ボクシングの別名は、スイートサイエンスです。
ホプキンスは戒めます。
「正しい技術なくして、正しいボクシングは無い。もしたった一つのステップを間違ってしまうと、打ってはいけないたった一発のパンチを出してしまうと、次の瞬間、あなたはカンバスの上に寝ながら天井を見上げる羽目に成るでしょう」。
そして攻撃や防御について細かく教授するだけでなく、ロードワークや縄跳び、ミット打ち、パンチングボール打ちなど練習方法や注意点についても大きくページを割いてくれています。
そして「これが正しい」とは書かないのです。「これは間違い」とは指摘しますが。
このあたりは競技は違いますが、最近のマラソンで見聞きする「フォアフットや厚底が正しい」という短絡的で流行に迎合する間違ったものの見方とは一線を画しています。
「実は正しい方法なんてない。どんなやり方にも必ず落とし穴が潜んでいる。特にレベルが上がると、それまで効果を上げていたやり方が、致命的なミスにつながることもある。Bに通用した技術がAには逆効果だったなんてことは、当たり前に起こりうるのがボクシングだ」。
そして「絶対に正しいやり方はないが、基礎・基本は知らなければならない。そして、その上で絶対に間違ったことがあることも学習しなければならない。絶対に正しいことはない、しかし絶対に間違っていることはあるのだ」と説きます。
例えば「FOOT WORK」のチャプターでは「オーソドックスもサウスポーも関係ない。とにかく一番楽なバランスで構えること。そして前足は踏み出す、後ろ足はバックステップを踏む意識で、全身はニュートラルに自由に」。
左右の構えは完全な裏返し。スタンスの違う相手と戦うときのチェックポイントの一つは、足を踏むか踏まれるか。故意に踏む必要はないが、もし踏まれたらそれがどんなに素晴らしいスタンスでも、その試合では間違っているということ。足を踏まれるのは、非常に危険な種になる。修正しなければならない。
「試合の中では様々な動きが強いられるが、前足が踵重心になることはどんな場合でも間違い。前足と後ろ足のつま先が同じ方向をむくことも、絶対の間違い。今のマニー・パッキャオと戦う相手は知らず知らずの間に、この状況を作られてしまっている。だから、軽打で簡単にひっくり返ってしまう」。
「メイウェザーのつま先の向きを見なさい。距離が近くなればなるほど、360度どこにでも動く準備が出来上がってるから、簡単に相手の攻撃をすり抜けることが出来る。みんなが目を奪われるスピードや反射神経なんてのは二の次なんだ」。
「COMBINATION PUNCHING」では「単発のパンチはそれが余程の意味があるフェイントでなければ、絶対に打ってはならない。つまり、基本的に打ってはいけない」。
「パンチというのはそのボクサーのDNAのようなもの。不用意に放ったパンチでも、いろんなクセやリズムなどの情報を相手に与えることになる。それが見易い単発となると、機密情報がダダ漏れになっているのと同じこと。ローマン・ゴンザレスが多彩なコンビネーションを使うのは、一義的には相手を効果的に追い込むためだが、二義的には相手に分析する時間を与えないためだ」。
「もちろん、デオンティ・ワイルダーのような例外はある。彼の場合は〝数撃ちゃ当たる〟その一発で試合を終わらせることが出来る。そして、単発ではなくコンビでまとめろと指導しても、恐らく彼にはそれを学習する能力がないから、あのスタイルで問題ない。そう、あなたにワイルダーのような神から与えられた素質があるなら、この本を閉じて好きなだけ単発のパンチを振り回せばいいのだ」。
「FEYNTING」は「その目的は〝約束の場所〟へ相手をおびき出すこと」。
「フェイントは、フットワークとボディワーク、腕と肩、グローブ、全身を連動したものでなければならない。そしてフェイントもまた、コンビネーションでなければならない。そうでないフェイントは必ず見破られる。フェイントを見破られるということは、とどのつまり相手のフェイントに引っかかってしまうということだ」。
