Divisional Paradox 〝フェザーのネジレ〟は目に余る!

17にまで分裂・増殖したボクシングの階級。

オリジナル8の時代からジュニアウェルターやジュニアライト、ジュニアミドル、ジュニアフェザーなどの後出し階級が徐々に入り込んでいた70年代初め頃までは、オリジナル8の威厳は保たれていました。

その頃まではジュニア階級、後出しの水増し階級はオリジナル8よりも下と見られる空気が確かにありました。

重量級(世界的には中量級)での世界挑戦の機会が実力的にもコネクション的にも限定されていた日本や韓国をはじめとするアジアのボクサーたちは、この〝ジュニアの恩恵〟を全身に浴して来ました。

「新しい階級(水増しジュニア階級)は、新しい国(アジアやアフリカ)のためにある」(ホセ・スライマン)のです。 

17にまで階級が増え複数階級制覇も当たり前になった現在では「誰が王者なのか?」も階級難易度の指標になっていますが、日本ボクシングの歴史を振り返ると、最軽量のストローから村田諒太と竹原慎二のミドルまで13階級に渡って描いて来た階級を見ると、その色彩の濃淡は鮮やかに過ぎます。

最もレベルが高く米国で最も人気があるウェルターは、日本人が制した最重量階級ミドルよりも二つも下のクラスにもかかわらず、未だに1人のアルファベット王者を産むことも出来ていません。
離、アウトラ
また、階級の歴史と日本の競技人口から考えると最も多くの王者が連なっているはずのフェザーの現実を見ると、世界のベルトを巻いた日本人はわずか5人と、大きな矛盾が浮き彫りになっています。

ウェルター級を筆頭にフェザー級、ライト級というオリジナル8のクラスになると日本ボクシング界が一気に色褪せてしまうのは、単なる偶然ではありません。

後発のジュニアフライやジュニアバンタム、軽量級最後発のストローですら10人を優に超える世界王者を生んでいるというのに、フェザーはたったの5人です。

しかも、いずれも短命王者に終わっているのです。

ウェルターは論外、フェザーとライトでも描きかけの水彩画のような薄くて淡い色しか残せていません。

この二つの階級に挟まれたジュニアライト級では、重厚な油絵具を塗り重ねるように安定王者を何人も送り込み、常に世界と戦えるカードを持っているというのに。

一方でジュニアウェルターとジュニアミドルという2階級においては、かつては確かに存在した〝ジュニアの恩恵〟がぼぼ消滅してしまいました。

これは、米国市場でウェルター級を核とした中量級人気への偏向に拍車がかかっていることとも無縁ではありません。

消滅する〝ジュニアの恩恵〟もある一方で、欧米での関心度か低落一方のジュニアフェザー級以下に目を移すと、オリジナル8だったバンタムとフライで〝ジュニアの恩恵〟の風が吹いていることに気付くでしょう。

〝ジュニアの恩恵〟が発露するのは日本に王者を呼びやすい、王者になってからも日本と承認団体の都合で好き勝手出来るクラスです。

日本国内だけで長期政権が築かれる階級、日本人が複数タイトルを獲る階級には、間違いなく〝ジュニアの恩恵〟の生暖かい追い風が吹いています。

それに対して、今なお〝ジュニアの恩恵〟が期待出来ず、常に難関階級として立ち塞がっているのがフェザー、ライト、ウェルター、ミドルの4階級です。

現在、この4つのクラスでタイトルを保持しているのは村田諒太、ただ1人。

しかし、その村田は堂々オリジナル8のミドル級ですが、日本史上もっとも暖かい〝ジュニアの恩恵〟が彼の背中を支えていることは、ボクシングファンなら誰でも知っているでしょう。

オリジナル8でも際立って超難関のミドル級で世界戦4勝2敗(内1敗は承認した団体の責任者が謝罪したほどの誤審で世界中のメディアが「盗まれた」と報道) とトップ戦線に踏みとどまっている村田が、日本史上最も〝ジュニアの恩恵〟に浴しているとは、なんとも皮肉ですが、プロボクシングの実態を実にわかりやすく生々しく伝えてくれています。

村田に吹く生温い風は、ジョージ・フォアマンやシュガー・レイ・レナード、オスカー・デラホーヤの背中も優しく押した、吹くべくして吹いた黄金の風です。

大手ジムのスター選手が〝ジュニアの恩恵〟を受けて成長する、五輪の表彰台で一番高い場所で母国の歌を聞いた血統書付きのボクサーがスターダムを目指すのを応援するのは、悪いもんじゃありません。

いずれも豊かな国の選ばれたボクサーだけの特権です。

貧しい国のパッキャオらから見ると、日本のボクサーはまぶしく羨ましく映るでしょう。村田や井上、井岡がミンダナオ島の超極貧家庭で生まれていたら…世界王者になれていたかどうか、極めて疑問です。

もちろん、パッキャオが日本で生まれていたら世界王者どころか、そもそもボクサーになっていたかどうかも疑問です。家族思いで勉強熱心のパッキャオは、普通に大学に行って、普通に就職していたでしょう。 


それにしても、最も競技人口が多いフェザー、やはり数多くのボクサーを擁しているライト、ストローよりも多いウェルター…。

4団体17階級時代になっても、忌々しいまでに高く、分厚い〝矛盾した階級〟。

次に Divisional Paradox を打ち砕くボクサーが私たちの前に現れてくれるのはいつになるのでしょうか?