メガファイトが決まるとリング誌やESPNなど多くのメディアが両者の戦力比較や専門家予想、戦略(勝利へのカギ)などを特集します。
マニー・パッキャオやカネロ・アルバレスの試合ともなるとリング誌なら40ページを超える大特集を組み、ESPNでは専門コーナーが開設されることもあります。
しかし、軽量級では扱いは全く変わってきます。例えば井上尚弥vsエマヌエル・ロドリゲスは「事実上のバンタム最強決定戦」という見方もされましたが、最近ならホセ・ラミレスvsモーリス・フッカーの方が扱いは遥かに大きく、ノンタイトルのテオフィモ・ロペスvs中谷正義よりもはっきりと下でした。
PFPランキングで急上昇中の井上尚弥は、まさに7年前のドネアと同じ軽量級としては破格に強烈な印象を残していますが、ドネアやロマゴンがそうであったように今回も大きくは扱われないでしょう。
それでも私にとってはラミレスvsフッカーなんかより10倍魅惑的なファイトです。
というわけで勝手にやります!
「リング誌のカバー」の勝負ではドネアに勝ち目はありません。井上は8ヶ月間で単独カバーを2度。ドネアはその19年に及ぶキャリアで集合カバーを飾ったのがたったの一度。この事実からも軽量級がいかに軽んじられているかを如実に読み取ることができます。
井上を上回るPFP1位のロマゴンも単独カバー経験は一度もありませんでした。井上と2人を隔てているのは経済大国で生まれたかどうか、それだけです。
もちろん、経済大国に生まれなくても年に何度も単独カバーを飾っていた本物の怪物もいますが、それはまた別の話です。=画像真ん中のセピア色の表紙の左上がドネア。年間最高選手に輝いた2012年4月号がドネア唯一のカバー登場でした
まずはバンタム級、新旧最強ボクサーのスペックです。
両者とも頭をひっつけて手数と回転力を競う接近戦は好まず、中間距離で距離を探り合う展開から一撃強打の照準をキリキリろ合わせていくタイプです。
その意味では似た者同士です。
ドネアが身長で6㎝、リーチで2㎝上回っています。ドネアが自分よりも小さな相手に圧倒的なパフォーマンスを見せることが心配ですが、井上もまたヨワン・ボワイヨ(171㎝/176㎝)、ジェイミー・マクドネル(176㎝/182㎝)、ファン・カルロス・パヤノ(165㎝/164㎝)、ロドリゲス(168㎝/169㎝)と同じ身長のパヤノを除いて直近5戦中4試合で自分より大きな相手を圧倒してきました。
両者に体格差はあるものの、ドネアがジャバーではないだけに「井上がどうやって懐に入るか?」という戦いにはなりません。
高性能の戦艦が互いの主砲をかざしながら、いつそれをぶっ放すのか。緊張感あふれる立ち上がりになりそうです。
そして、過去の対戦相手の質です。
く
一発殿堂クラス=両者のキャリアで、このレベルの相手は見つかりません。
殿堂クラス=ドネアはフライ級王者時代のビックダルチニアンから戦慄のKO劇で勝利を収めていますが、ダルチニアンの全盛期はジュニアバンタム。115ポンドでの対決はメディアもファンも熱望しましたが、実現せず。
ドネアのジュニアバンタムは暫定タイトルで、もしダルチニアンに3団体統一王者だったダルチニアンに勝っていれば5階級制覇でしたから残念でした(日本ではなぜか「5階級制覇」と語られていますが世界的には間違いです)。
井上の対戦相手ではこのクラスも1人もいません。
現役のPFPファイター=ドネアはダルチニアンを除くと、フェルナンド・モンティエル(リング誌・ESPNともに8位)に圧勝。ESPNで次点グループで控えていた〝準PFP〟ニコラス・ウォータースとも対戦していますが、階級の壁とアックスマンの身体能力に粉砕されてしまいました。
また、過去のPFPファイターでは2016年の年間最高選手カール・フランプトンと昨年、WBO暫定フェザー級王座を争いましたが、ここも完敗。
「未来のPFP」では自分に勝利してランクインしたギレルモ・リゴンドーがいます。
一方、井上のリストには「過去のPFPファイター」「過去の予備軍」まで広げても1人も見当たりません。
▶︎▶︎▶︎ここまで両者のQuality Opponentに圧倒的な差があると「ドネア有利」と見るのが常識ですが、ドネアは完全に黄昏時を迎えたレジェンドで、井上は今がプライムタイム。
リゴンドーに敗れてからWBSS参戦までの11戦は7勝4敗。リゴンドーは別格にしてもウォータース、ジェシー・マグダレノ、フランプトンときっちり負けています。
そして、ドネアがさいたまスーパーアリーナのリングに上がる11月7日、その9日後にフィリピーノフラッシュは37歳の誕生日を迎えます。
井上の戦い方は、ロドリゲス戦から大きな変更はないでしょう。第1ラウンドは相手の出方を見ながら慎重に入るはずです。
