。
俺は彼をハグして「アンディ、君の武器はスピードだ。それだけは忘れるな」と耳元でしっかりゆっくり伝えた。
アンディがサウジアラビアの体重計に乗ったとき、もう全てがわかった。
彼は負けたあとに連絡をくれたが、叱り飛ばしたよ。
「チャンピオンになって自惚れるヤツがいるか!チャンピオンになったらこれまでの2倍は練習しないとダメだ!フロイドを見ろ!一度も負けてないのに、自惚れるのはポーズだけで、いつもギリギリまで追い込んで練習していた!あれこそがチャンピオンだ!」。
******
ダニー・トレホはレストランやフードトラックのビジネスも展開しています。
このパンデミックで大打撃を受けていますが、失業者や困窮した人に弁当を配るなど福祉活動にも積極的に取り組んでいます。
昨年8月には、ロサンゼルス市街で起きた交通事故に遭遇したトレホは横転した車中に閉じ込められた乳児を救出、「スクリーンのヒールは、現実ではスーパーヒーロー」と賞賛されました。
トレホは、日本でも人気のロバート・ロドリゲスの作品によく出てますからご存知の方も多いと思います。
まー、普通にいい味出してます。
コメント
コメント一覧 (7)
井上が最強追求ロードを貫徹するためには、メキシコ勢(およびフィリピン勢)との死闘がどうしても必要、重大な一種の思想戦ですらあるように感じる。
フシ穴の眼
が
しました
フシ穴の眼
が
しました
ボクシングにしても、メイウェザーのことにしてもすごくスマートな考えでビックリしました。
チャンピオンは2倍練習という思考も素晴らしいです。
人は見かけによらないものですね。
フシ穴の眼
が
しました
4人目の男として期待大だったのに!
しかしもし自分だったらと思うと、やっぱりロールス買っちゃうのかなあ。
フシ穴の眼
が
しました