「あるパターンを相手に刷りこむことが出来ているかどうかは、表情や状態の動きでは読み取れない。足だ。つま先だ。つま先ほど正直な場所はない。こちらが餌を撒いた場所に近寄ってくるかどうか、それとも警戒してるのか、クロスでパンチを交換したときの、つま先を見ればわかる」。
「『接近したら敵の足元なんて視界に入らない、ましてやパンチを交換してるときなんて不可能だ』と思うかもしれないが、これは常に意識して練習を積めば〝見えてくる〟。つま先を見ろ、というのは二つの眼で見ろと言ってるわけじゃない。それは意識していたら〝見えてくる〟ものだ。そこが見えないで、意識せずにフェイントを仕掛けているとしたら、それは非常に危険な行為だ」。
********
愛読書が「孫子の兵法」というホプキンスだけに、非常に示唆に富んだ内容で、上級者向け過ぎるところもありますが、そこがまた「見るというのは目だけで見るんじゃない」とか哲学的なんです。 ほとんど全ての実戦技術、練習方法を網羅していますが、現代のボクサーに当てはめた「続編」も読んでみたいものです。引退して時間があるなら、是非、執筆して欲しいものです。
ボクシングは、極論すると「科学的な戦い方をした方が勝ち」というスポーツなのです。
現実には階級の壁に跳ね返されるボクサーの様に、科学ではなく力でネジ伏せられるシーンも多々ありますが、基本は「科学のスポーツ」なのです。
この考え方が偏重してしまうと〝ラスベガス〟のように、攻勢を無視してジャブの寡多でポイントを振る格闘技の本質から離れた採点がまかり通ってしまいます。
しかし「科学」を追求したホプキンスの「PERFECT EXCECUTION」には感服、納得、平伏せざるをえません。
扉の文言からして納得です。
Perhaps, No one Today has a better Understanding of the Basics than Future Hall of Fame Bernard Hopkins, which is Why we asked him to play the leading role in 〝Perfect Execution〟.
現代、ボクシングの基礎・基本について最も造詣が深いのは殿堂入り確実のバーナード・ホプキンスをおいて他にはいない。だからこそ、私たちは彼に「完全な教科書」を著すことをお願いしたのだ。
しかし「科学」を追求したホプキンスの「PERFECT EXCECUTION」には感服、納得、平伏せざるをえません。
扉の文言からして納得です。

現代、ボクシングの基礎・基本について最も造詣が深いのは殿堂入り確実のバーナード・ホプキンスをおいて他にはいない。だからこそ、私たちは彼に「完全な教科書」を著すことをお願いしたのだ。
ホプキンスは戒めます。
「正しい技術なくして、正しいボクシングは無い。もしたった一つのステップを間違ってしまうと、打ってはいけないたった一発のパンチを出してしまうと、次の瞬間、あなたはカンバスの上に寝ながら天井を見上げる羽目に成るでしょう」。
そして攻撃や防御について細かく教授するだけでなく、ロードワークや縄跳び、ミット打ち、パンチングボール打ちなど練習方法や注意点についても大きくページを割いてくれています。
そして「これが正しい」とは書かないのです。「これは間違い」とは指摘しますが。
このあたりは競技は違いますが、最近のマラソンで見聞きする「フォアフットや厚底が正しい」という短絡的で流行に迎合する間違ったものの見方とは一線を画しています。
「実は正しい方法なんてない。どんなやり方にも必ず落とし穴が潜んでいる。特にレベルが上がると、それまで効果を上げていたやり方が、致命的なミスにつながることもある。Bに通用した技術がAには逆効果だったなんてことは、当たり前に起こりうるのがボクシングだ」。
そして「絶対に正しいやり方はないが、基礎・基本は知らなければならない。そして、その上で絶対に間違ったことがあることも学習しなければならない。絶対に正しいことはない、しかし絶対に間違っていることはあるのだ」と説きます。