井上にとって間違いなくはっきりしていることは「ドネアはキャリア最強ではないかもしれないが、キャリア最強のパンチャーである」という一点です。
とにかくドネアの左フックにつなげるコンビーネーション、あるいは展開の中で刺してくる右ストレート。このタイミングと軌道を把握するまでリスクを犯す必要は何もありません。
微妙なラウンドは井上に流れるはずですから(実際にはそうでなくても)拮抗した展開が深まって焦るのはドネアの方です。
井上はドネアの動きをじっくり見極めながら時間が使えます。勝ち急ぐドネアが早い段階でミスを犯すことも十分考えられます。そうなればあっけない結末が訪れるでしょう。
この試合がどういう展開になるかは、8割方ドネアの戦略にかかっています。井上の様子見のクルージングに付き合うのか、それともロドリゲスのように仕掛けるのか。
ドネアは、ロドリゲス戦のリングサイドで井上の圧勝を笑っていました。その笑顔が「強いなあ」という呆れ果てた賞賛なのか「欠点がある」と勝機を見つけた余裕なのかはわかりません。
ただ、1ラウンド途中でロドリゲスの前進に井上がロープに詰まると「あんなので下がっちゃうのか」と口にしました。
そして、リングに呼ばれる前には「短い試合だったけど井上にはいくつか欠点があることがあらためてわかった」と以前から研究していた気づきが正解だったと手応えまで語っていました。
とはいえ、ロドリゲスのように初回から仕掛けるとは考え難く、微妙なラウンドを失う覚悟で試合を中盤から終盤まで引っ張るのではないでしょうか。
ドネアの脅威はパンチ力だけではありません。今の井上が何重にも重ね着している〝魔法のガウン〟はドネアには何の効力もありません。
試合前から、これでもかと散々威圧したキース・サーマンを全く意に介さなかったアジアの伝説と同様に、ドネアも井上に萎縮することは考えられません。
しかし、井上は故障明けのサーマンとは違います。そして、ドネアもまたパッキャオの次元とは程遠いレベルです。
劣化が明らかな36歳のドネアがフェザー級から2階級落としたバンタム、そのトップでどこまで戦えるのか?
WBSSの2試合はバーネットがまさかの負傷、ゾラニ・テテの代役ステフォン・ヤングは保証書付きの雑魚。この疑問に、ドネアはまだ答えていません。
88日後、私たちは「リング誌のカバー対決」と同じ圧勝劇を現実でも見ることができるかもしれません。
マニー・パッキャオやカネロ・アルバレスの試合ともなるとリング誌なら40ページを超える大特集を組み、ESPNでは専門コーナーが開設されることもあります。
しかし、軽量級では扱いは全く変わってきます。例えば井上尚弥vsエマヌエル・ロドリゲスは「事実上のバンタム最強決定戦」という見方もされましたが、最近ならホセ・ラミレスvsモーリス・フッカーの方が扱いは遥かに大きく、ノンタイトルのテオフィモ・ロペスvs中谷正義よりもはっきりと下でした。
PFPランキングで急上昇中の井上尚弥は、まさに7年前のドネアと同じ軽量級としては破格に強烈な印象を残していますが、ドネアやロマゴンがそうであったように今回も大きくは扱われないでしょう。
それでも私にとってはラミレスvsフッカーなんかより10倍魅惑的なファイトです。
というわけで勝手にやります!

井上を上回るPFP1位のロマゴンも単独カバー経験は一度もありませんでした。井上と2人を隔てているのは経済大国で生まれたかどうか、それだけです。
もちろん、経済大国に生まれなくても年に何度も単独カバーを飾っていた本物の怪物もいますが、それはまた別の話です。=画像真ん中のセピア色の表紙の左上がドネア。年間最高選手に輝いた2012年4月号がドネア唯一のカバー登場でした
| HEAD TO HEAD |
| age | stance | alias | height | reach | |||
| 井上尚弥 | 26 | オーソドックス | Monster | 165㎝ | 171㎝ | ||
| ノニト・ドネア | 36 | オーソドックス | The Filipino Flash | 171㎝ | 173㎝ | ||
その意味では似た者同士です。
ドネアが身長で6㎝、リーチで2㎝上回っています。ドネアが自分よりも小さな相手に圧倒的なパフォーマンスを見せることが心配ですが、井上もまたヨワン・ボワイヨ(171㎝/176㎝)、ジェイミー・マクドネル(176㎝/182㎝)、ファン・カルロス・パヤノ(165㎝/164㎝)、ロドリゲス(168㎝/169㎝)と同じ身長のパヤノを除いて直近5戦中4試合で自分より大きな相手を圧倒してきました。
両者に体格差はあるものの、ドネアがジャバーではないだけに「井上がどうやって懐に入るか?」という戦いにはなりません。
高性能の戦艦が互いの主砲をかざしながら、いつそれをぶっ放すのか。緊張感あふれる立ち上がりになりそうです。
