ボクシングの階級は「重さとレベルはほぼ比例」しながらウェルターで頂点に達し、そこからミドル級まで稜線を描き、スーパーミドルからやや下降しながらヘビーで再び跳ね上がります。

もちろん、現在のストロー級のように強豪王者が君臨するケースでは「重さとレベルはほぼ比例」しません。

日本ではストローよりもウェルターの競技人口の方が多いにもかかわらず、前者が世界王者を継続的に送り込んでいるのに対して、後者はいまだにゼロです。

白井義男が1952年に日本人初の世界王者となって以来、68年間で約90人の日本人が世界王者の座に就いてきました。

しかし、日本ランキングが整備されたストローからミドルまでの13階級で、ウェルター級だけが1人の世界王者も送り出せず白地図のままなのです。

ストロー級は井岡弘樹がWBCの初代ピースを獲った1987年からわずか33年間で11人のチャンピオンを生み出しているというのに、ウェルターは白井が王者になった68年前からすでに存在していたのに、ゼロ。

この「ストローとウェルターの矛盾」は、ウェルターは世界のレベルが高く、ストローは日本のレベルが高い、ということが最大の原因でしょう。

しかし、ウェルターで王者ゼロという屈辱的な事実の最大の原因は、挑戦機会があまりにも少ないからです。ストロー並みに挑戦機会があれば、68年間で様々な幸運が折り重なった奇跡の勝利が一つか二つは演出できたはずです。

競技人口が多い=競争率が高いだけでなく、米国を中心に富裕国で人気の高いウェルター級は、そもそも挑戦する機会が限定されてしまいます。

ジャパンマネーの威力が存分に発揮できないことから、自国に呼ぶことが至難で敵地での挑戦にほとんど限定されることも「王者ゼロ」の大きな要因になっているのです。
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メイもパックも体格的には日本人が劣等感を覚えるようなサイズではありませんが…

極端な話ですが、メイウェザーやパッキャオに挑戦するには、実力以前にクリアしなければならないハードルが高く、障害物も多過ぎます。もし「それ」が実現出来るとしたら〝村田諒太〟のように巨大な広告代理店とメディア、スポンサー企業が一体となって夢の神輿を担ぐプロジェクト型でなければ難しいでしょう。

そう考えると、ウェルター級王者誕生はアマチュアで目を見張る実績を残した才能が登場するまで待つしかないのかもしれません。

では、日本が最も大きな競技人口を抱えるフェザー級が〝超難産階級〟になっている現実も、同じ理由で説明できるのでしょうか?

レオ・サンタクルスやアブネル・マレスなどごく稀に人気選手が登場するものの、フェザーはウェルターとは違い欧米の人気階級とは到底言えません。

「ゲイリー・ラッセルのフレームが一回り大きければ」…そんな「クレオパトラの鼻」みたいなことが言われているように、フェザーは不人気階級とみなして差し支えありません。

ミドル級の村田のように、特別な階級に特別な才能で特別なスタイルで殴りこむ…フェザーはそんな特別なクラスではないのです。

日本人スター選手と比較してけしてサポート面で充実していなかったホルヘ・リナレスがチャンスを掴んでいるのですから。


フェザー級の世界王者に就いた日本人は歴史上、5人だけです。

西城正三(1968−1971:WBA=防衛5)

柴田国明(1970−1972:WBC=防衛2)

越本隆志(2006:WBA=防衛0)

粟生隆寛(2009−2009:WBC=0)

長谷川穂積(2010−2011=防衛0)


21世紀になってからも3人の世界王者が誕生していますが、いずれも初防衛戦に失敗。

このクラスでまともに爪痕を残せなかった原因は、越本と粟生、フェザー級バージョンの長谷川というカードの弱さが考えられます。

全盛期の内山や三浦がこのクラスに打って出ていたら、何らかの果実をもぎ取っていた気もします。

とはいえ、そこでも「重さとレベルはほぼ比例」に矛盾する思いがむくむくと湧いてきますが…。

「内山や三浦ならフェザーでも強豪王者になるチャンスがあったかもしれないが、ジュニアライトで残した実績は再現できない」。