本来ならドーピングを取り締まるべき世界的な統括団体が存在しないボクシングの世界では、多くのまともなスポーツよりもドーピングに対してある程度は寛容でなければなりません。

取り締まる警察も法律も存在しないのに、個々の違反者を公平に取り締まり、罰則を与えることなど出来るわけがありません。

カネロ・アルバレスら「下手人」だけを非難することほど、頭の悪い反応はないのです。


国破れた戦後直下の無法地帯で凶悪犯罪に走る少年に情状酌量の余地があるのは当然です。

一番悪いのは戦争を起こして、負けた大人たちなのですから。

しかし、その凶悪犯罪を少年ではなく、責任ある大人たちが引き起こしたとしたら?

生まれたときから孤児が過酷な社会に虐げられた末に暴発した犯罪ではなく、十分に経済的余裕があり分別もあるべき大人が犯罪に手を染めたのだとしたら?

情状酌量の余地はありません。

もちろん、法律と警察が存在しないのは同じですから、有効なペナルティを与えることはままなりません。

それでも、周囲は厳しい目を突き刺すことはできます。

2010年、フロイド・メイウェザーの「五輪式365日24時間のドーピング検査」の要求を、「そんなもの出来るわけがない」と一笑に付したマニー・パッキャオは責任重大です。

当時の薬物検査は、各国(米国では各州)のコミッションが一括管理(現在も基本的に同じです)、VADAのプログラムも軌道に乗ったばかりで、プロボクシングのドーピングへの取り組みは今以上に遅れていました。

とはいえ、パッキャオはすでにボクシング界を代表するスーパースターでした。

もはや〝無法地帯で生き残ることだけに必死の戦災孤児〟ではなく、世界屈指のスポーツセレブでした。

確かに、ネットでのコメントや一部のメディアは「チキン・メイウェザーが逃亡の言い訳にしてるだけ」「パッキャオは最も厳格なネバダ州アスレティックコミッション(NSAC)の検査で一度も陽性反応を示していない」「五輪式ランダムテストなんて出来るわけがない」と、パックマン寄りでした。

しかし、リング誌やESPNは「交渉の大詰めでそんな重大な問題を突きつけてきたメイウェザーの態度は理解できない」としながらも「パッキャオには〝代表責任〟がある」と指摘しました。

パッキャオのドーピングへの無頓着な発言は糾弾されて当然です。

リング誌やESPNの姿勢は正しい。
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最近の例では〝戦災孤児〟のルイス・ネリについてはドーピングに関しては情状酌量の余地があります。しかし、ネリに〝代表責任〟などあるわけがありません。

しかし、パッキャオ以上の世界的なスポーツセレブ、カネロには〝代表責任〟があります。それどころか、彼は現実に〝罪〟を犯しているのです。

ボクシング界を代表するカネロが「故意でなかった」「知らなかった」と発言することを許してはいけません。

NSACが下した「出場停止6ヶ月」は大甘裁定以下です。年2試合がデフォルトのカネロにとって「出場停止1試合」に過ぎません。
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しかも、当時HBOとの巨額の複数年契約を結んでいたカネロにとって、この「公傷」は渡りに船。古傷の膝の手術を行い、ペナルティであるはずの6ヶ月を有効利用するのです。 

第二審、「有罪!」。

本来なら、最低でも出場停止24ヶ月。

もちろんNSACのみの出場停止ですから、米国の他の州やメキシコでは試合をやりたい放題です。

それでも、桁違いのカネが稼げるラスベガスのリングに上がれないことは、カネロのようなスーパースターにとっては大きな痛手です。