例えば「FOOT WORK」のチャプターでは「オーソドックスもサウスポーも関係ない。とにかく一番楽なバランスで構えること。そして前足は踏み出す、後ろ足はバックステップを踏む意識で、全身はニュートラルに自由に」。
左右の構えは完全な裏返し。スタンスの違う相手と戦うときのチェックポイントの一つは、足を踏むか踏まれるか。故意に踏む必要はないが、もし踏まれたらそれがどんなに素晴らしいスタンスでも、その試合では間違っているということ。足を踏まれるのは、非常に危険な種になる。修正しなければならない。
「試合の中では様々な動きが強いられるが、前足が踵重心になることはどんな場合でも間違い。前足と後ろ足のつま先が同じ方向をむくことも、絶対の間違い。今のマニー・パッキャオと戦う相手は知らず知らずの間に、この状況を作られてしまっている。だから、軽打で簡単にひっくり返ってしまう」。
「メイウェザーのつま先の向きを見なさい。距離が近くなればなるほど、360度どこにでも動く準備が出来上がってるから、簡単に相手の攻撃をすり抜けることが出来る。みんなが目を奪われるスピードや反射神経なんてのは二の次なんだ」。
「COMBINATION PUNCHING」では「単発のパンチはそれが余程の意味があるフェイントでなければ、絶対に打ってはならない。つまり、基本的に打ってはいけない」。
「パンチというのはそのボクサーのDNAのようなもの。不用意に放ったパンチでも、いろんなクセやリズムなどの情報を相手に与えることになる。それが見易い単発となると、機密情報がダダ漏れになっているのと同じこと。ローマン・ゴンザレスが多彩なコンビネーションを使うのは、一義的には相手を効果的に追い込むためだが、二義的には相手に分析する時間を与えないためだ」。
「もちろん、デオンティ・ワイルダーのような例外はある。彼の場合は〝数撃ちゃ当たる〟その一発で試合を終わらせることが出来る。そして、単発ではなくコンビでまとめろと指導しても、恐らく彼にはそれを学習する能力がないから、あのスタイルで問題ない。そう、あなたにワイルダーのような神から与えられた素質があるなら、この本を閉じて好きなだけ単発のパンチを振り回せばいいのだ」。
「FEYNTING」は「その目的は〝約束の場所〟へ相手をおびき出すこと」。
「フェイントは、フットワークとボディワーク、腕と肩、グローブ、全身を連動したものでなければならない。そしてフェイントもまた、コンビネーションでなければならない。そうでないフェイントは必ず見破られる。フェイントを見破られるということは、とどのつまり相手のフェイントに引っかかってしまうということだ」。
「あるパターンを相手に刷りこむことが出来ているかどうかは、表情や状態の動きでは読み取れない。足だ。つま先だ。つま先ほど正直な場所はない。こちらが餌を撒いた場所に近寄ってくるかどうか、それとも警戒してるのか、クロスでパンチを交換したときの、つま先を見ればわかる」。
「『接近したら敵の足元なんて視界に入らない、ましてやパンチを交換してるときなんて不可能だ』と思うかもしれないが、これは常に意識して練習を積めば〝見えてくる〟。つま先を見ろ、というのは二つの眼で見ろと言ってるわけじゃない。それは意識していたら〝見えてくる〟ものだ。そこが見えないで、意識せずにフェイントを仕掛けているとしたら、それは非常に危険な行為だ」。
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愛読書が「孫子の兵法」というホプキンスだけに、非常に示唆に富んだ内容で、上級者向け過ぎるところもありますが、そこがまた「見るというのは目だけで見るんじゃない」とか哲学的なんです。
コメント
コメント一覧 (2)
フシ穴の眼
が
しました
この本、翻訳版日本で出してもらえないのですかね…。ものすごく興味があります。掻い摘んでご紹介頂いただけでも名著であることが伝わってきます。
…tanutan さん訳で国内発売。出版社へ是非掛け合ってみて下さい(^-^;
フシ穴の眼
が
しました