明日の日本時間早朝、完全統一クルーザー級王者オレクザダー・ウシクに、トニー・ベリューが挑戦するの世界タイトルマッチが、英国はマンチェスターで開催されます。

日本では誰も関心のないクルーザー級の試合ですが、英国での盛り上がりはWBSSをはるかに凌駕しています。
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井上尚弥の〝先輩〟であるWBSS優勝者ウシクを通して、日本の至宝の〝その後〟も占ってゆきます。

オッズは、統一王者ウシクの勝利が1.17倍、ベリュー勝利が5.5倍、おおよそ5−1でWBSS優勝者を大きく支持しています。

ウシクはウクライナ生まれの31歳。15戦全勝11KO。身長190㎝/リーチ198㎝。

わずか15戦で四団体統一というのは史上最速(階級最強が伴うこういう最速記録は意味がありますね)ですが、アマチュアで335勝15敗の重厚なキャリアを積み上げています。

ウシクは、ロンドン五輪ヘビー級で金メダルを獲得していますから、村田諒太の僚友です。この年の金メダリストはワシル・ロマチェンコ(フェザー)、アンソニー・ジョシュア(スーパーヘビー)と現時点で10階級5階級でプロでも世界王者となり、大豊作でした。

昨年9月にからWBSS1stシーズン、クルーザー級トーナメントに参戦。

マルコ・フック、マイリス・ブリエイデスを撃破、決勝でもムラト・ガシエフを破って、優勝候補の下馬評通りにモハメド・アリ杯を獲得しました。

当初、ガシエフとの決勝は「5月11日にサウジアラビアの港町ジェッダで行う」とカレ・サウザーランドが発表しますが、7月21日モスクワ・オリンピックスタジアムに変更されます。

最初に大きな風呂敷を広げたものの、実際の選手報酬や優勝賞金がつまびらかにされない胡散臭さから「米国でマイナーな階級で開催するマイナートーナメント」と揶揄され、WBSSのイメージダウンにつながっていますが、クルーザーとスーパーミドルの優勝者は数100万ドルを手にした模様で、さすがにRIZINほどの嘘はついていないようです。

とはいえ、井上尚弥のバンタム級トーナメントはさらにスケールダウン。

「シーズン全体で賞金総額5000万ドル、そのうち優勝者に1000万ドル」という当初のフレームは、すでに主催者が「優勝は100万か200万かな?ドルか円かは秘密」とくだらないジョークで否定するまでになりました。

もし、当初発表の数字が本当に支払われるとして、ジュニアウェルターと折半なら、バンタムの賞金総額は2500万ドル。優勝賞金500万ドルを差し引いた2000万ドルが決勝までのトーナメント、決勝敗退者も含めた延べ13人の報酬となります。

単純割り算で1試合一人当たり153万ドル、約1億7000万円の計算です。

先月の横浜アリーナ。井上とファン・カルロス・パヤノが受け取った報酬は100万ドルどころか50万ドルもあったかどうか、極めて怪しいところです。

ボクシングの試合を州の体育協会が管轄、国や州に納める税金も管理する米国では選手報酬が明らかにされるケースがほとんどです。

もちろん、ただでさえ高額なファイトマネーに莫大なスポンサーボーナスが加算されていると見られる村田諒太や、昨年米国遠征で米国のあまりに少ない報酬をスポンサーが補填した井上尚弥のケースなど、日本の人気ボクサーの場合、最終的に手にする報酬は複雑です。

9月に軽量級不毛の地、米国のスーパーフライ興行に出場して強豪マクウィリアムス・アローヨと戦った井岡一翔のファイトマネーは僅か2万5000ドル、日本時代の10分の1にも届かない薄給でしたが、このケースもスポンサー企業が〝補填〟しているのは明らかです。

さらに、今でもチケットでファイトマネーが支払われる下層のプロボクサーなど〝ファイトマネー〟を単純計算しにくい背景はありますが、それも含めて発表するべきですね。

WBSS側は「本当の数字を発表するよりも夢がある」という「嘘も方便」の姿勢なのかもしれません。

しかし「井上が優勝したら11億円!」と騙されて舞い上がる人も多いですから、数字に関する明らかな嘘はやめるべきです。

「バンタム級史上最大の戦い」とかそういう誇大広告なら全く問題ありません。


話が逸れましたが、対するベリューはリバプール生まれの35歳。191㎝/188㎝。

アマチュア時代は国際的には全くの無名でしたが、プロに入ってからは無敗のまま英連邦ライトヘビー級王座を獲得。

2011年10月に16戦全勝10KOの戦績を引っさげ、やはり当時無敗のネイサン・クレバリー(22戦全勝11KO)との英国決戦を迎えますが、2−0のマジョリティデジションで世界の壁に跳ね返されてしまいました。

2012年に空位のWBCシルバー王座に就き、再び世界タイトルを射程圏に捉えます。しかし、このときは相手が悪かった、王者は36歳にして全盛期のアドニス・ステベンソンです。

スーパーマンの猛攻に6ラウンドでストップ負け。

セミファイナルをつとめたWBO王者セルゲイ・コバレフも順当にKO防衛、盛り上がるスティーブンソンvsコバレフの頂上決戦の前菜にされてしまいました。

活況の英国ボクシング界でさしたるアマ実績もなく、プロでも世界戦でいいところなく2連敗のベリューは「write off(終わった選手)」の烙印を押されてしまいます。

それでも階級をクルーザーに上げて、2016年5月にイルンガ・マカブを3ラウンドでストップ、空位のWBCクルーザー級王座を獲得。さらに、同胞のBJフローレスも同じ3ラウンドで下して初防衛に成功すると、ついにビッグチャンスが舞い込みます。

英国ヘビー級のスーパースター、デビッド・ヘイとの一騎打ち、というと格好いいのですが現実にはカムバック路線を走るヘイの咬ませ犬です。

ヘビー級ノンタイトル12回戦。

「ライトヘビー級のベリューにヘイは荷が重い」。

圧倒的不利予想の中で火蓋を切った試合は意外な展開を見せます。

6ラウンドにヘイがアキレス腱を負傷、回を追うごとに症状は悪化、11ラウンドでストップ負けしてしまうのです。

一気に名前の売れたベリューは今年5月の再戦でもヘイを5ラウンド TKOで斬って落として完全決着。

リング誌も含めて5つのベルトを持つウシクに挑戦するポジションまで昇り詰めました。

このビッグファイトの勝者には、巨大な果実が用意されています。

アンソニー・ジョシュアとデオンティ・ワイルダーを核としたヘビー級戦線に割って入る切符を手に入れることが出来るのです。

まだ何も決まっていないのに、オッズだけが先走っています。

ロンドン五輪の金メダル対決、アンソニー・ジョシュアvsウシク。ジョシュア勝利が1/4、1.25倍。ウシク勝利が4/11、3.75倍。アバウト1−4でウシク不利です。

198㎝/208㎝のジョシュアとは一回り小さいウシクにとっては厳しい戦いのなるのは必至です。

ウシクのように井上がWBSS優勝を果たしたあとは、ビッグネームを目指してフェザーに跳んで欲しいですね。

その前にベリューです。会場はマンチェスター・アリーナ。ウシクにとっては完全アウエー、下馬評通りに〝ボンバー〟ベリューを不発に終わらせることが出来るか?

前日計量はウシクが199.4ポンド、ベリューが199.5ポンドで一発クリア。 

ゴングまであと24時間です!