| Quality Opponent |
く
一発殿堂クラス=両者のキャリアで、このレベルの相手は見つかりません。
殿堂クラス=ドネアはフライ級王者時代のビックダルチニアンから戦慄のKO劇で勝利を収めていますが、ダルチニアンの全盛期はジュニアバンタム。115ポンドでの対決はメディアもファンも熱望しましたが、実現せず。
ドネアのジュニアバンタムは暫定タイトルで、もしダルチニアンに3団体統一王者だったダルチニアンに勝っていれば5階級制覇でしたから残念でした(日本ではなぜか「5階級制覇」と語られていますが世界的には間違いです)。
井上の対戦相手ではこのクラスも1人もいません。
現役のPFPファイター=ドネアはダルチニアンを除くと、フェルナンド・モンティエル(リング誌・ESPNともに8位)に圧勝。ESPNで次点グループで控えていた〝準PFP〟ニコラス・ウォータースとも対戦していますが、階級の壁とアックスマンの身体能力に粉砕されてしまいました。
また、過去のPFPファイターでは2016年の年間最高選手カール・フランプトンと昨年、WBO暫定フェザー級王座を争いましたが、ここも完敗。
「未来のPFP」では自分に勝利してランクインしたギレルモ・リゴンドーがいます。
一方、井上のリストには「過去のPFPファイター」「過去の予備軍」まで広げても1人も見当たりません。
▶︎▶︎▶︎ここまで両者のQuality Opponentに圧倒的な差があると「ドネア有利」と見るのが常識ですが、ドネアは完全に黄昏時を迎えたレジェンドで、井上は今がプライムタイム。
リゴンドーに敗れてからWBSS参戦までの11戦は7勝4敗。リゴンドーは別格にしてもウォータース、ジェシー・マグダレノ、フランプトンときっちり負けています。
そして、ドネアがさいたまスーパーアリーナのリングに上がる11月7日、その9日後にフィリピーノフラッシュは37歳の誕生日を迎えます。
| Fight Plan |
井上の戦い方は、ロドリゲス戦から大きな変更はないでしょう。第1ラウンドは相手の出方を見ながら慎重に入るはずです。
井上にとって間違いなくはっきりしていることは「ドネアはキャリア最強ではないかもしれないが、キャリア最強のパンチャーである」という一点です。
とにかくドネアの左フックにつなげるコンビーネーション、あるいは展開の中で刺してくる右ストレート。このタイミングと軌道を把握するまでリスクを犯す必要は何もありません。
微妙なラウンドは井上に流れるはずですから(実際にはそうでなくても)拮抗した展開が深まって焦るのはドネアの方です。
井上はドネアの動きをじっくり見極めながら時間が使えます。勝ち急ぐドネアが早い段階でミスを犯すことも十分考えられます。そうなればあっけない結末が訪れるでしょう。
この試合がどういう展開になるかは、8割方ドネアの戦略にかかっています。井上の様子見のクルージングに付き合うのか、それともロドリゲスのように仕掛けるのか。
ドネアは、ロドリゲス戦のリングサイドで井上の圧勝を笑っていました。その笑顔が「強いなあ」という呆れ果てた賞賛なのか「欠点がある」と勝機を見つけた余裕なのかはわかりません。
ただ、1ラウンド途中でロドリゲスの前進に井上がロープに詰まると「あんなので下がっちゃうのか」と口にしました。
そして、リングに呼ばれる前には「短い試合だったけど井上にはいくつか欠点があることがあらためてわかった」と以前から研究していた気づきが正解だったと手応えまで語っていました。
とはいえ、ロドリゲスのように初回から仕掛けるとは考え難く、微妙なラウンドを失う覚悟で試合を中盤から終盤まで引っ張るのではないでしょうか。
ドネアの脅威はパンチ力だけではありません。今の井上が何重にも重ね着している〝魔法のガウン〟はドネアには何の効力もありません。
試合前から、これでもかと散々威圧したキース・サーマンを全く意に介さなかったアジアの伝説と同様に、ドネアも井上に萎縮することは考えられません。
しかし、井上は故障明けのサーマンとは違います。そして、ドネアもまたパッキャオの次元とは程遠いレベルです。
劣化が明らかな36歳のドネアがフェザー級から2階級落としたバンタム、そのトップでどこまで戦えるのか?
WBSSの2試合はバーネットがまさかの負傷、ゾラニ・テテの代役ステフォン・ヤングは保証書付きの雑魚。この疑問に、ドネアはまだ答えていません。
88日後、私たちは「リング誌のカバー対決」と同じ圧勝劇を現実でも見ることができるかもしれません。
コメント
コメント一覧 (2)
でもきっちり見極めて行けば、KOを狙っていつも雑になるドネアになら勝てると思います。
それにしても試合間隔空き過ぎです!
井上の時間がもったいない!
フシ穴の眼
が
しました