またまた、答えなど絶対に見つからない迷宮シリーズです。

陸上競技、男子100m。ジェシー・オーエンスはウサイン・ボルトよりも速くゴールテープを切れるのか?

ファイティング原田のラッシュは井上尚弥を圧倒、モンスターをノックアウトしてしまうのか? 

オーエンスとボルトが競争しタラ?

原田と井上が拳を交えレバ?

これぞ究極の「タラレバ」です。


高校・大学時代、リング誌やスポーツイラストレイテッド誌などで「マイク・タイソンはモハメド・アリに勝てるか?」という記事を読んで「バカバカしい、こいつら正気か?」と思いました。

スポーツの世界は日進月歩で進化しています。ボクシングは見た目ではわかりにくいものの、100m走ならタイムという揺るぎない指標があります。

特に進化がわかりやすい体操競技を見れば、過去の選手が現代に通用するわけがないことは小学生にだってわかることです。

そう思っていました…。

ジョージ・フォアマンが復帰したとき、名も無いクラブファイターに惨敗してまた引退するだろう、そう確信していました。

しかし、連戦連勝、当時28歳のイベンダー・ホリフィールドには敗れたものの、リアルディールが「レノックス・ルイスでも押し返せたのに、フォアマンは岩のようだった。全盛期はどれだけ強かったのか?そしてアリはどれだけ強かったのか?」とため息のように吐き出すのを聞いたとき、さらにフォアマンの対戦要求をタイソン陣営が必死で敬遠している事実を知ったとき、ずっと確信していた固い氷が溶けたような感覚になりました。

「フォアマンは10年以上のブランクを作って40を過ぎてから覚醒する稀有な個体」とまでは考えませんでしたが、それでも「フォアマンだけが特別」という思いはありました。

米国のメディアやボクシングファンがヘビー級最強時代と太鼓判を押す60年代や70年代のトップ選手が、80年代後半から90年代に現れても、フォアマン以外は全員、クラブファイターレベルに惨敗するはずだ、と。

そもそも、引退からカムバックするグレートはフォアマンだけではなく、いくらでもいます。そのほとんど全てが大失敗に終わってるのですから。

その一方で「全盛期対決でタイソンは本当にアリに勝てるのか?」という、真剣に答えるのもバカバカしいはずのクエスチョンが、もしかしたら私が信じきっていたのと真逆に本当の正解があるのではないかーーーそうも思えてきました。

そして、ビッグ・ジョージは1994年11月5日のネバダ州ラスベガスMGMグランドガーデンアリーナのリングに上がるのです。

ちょうど20年前のキンシャサで履いた、あのトランクスで。

後付けでもなんでもなく「こんな物語、フォアマンの圧勝でしょ」と確信していました。だから、試合開始ゴングからずっと劣勢のフォアマンの姿に、現実ではないような違和感を覚えました。

私たちが「フォアマンは特別」と逃げるなら「特別なフォアマン」には語る権利があるはずです。

「ホリフィールドは強かった。戦ってはいないけどルイスも強いだろう。二人ともアリを苦しめることが出来るかもしれない」。
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ーーー昨年末の少し古い話になりますが12月28日(土)のNHKで「BS1スペシャル レジェンドの目撃者 三冠王 落合博満」という番組が放送されました。

落合ファンの私としては少し物足りない内容でしたが、ドラゴンズの平田良介が「(落合は)今の野球でも全然通じる」と語ったときの、落合の言葉は、まさに今夜の「タラレバ」話に切り込むものでした。

落合は「何、ばかなこと言ってんだ?」とばかりに笑うと「今の選手が昔の野球に来たら誰も通用しない」とはっきり言ったのです。

 「スピードガンがなかっただけで、あればもっと速かった人、いっぱいいる」。

ボクシングや陸上競技のようなプリミティブなスポーツと違って、野球では投球や打撃で新しい技術の新陳代謝が激しく進んでいます。

では、落合が現代の打席に立ったら、田中将大や大谷翔平に手も足も出ないのでしょうか?

私は、佐々木主浩や野茂英雄を苦にしなかった落合は間違いなく「フォアマン」だと思います。


石畳のアッピア街道を走り抜けた裸足のアベベは、ローマ五輪で2時間15分16秒の世界記録をマークして優勝しました。

「人類初の2時間斬り」(思いっきり笑うところです)のエリウド・キプチョゲさんからナイキのカーボンブレードシューズを脱がせたら、どの程度のタイムで走るのでしょうか?

至れり尽くせりのペースメーカーと風除け伴走者、手渡しで補給してくれる介助などを取り上げたら、キプチョゲさんは、60年前の走る哲学者に勝てるでしょうか?

世界記録が2時間2分時代のキプチョゲさんと、アベベではアスリートにとって大きなモチベーションとなる心理的限界が全く違います。

アリやオーエンス、アベベ、そして落合…時空も大陸も超えた偉大なタラレバレジェンド。

あらゆるスポーツを見渡して、最も巨大で分厚い壁として2020年の現代でも立ち塞がっていタラレバレジェンドはボクシグのシュガー・レイ・ロビンソンでしょう。

〝近代ボクシングの礎〟という現代から見ると、有無を言わさない事実かどうかも怪しい既得権益、そして〝アントニオとマルコス〟という「現代派」にとってどうにもこうにも都合の悪いサンプル…。


しかし、タラレバレジェンドが現代のトップアスリートに勝つとしたら、それはある意味途轍も無い悲劇です。

SLRが史上最高なら、この70年もの間、ボクシング界は一体何をしていたのでしょうか?

オレ流が大谷翔平から涼しい顔してホームランを放つとしたら、野球は30年間一歩も前に進めていないことになります。 


カネロは好きなファイターではありませんが、SLRと相見えるとしたら、私は迷わずカネロを応援します。

絶対に負けてはいけない戦いです。

迷宮シリーズに出口などありませんが、迷宮に入り込んでしまった以上は出口を目指さなければなりません…。